小3 国語科「きつつきの商売」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「きつつきの商売」(光村図書)の全時間の板書、発問、予想される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小三 国語科 教材名:きつつきの商売(光村図書・国語 三上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都練馬区立大泉学園小学校校長・加賀田真理
執筆/東京都練馬区立大泉学園小学校・浅沼由香里

1. 単元で身に付けたい資質・能力

この単元では、登場人物の行動や気持ちなどを、叙述を基に捉える力を育成することをめざします。
2年生までは「場面の様子」や「登場人物の行動」に着目して内容の大体を捉えてきました。
第3学年の学習からは、それに加えて、叙述を基に登場人物の「気持ち」についても捉えることがポイントです。本単元ではその第一歩として、さまざまな言葉から気持ちを想像する活動を丁寧に行うことで、より具体的に想像力をふくらませながら読む力を身に付けていきます。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

気持ちを想像するヒントとなる言葉を探し、想像した気持ちとともに1語ずつスライドに整理し(4・5時間目の指導アイデアの項に示した「気もちの言葉辞典」スライド例参照)、学級全体で「気もちの言葉辞典」としてスライド集にまとめるという言語活動を設定します。

4月の学習開きの際には、教科書P4の「国語の学びを見わたそう」で1年間の学習の進め方を見通し、「3年生の学習では知っている言葉を増やしたり、新しく知った言葉を使ったりする」ことを確かめます。
また、教科書P9の「分ける・くらべる」で、見つけた言葉などを仲間分けし、比べて整理していこうとする意識を高めておきます。

この単元の学習で初発の感想を書く際には、ワークシートに「心に残った言葉」という欄を入れておき、そこに児童が書いた言葉を、学習計画を立てたり、学んだ言葉を分類したりしていくきっかけとします。
また、学んだ言葉を「①ひょうかの言葉」「②時間をあらわす言葉」「③ようすや動きをあらわす言葉」「④音や会話の言葉」の四つの観点から分類・整理していきます。
それにより、直接的に気持ちを表す言葉以外にも、気持ちを想像しながら読むことができるさまざまな言葉があるのだという発見を促します。さらに、これら四つの観点を意識することで、他にも同じような言葉がないか探してみようとする意欲を引き出します。 

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 気持ちを表す言葉を集める意欲を引き出す「気もちの言葉辞典」の作成

初発の感想から出てきた、「心に残った言葉」の中から意図的にいくつかの言葉を取り上げ、その言葉から登場人物の気持ちが想像できそうかどうかを考えます。気持ちが想像できた言葉については、それらを比べ、どのように分けられるかを考え、まとまりごとの名前を学級全体で考え、つけていきます。

本実践では、「①ひょうかの言葉」「②時間をあらわす言葉」「③ようすや動きをあらわす言葉」「④音や会話の言葉」の四つの観点に整理します。そうすることで、直接的に気持ちを表現する言葉でなくても、気持ちを想像できる言葉がちりばめられていることに気付けるよう促し、主体的に教材文にかかわろうとする意欲を引き出します。

〈対話的な学び〉 スライドを活用した共有と対話

作成した「気もちの言葉辞典」のスライドを見せ合い、自分が想像した登場人物の気持ちについて小グループで互いに説明し合います。その後、お互いの説明に対する感想を伝え合い、最後は、登場人物の気持ちを想像しながら音読をしてまとめます。 

〈深い学び〉 獲得した力の活用を図る「気もちの言葉辞典」の活用

本単元で作成した「気もちの言葉辞典」を活用して、作品全体を読み味わいます。
子供たちは、自分が作成したスライドだけではなく、友達と一緒に作成した学級全体の「気もちの言葉辞典」を活用して、作品全体を読んでいきます。

単元後の展開として、今回見つけた言葉の様々な使われ方や、読書活動の中で新たに見つけた言葉を増やしていくほか、「明暗や色をあらわす言葉」「数や大きさをあらわす言葉」など、観点を増やしていくことも可能です。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1) 難語句を端末の画像で確認する

1時間目に行う初読の際、「ぶな」「うろ」「たちつぼすみれ」などの植物名は、タブレット端末を活用し画像で確認することで、そのイメージを捉えることに役立つでしょう。この時期の3年生は、まだローマ字を未習のため、画像を検索する際には音声入力や手書き入力、教科書のQRコードを活用するとスムーズです。

(2) 気持ちを想像するヒントとなる言葉を色付けして出し合う

個々に「気もちの言葉辞典」を作成していく段階で、共通理解を図るために、タブレット端末の共有機能を活用します。自分が見つけた言葉と同じ言葉を調べている友達がいたり、自分だけが見つけた言葉があることを確認したりすることで、子供たちが自らの学習を調整するきっかけとすることができます。

(3) 対話の場面を全体で共有するために

6時間目に小グループで行う、想像したことの共有を図る場面では、対話の様子を動画で撮影し、子供たちの気付きや対話の良さを学級全体に提示します。そうすることにより、全体での交流や評価に生かすことも可能になります。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: 気もちをそうぞうしながら読み、「気もちの言葉辞典」を作ろう

【主な学習活動】
・第一次(1時
・P4「三年生の国語の学びを見わたそう」で、今年度の国語の学習の見通しをもつ。
・P9の「分ける・くらべる」で、ものごとの分類・整理の仕方について知り、活用する意欲をもつ。

・第二次1時2時
① これまでに学習した物語の読み方を振り返り、確認する。教材文に出合い、初発の感想を書く。
② 気持ちが想像できる言葉を見つけ、その言葉からどんな気持ちが想像できるかを考えながら「気もちの言葉辞典」にまとめていこうとする見通しをもち、学習計画を立てる。

・第三次(3時4時5時6時)
③ 見つけた言葉を分類し、観点を考え整理する。その観点に基づき、気持ちが想像できる言葉をさらに探していく。(個人学習)
④ 個人で見つけた気持ちが想像できる言葉と、そこからどんな気持ちが想像できたかを「気もちの言葉辞典」にまとめる方法を知る。
⑤ 見つけた気持ちが想像できる言葉を、想像した気持ちとともにまとめ、「気もちの言葉辞典」として記録していく。(個人学習)
⑥ 小グループになり、子供自身が作成したスライドの言葉について、気持ちを説明しあい、説明に対する感想を交流する。

・第四次(7時8時
⑦ ⑧「気もちの言葉辞典」を活用して、作品全体を読み、動物たちの気持ちを想像しながら音読する。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

今まで学習した物語を振り返り、できるようになったことや共通点を確認します。
その上で、この単元では「気もちを想像する」ことを新しく学習することを確認します。
さらに、「きつつきの商売」という題名から想像したことについて子供たちが自由に発言し、関心をもって範読を聞けるようにします。
その後、難語句の確認をし、初発の感想をワークシートに書きます。
難語句の確認の際、「ぶな」「うろ」「たちつぼすみれ」などは、タブレット端末を使って、実際の写真を見るとイメージが伝わりやすく、便利です。

< 初発の感想を書くワークシート >

1時間目のワークシート
▶︎ワークシートのダウンロード

【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
「主体的な学び」のために

2時間目は、前時に児童が書いたワークシートをまとめたものを配布し、初発の感想の「心に残った言葉」の中から、「気もち」に関わるものを取り上げ、「気もち」について考えていきます。
「きつつきの商売」には、直接気持ちを表す言葉はほとんど出てきません。しかし、気を付けて読んでみると、気持ちが表現されている言葉がいくつもあることを発見することができます。
児童から出てきた「分からない言葉」や「心にのこった言葉」の中から取り上げることが有効ですが、うまく出てこない場合には「えりすぐり」など取り上げる言葉を用意しておいて、児童に投げかけを行うようにしていきます。
そのような言葉をたくさん見つけて、どのような気持ちか想像しながら、「気もちの言葉辞典」にまとめていこうとする、意欲と学習の見通しをもちます。気持ちを表す言葉については、巻末の「言葉のたから箱」を参考にすると視野が広がります。

気持ちを表す言葉には、どんな言葉があったかな。

悲しい・楽しい・うれしい・さびしい…

P158「言葉のたから箱」の「気持ちを表す言葉」も見てみましょう。いろいろありますね。では、「きつつきの商売」には、どのような気持ちを表す言葉が出てくるか、探しながら読んでみましょう。

さっきみんなで確かめた気持ちを表す言葉は、「きつつきの商売」に出てきたかな。

「うれしそうに」くらいしか出てこない。

でも、分からない言葉で確認した「えりすぐり」という言葉からは、気持ちが想像できるんじゃないかな。

「えりすぐり」という言葉から、お店を大事にしている気持ちが伝わってくるね。

みんなが書いた「心に残った言葉」の中にもありそうかな。

「ずうっとずうっと」という長い時間を雨の音につつまれていたのは、やっぱり気持ちがいい時間だったんじゃないかな。

直接気持ちを表す言葉でなくても、気持ちを想像できる言葉があるのですね。「えりすぐり」「ずうっとずうっと」「にこにこうなずいて」「うふふ。」などのような言葉をもっと探してみましょう。集めた言葉はどのようにしたらよいでしょうか。

記録して、たくさん集めたいね。

集めたら、みんなで出し合って、比べてみたいな。


【3時間目の板書例 】(「全文ワークシート」を使用)

イラスト/横井智美

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