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国語科「わたしはおねえさん」①発問の極意#8〈教材分析と教材の特性〉

連載
子どもの主体が立ち上がる 国語科 単元別 発問の極意

筑波大学附属小学校教諭

白坂洋一
国語科 発問の極意 バナー

子どもたちが自ら学び考える授業にするための発問づくりを考える連載。今回は2年生の物語「わたしはおねえさん」(光村図書)を取り上げます。第1回として、教材分析と教材の特性を解説します。

執筆/筑波大学附属小学校教諭・白坂洋一

あらすじ:「わたしはおねえさん」はこんなお話

物語「わたしはおねえさん」は、すみれちゃんがお花(コスモス)を描こうとした妹のかりんちゃんの気持ちを考えることによって、前よりもお姉さんになる話です。

すみれちゃんは歌をつくるのが好きで、2年生になってお姉さんとしての幸せを歌に表現します。そのすみれちゃんが、「えらいおねえさんは、朝のうちに宿題をするんだわ」と心の中で言って、宿題を始めようと机の上に教科書とノートを広げますが、机のすぐ横の窓から見える花壇に咲いているコスモスが気になってしまいます。そのコスモスにじょうろで水やりをしようと庭に出ているうちに、2歳になった妹のかりんちゃんが出しっぱなしのすみれちゃんのノートに鉛筆で何か(お花:コスモス)を描き始めます。

水やりから戻って来たすみれちゃんは描いている最中のかりんちゃんを見て驚きます。半分ぐらい泣きそうで、もう半分は怒りそうになりながらも、かりんちゃんが「お花」と答えたノートをじっとずっと見つめるうちに、ぐちゃぐちゃの絵がかわいく見えてきます。2人でたくさん笑って笑って、笑い終わると、「今度はねえねがお勉強するから、ちょっとどいてね」と言って椅子に座ります。すみれちゃんは筆箱から消しゴムを出してかりんちゃんが描いた絵を消しかけて、でも消すのをやめて、次のページを開くところで物語は終わります。

お姉さんであるすみれちゃんと、妹のかりんちゃんとの間で起こる出来事をもとに物語は展開されています。

では、この物語は、どのような教材なのでしょうか。教材分析シートをもとに解説を加えていきます。以下のシートを見てください。

 

<教材分析シート:「わたしはおねえさん」>

国語科「わたしはおねえさん」発問の極意#1 図

登場人物は、すみれちゃんとかりんちゃんです。2人は姉妹で、10月の日曜日の気持ちよく晴れた朝にすみれちゃんの部屋で起きた出来事が中心に描かれています。視点は三人称限定視点で、中心人物「すみれちゃん」に寄り添って物語られています。

この物語の読みどころは中心人物の変容点

物語「わたしはおねえさん」は、物語の冒頭の歌にも表れているようなお姉さんから、妹の考えをとらえた上でのお姉さんとなっていく、その変化の様子が描かれています。

題名に目を向けると、題名は「わたしはおねえさん」となっています。中心人物すみれちゃんが変容する出来事・エピソードが表現されていて、冒頭に歌としても描かれている「おねえさん」像が妹かりんちゃんとの出来事をきっかけとして、変化していきます。

この「おねえさん」像が大きく変化する場面が、この物語の読みどころとなります。それが、妹のかりんちゃんがノートにぐちゃぐちゃの絵を描いている場面です。すみれちゃんの葛藤が描かれている場面でもあります。例えば、

「すみれちゃんには、自分が、なきたいのかおこりたいのか分かりませんでした。」
「すみれちゃんは、もういちど、ノートを見ました。じっと。ずっと。」
「けしかけて、でもけすのをやめて、すみれちゃんは、つぎのページをひらきました。」

これらには、妹かりんちゃんの行動に対するすみれちゃんの思いのゆれ動きが表れています。

特に、「すみれちゃんは、もういちど、ノートを見ました。じっと。ずっと。」は、中心人物すみれちゃんの変容点(クライマックス)でもあります。変容点(クライマックス)は中心人物の大きな変容が描かれている1文で、この1文は中心人物の行動描写や心情描写、そして会話文を手がかりに見つけていくとよいです。

本文では、その後「あはは。」とすみれちゃんが笑い出し、そして「あはは。」とかりんちゃんも笑い出します。この「あはは。」と笑い出すまでに、すみれちゃんは、「じっと。ずっと。」ノートを見ながら何を考え、思いを巡らせていたのでしょうか。「すみれちゃんは、もういちど、ノートを見ました。じっと。ずっと。」にはすみれちゃんの行動のみが描かれ、心情が描かれていません。この1文から題名「わたしはおねえさん」にも関わる、すみれちゃんのお姉さんとしてのあり方を考えることができます。

すみれちゃんも読者も2年生

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