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職員の心のケア、忘れてはいませんか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #39】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~

上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二

多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第39回は、<職員の心のケア、忘れてはいませんか?>です。

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

疲弊する教師たち

2020年度は、正に「波乱の幕開け」となりました。言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症予防に係る一連の対応で学校現場は本当に大変だろうと思います。私の勤務先のような緊急事態宣言が発出されていない地方の大学ですら、テレビ会議システムによってゼミや新入生の面談をする等の学内から感染者を出さないための配慮をしています。ましてや感染者が数多く報告されている地域においては、対応に苦慮されているのではないでしょうか。

4月になって始業式や入学式だけ実施してすぐに再休校になった学校もあれば、世情を観察しながら注意深く授業を継続している学校もあります。こうした状況の中で、子どもたちの感染も心配ですが、私はそこで働く職員の方々の健康も大変心配しています。「密接」はダメだと言われながらも、子どもに何かあったら、触れ合ってしまうことはあり得ます。また、低学年の子どもに2メートルとも言われるソーシャルディスタンスを保ちながら指導するなどかなりの困難が伴います。そもそも、今の標準的な教室規模では、少人数学級でない限り、その距離を確保することなど不可能です。

あるベテラン教師は言います。「密閉」が禁止されているので、窓を開けて授業しているそうです。春先はまだ肌寒く、厚着をしても手足から冷えてきて、その疲労感は普段の2倍3倍にもなります。年老いたご両親をおもちの中堅の教師は、自分がもし感染したら親に感染させてしまうことが心配で、「正直言って出勤するのが恐い」と辛い心情を話してくれました。

また、ウイルス感染は地震や台風などの目に見える危機と異なり見えない分、危機対応をするにしても、職員の共通理解が難しいと嘆く中学校の教師もいます。その先生は、学習課題を与えた後は、生徒が個別に課題を解決するスタイルで授業をしたり、手洗いをするときは「密集」しないよう指導し、互いの距離を保つように声をかけたりしているそうです。もちろん手洗い場には、ガムテープで立ち位置が示してありますが、見ていないと身体を密着させ、じゃれ合ってしまう生徒もいます。そうした対策の徹底に尽力する教師もいれば、一方で「無理だ」と諦め、無頓着な教師もいるそうです。その話をしてくれた教師は、生徒への対応よりも、そうした職員間の意識のズレにヘトヘトになると言います。

先生方の中には、見えない敵から子どもを守りながら、自分自身と家族を守るというウルトラCのようなことを毎日している人もいます。子どもよりも先に教師の身体、それよりも先に精神が破綻しそうです。

こんな状況にもかかわらず、笑うに笑えない管理職の方もいるようです。ある学校の新任校長は「自分色を出す」と赴任の挨拶で述べ、早速、取りかからせた仕事は、昨年度末まで前任校長を含め旧職員たちが作った新年度文書の作り直しだったそうです。職員はコロナ対応をしなくてはならないのに突如降ってわいた事務仕事に初日から忙殺されたと言います。お気持ちはわからないではないですが、あまりにも状況がわかっていないのではないでしょうか。前年度からいる職員の一人は、「本気で辞表を出そうと思った」と言っていました。

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