研究授業を成功させるには〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第24回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁
研究授業を成功させるには〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第24回】

今回は、「研究授業を成功させるには」の前編です。研究授業を成功させるには三つのイメージをもつことが重要だという話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。
※本記事は、第24回の前編です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は、想定外のことをイメージして研究授業に臨み、伸びない教師は、イメージをもたずに研究授業に臨む。

研究授業で大事にしたい子供のイメージ

研究授業をするにあたって私は三つのイメージを大切にしています。

ひとつ目は、子供のイメージです。

前時までの子供のノートを見たり授業での様子を思い出したりしながら、研究授業当日にどんな反応を示すのか、学級の子供一人一人についてイメージを膨らませ、座席表に書き出します。

「この子はこう発言するだろう」
「この子は自分の考えがまとまらず困ってしまうだろう」 

こうした作業をしていくと、子供の意見予想や指導案には書かれていない個々への支援が浮かんできます。このイメージが重なっていくと授業の全体像が見えてきます。

時には、指導案を立てた際に予測した子供の反応と前時までの子供の反応が大きく違ったため、研究授業の前日に指導案の展開をガラッと変えたこともありました。

研究授業で大事にしたい教師のイメージ

ふたつ目は、教師のイメージです。

ここで言う教師とは自分自身のことです。

授業の中で、自分が発する言葉、動き、時間配分などを学習の流れに沿ってイメージします。

教師の説明などは、自分がどんなことを言うかノートに書き出し、時間を計ります。子供の活動時間をなるべく多く取りたいので、教師の話を短くするためです。この作業をすると無駄な言葉が多いことに改めて気付かされます。その無駄な言葉を省き、秒単位で短くしていきます。

イラスト1

話し合いの場面では、「この発言が出たらこの資料を提示しよう」「はじめにこの意見を取り上げ、次にこの意見を引き出そう」など、子供の意見に対して、自分がどのように切り返すかをイメージします。若い頃は、こうした子供と私のやりとり予想を1時間分作ったこともありましたが、当然のことながらその通りになったことは一度もありませんでした。

しかし、この作業が無駄だったわけではなく、研究授業では冷静に子供たちの意見を受け止めることができました。また、私が思っている以上のよい意見が出たときも、「そんな考えがあるのか」とその意見の素晴らしさを感じることができました。

研究授業で大事にしたいうまくいかないイメージ

三つ目は、うまくいかないイメージです。

私は三つの中でこのイメージが一番大切だと考えます。

研究授業のイメージと言うと、教師の思い通りにうまく流れることを想像しがちですが、授業は生物ですのでそんな簡単にいくものではありません。ましてや、研究授業の緊張場面です。たくさんの教師に囲まれた子供たちは普段の力を発揮できないことが多々あります。それは教師も同じです。普段の授業でできていることができない、そんなことが予想されます。

例えば、「発問に対して誰も手を挙げない」「意見が出すぎて広がりすぎる」「話し合いの論点がずれてきた」「教師の結論となる意見をはじめに言われた」「教師のイメージ通りに子供が動かない」など、他にもたくさん浮かんでくると思います。

うまくいかないことをイメージし、その時にどう対応するかを備えることで、想定外が想定内に変わることもあります。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

「研究授業を成功させるには」〈後編〉へ続く

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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