職員の声に耳を傾けていますか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #40】


多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第40回は、<職員の声に耳を傾けていますか?>です。
執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二
目次
教諭へのアンケートから
本稿では、新型コロナに立ち向かう職員室の在り方を考えたいと思います。私がゴールデンウィーク中に行った約200人の教諭職の先生方へのアンケートで、管理職への要望として高い割合を示したのが、①迅速な情報提供・的確な指示・判断(39%)、②感染対策・安全安心の環境設定(17%)、③職員の声を聞いてほしい(10%)でした。
管理職の皆さんは、職員の安全対策にはかなり配慮していることと思いますが、職員の側から見るとまだまだ安心できる状況にはなっていない場合もあるようです。
●当たり前のように我々を出勤させているが、家族もいるので、自宅勤務にしてほしい。
●全員を出勤させないでほしい。
●小さい子どものいる職員に対する出勤を配慮してほしい。
●もし、コロナにかかったらきちんとかばってほしい。
●隣の市がやっているからといって、中途半端な登校日を止めてほしい。
また、アンケートだけではなくZoom等を使い、各地の先生方から話を聞きましたが、緊急事態宣言の特定警戒区域に勤務する若手教師(A先生)がこんな話をしていました。
「『三密を避けましょう』のアナウンスも虚しく、勤務環境改善の動きは鈍い。在宅勤務が可能となってからも、職員会議や研修の際には一部屋に40人弱が集まる。日頃から自分を犠牲にすることに慣れてしまっている教師の中には、感染リスクを負って出勤することに疑問を抱いていない人も多く、『自分は大丈夫だろう』という気持ちも見え隠れする。そのような雰囲気の中で、一部の人たちの『危機感の高さ』は、『心配性』や『大袈裟』と認識されてしまう」
こうした状況に毎日へとへとだと言います。A先生は、だからといって諦めるわけではなく、動きます。
「市内の感染者が日々増加する中、せめて自分にできることをと考え、担当する研修会の延期を申し出た。快く承諾してもらえたものの、こちらが申し出なければ予定通り行われていたであろうことに疑念を感じた。そして、延期の決定を受け、オンライン研修の実施を提案した。『出勤することも大切だから』という言葉に違和感を覚えながらも、急な提案を門前払いしない姿勢に感謝と敬意を示し、実施要領を説明した。結果として提案は受け入れられた。『若い人はすごいなあ』という言葉をいただいたが『自分でやるしかないんだ』と覚悟した瞬間だった」
この事態にできることをしたいと思う職員は少なくなく、それが数字にも表れたと思います。アンケートにも、
●職員の声を聞いてほしい。個別に。休校中の課題の内容や量をどうするのか、全く話し合うことなく、担任任せだった。子どもの心理的ケアや今できることについても話し合う場をもつようにしてほしい。
●この状況の中で最大限できることを一緒に考えたいです。
●それぞれの先生方の不安や不満を少しでも聞いてほしい。
といった声が聞かれました。
職員は、管理職と話したがっているようです。そしてまた、学校にフィットした対策を職員同士で協議したいと思っているのです。指示に従わせているだけではやがて管理職は信頼を失い、職員は仕事を遂行する意欲を失います。学校はウイルスによって破壊されるのではなく、こうした信頼関係の喪失によって壊れていくのです。A先生の上司は、提案を受け入れ、その仕事ぶりを称讃しながらも、A先生は違和感をぬぐい去れなかったのではないでしょうか。私は、ここで管理職が言うべきだったことは「すごい」という称讃よりも、心からの「ありがとう」だったのではないかと思います。