宿泊学習で、子どもの就寝時間の見回りを楽しく【宿泊学習の面白対応術 #2】
修学旅行やキャンプなど、小学校の宿泊学習において、就寝時になってもなかなか寝付いてくれない子どもたちには、困ってしまいますよね。松下先生も、かつては就寝時間の見回りは苦痛でしかなかったとのことですが、あるアイデアで、楽しいものになったのだそうですよ。
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導:大阪府公立小学校教諭/松下隼司
子どもたちと先生の演技合戦!
初任のころは、宿泊学習での就寝時間の見回りが苦痛でした。
なかなか寝付かない子どもたちがいて、深夜1時半まで部屋を見回った経験もあります。狸寝入りが上手な子どもたちがいて、「寝てるな」と思って私が部屋を出たら、実は起きていたということもありました。
「お願いやから、早く寝て!」とイライラしながら、各部屋を見回っていました。
翌日は、疲れが取れず、子どもも私もフラフラでした。
しかしやがて、教職10年目を過ぎたあたりで、この見回りの楽しみ方に気づいたのです。それはズバリ、「教師が子どもの狸寝入りを上回る演技力で、部屋から出ていったふりをすること」!
以下、その手順です。(私は男性なので、男子部屋の見回りです)。
- 私が部屋に入る。(寝ていたら部屋を出る)。
- 寝ていない子どもがいれば、寝るように指導する。
- 私が“部屋を出たふり”をする。(本当に寝付いたら、部屋を出る)。
- しばらくして、狸寝入りをしていた子どもたちがしゃべり出したら、「寝る!」と言って驚かせる。
”部屋から出ていったふり”をした後は、パターンがいくつかあります。
消灯時刻を過ぎているため部屋の電気は消えていますから、教師は部屋のドアに近くで待機したり、子どもの真横で息をひそめていたりします。
教師の演技力で、子どもたちにいかに「先生、出て行った」と自然に思わせるかが鍵です。
最も男の子たちが喜んでくれたドッキリは、枕元に潜んでいたパターンでした!
子どもたちはドッキリ番組のように驚きますが、とても嬉しそうです。私も楽しんでいます。これを各部屋にしていきます。
翌日、男の子たちは自慢気に、女の子にこのことを話しますよ。
消灯時間になったら部屋の電気を消し、部屋のドアを開けておくことを事前指導しておきましょう。部屋のドアを開けておくのは、子どもの様子を確認しやすいからです。教師がドアを開け閉めしていると、そのときの音で寝られない子どももいます。また、部屋にトイレがない場合、トイレに行くために部屋のドアを開け閉めするとその音で目が覚めてしまう子どももいるからです。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
松下隼司の笑って!!エヴリディは、木曜に更新します
イラスト/したらみ