赤坂真二×堀川真理「最大のいじめ予防は、自治的な学級づくり」いじめと戦う覚悟と戦略③

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上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二
赤坂真二先生(上越教育大学教職大学院教授)と堀川真理先生(元新潟県公立中学校教諭)
赤坂真二先生(上越教育大学教職大学院教授)と堀川真理先生(元新潟県公立中学校教諭)

文部科学省が全国の小中高校を対象に実施した2021年度の調査によると、いじめ認知件数は61万5351件となり、過去最多を記録しました。

学級づくりに関する実践研究の第一人者・赤坂真二先生(上越教育大学教職大学院教授)と、カウンセリングの手法を用いた教育によって、いじめと戦い続けてきた堀川真理先生(元新潟県公立中学校教諭)。桁違いの「本気度」で、いじめ問題と向き合い、「いじめの問題に、当事者でない人はいない」というメッセージを発し続けてきたお二人の対談を全3回でお届けします。

第3回は、いじめを予防する学年や学校でのチーム対応について解説します。

子供同士で自ら問題解決できる力を付けよう

――いじめ予防のために、学年チームや学校全体でどんな取組を行うべきでしょうか。

堀川 以前、1年生を担任したときに、学年道徳として、

①四つの約束(話をよく聞く、物を大切にする、陰口を言わない、困ったときは相談する)
②呼ばれたい名前
③ふわふわ言葉とちくちく言葉
④絵本『わたしのいもうと』(文/松谷みよ子 絵/味戸ケイコ 偕成社)を教材にした授業

を行いました。子供たちだけでなく、先生方も少なからず感じることがあったようです。

赤坂 現在のいじめ対応は、堀川さんのようなスーパーティーチャーが孤軍奮闘しなければならない「個業」になっています。担任一人が警察も裁判官もカウンセラーもすべてを担っている。だから、その先生がいなくなったら子供が戸惑います。私は、仲間同士で分かち合うようなシステムをつくるべきだと考えています。

私の師匠の橋本定男氏は、中学校の校内暴力が全国的に広がり始めた時代に、小学校で自治的集団をきちんと育てれば、中学校の荒れに耐えうるはずだと考えていました。
実際に我々の学年は荒れませんでしたから、彼の考えは、正しかったのではないでしょうか。
つまり、小学校のうちに自治的な能力――教師の力を借りずに、子供同士で自ら問題を解決できる力を育てれば、それがいじめ予防にもつながるわけです。

うちのゼミ生たちは、日常的に他者の課題に積極的に関わり、ぶつかり合い、助け合っています。
「今どんなことに困っているの。じゃあ、この本を読んでみたら?」とか、密にやりとりをしている。教師は、子供たちの間にこのような絆をつくり、そうした体験を保障する必要があると考えています。

そのためにまず必要なのは、担任が力による指導をやめ、独裁政権をやめることです。
かつて、学校が落ち着いていた時代には、今のような管理傾向は強くなかったはずです。学級崩壊が増えるにしたがって、学級経営を学習しない教師たちが、管理することを選択してきました。
失礼ながら、今の多くの管理職は1990年以前に学級担任をしていて、生徒指導コストが少ない中でバリバリ指導してきた。そういう感覚で、今の学級担任に「もっと厳しくしなさい」といったことを言われても困るわけです。今は時代が違いますし、学級崩壊や不登校を増やすことにもなりかねません。

堀川 そうですね。だから最近は、心を病む先生が増えています。
赤坂ゼミや私がかつて担任した学級のように、素のままの自分でいられることが大切ですよね。まずは、教師自身が自己開示しましょう。赤坂さんがよく言いますが、教室が安心できる場になれば子供たちは勝手に勉強するし、学力も上がります。

赤坂真二先生(上越教育大学教職大学院教授)
あかさか・しんじ。上越教育大学教職大学院教授。1965年新潟県生まれ。19年間小学校教師として勤務後、2008年より現所属。著書に『「気になる子」のいるクラスがまとまる方法!』(学陽書房)、『赤坂版「クラス会議」完全マニュアル』(ほんの森出版)ほか多数。

共通実践があると、チーム対応は機能しやすい

赤坂 いじめがあったときには、子供たちから「先生、あれ、いじめじゃない?」と言う声も上がります。

20年ほど前、私と堀川さんが同じ中学校区で働いていた時に、私の「ふわふわ言葉とちくちく言葉」の実践を堀川さんが見に来ていました。私の実践が全校に広がり、それを見に来た堀川さんが働く隣の中学校でも、堀川さんを含め全学級の先生で一斉にやりました。その動きを見て、他の中学校と小学校でも始まることになり、中学校区で「ふわふわ言葉とちくちく言葉」が共通言語になったのです。

このような共通実践があると、「チーム学校」は実現しやすいと思います。
共通実践を別の言葉で言い換えれば、学校の中に公用語を作ることです。
仮に「ふわふわ言葉とちくちく言葉」を公用語にしたなら、「それって、ちくちく言葉だよね」と指導の中で使っていけます。それが定着すると、子供たちの中でも流通するようになり、4年くらい経つと家庭の中にも入っていきます。

子供は環境の中で育つものです。一つの教室でよい実践をすることは大事だけれど、よいものは広げていかなければ文化になりません。文化にならないと、環境は変わりません。
どんなに学校で「ふわふわ言葉とちくちく言葉」をやっても、地域のスポーツ少年団で「何やっているんだ、ばかやろう!」と罵倒されていたら、浸透するのは難しいですよね。

堀川真理先生(元新潟県公立中学校教諭)
ほりかわ・まり。新潟県生まれ。公認心理師、学校心理士、ガイダンスカウンセラー等の資格を持つ生徒指導・学級指導のプロ。教員時代には、学級経営やいじめ問題のセミナー登壇や原稿執筆も多数行った。現在は、心と体を癒すカウンセリングサロン「ハートエステサロン毬穂」を経営。著書に『対話でつむぐ 愛と勇気の生徒指導』(明治図書)など。

子供の生活や心のメンテナンスも小中連携を

――いじめを予防するための小中連携を機能させるにはどうすればよいでしょうか?

堀川 いじめについて、小学校とか中学校という区別はありません。「見逃さない」「流さない」ということを、全教職員が徹底することです。小学校でいじめがないのに、突然中学校でいじめが花開くなんてことはありえませんから。

赤坂 どの学年を担任しても、前の学年のことがトラブルの根っこになっている、というのはよくある話です。だから、中学校で起こったトラブルの原因が、小学校にあることは珍しくありません。
私はこういうことが起こるのは――繰り返しになりますが――教師の力による指導が要因だと考えています。力による指導は、不都合な問題に蓋をして先送りするシステムだからです。
そのときの問題やストレスは解決されないまま、不信感だけを抱いて子供たちは進級していきます。
だから、まずは教師が力による指導をやめることです。

小中連携においては、社会性育成のカリキュラムを、系統立てて実践する必要があると考えています。
今の学校は、学力を上げる教科指導における連携は担保されているけれど、教科指導を支える子供たちの生活や、心のメインテナンスのような部分についてはまったく連携していません
それをやらないから、毎年同じようなことから始めなければならないのです。

【終わり】

対談 赤坂真二×堀川真理「いじめと戦う覚悟と戦略」
第1回
第2回

取材・文/長昌之 撮影/西村智晴

『小六教育技術』2018年6月号より

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