指導と評価の一体化を図るうえでの課題と効果とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#24】
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この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。
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目次
指導計画、評価計画を立てるうえでの課題や効果
前回、指導と評価の一体化を図る具体的な方法について話しました。ただし、具体的に指導計画、評価計画を立てるための用語や方法については、地域ごと、教科ごとに異なるなど、いくつかの課題もあります。今回は、そういった課題や指導と評価の一体化を図ることによる校種ごとの効果についてお話ししたいと思います。
目標と評価規準を分けて書く方法とは?
前回、指導計画と評価計画について具体的に説明しました。ただし、指導計画や評価計画を作成していくには、いくつかの意識すべき点があります。例えば、目標やねらいやめあて、課題や問題など地域や教科によって使用する用語や意味が少し異なるところがあります。また、指導案レベルで記される目標と評価規準の関係も地域ごと、教科ごとに異なることがあります。
通常、単元には単元の目標があり、それを受けて単元の評価規準があるわけですが、その単元の目標の表現様式は教科ごとに異なっています。三つの資質・能力について1文で書いているものもあれば、観点ごとに書く教科もあるのです。例えば、算数・数学などは、単元の目標と評価規準を、それぞれ三つの資質・能力に対応する形で書いていることが多いようですが、そうすると、単元の目標と評価規準の文章はほぼ同様のものとなり、文末だけが違うというような状態になるわけです。そうなると、わざわざその二つを分けて書く必要があるのかということになってしまいます。
ですから、私は単元の目標を1文で、中心となる活動と三つの資質・能力を関係付けて書けばよいと考えています。そうすると、単元目標は総括的な目標となるし、単元目標と3観点による単元の評価規準の表記は別のものになるので、目標と評価規準を分けて書く意味が生じてきます。ただし、これは先にも触れたように、地域や教科によって流儀があるため、あえてこの方法で記すべきだと言うことはしていません。どのような書き方をしているか、その意図を自覚していることが大切です。
どんな地域でも、どんな教科でも大事なことは、資質・能力をベースにして単元計画ををつくり、そこに評価計画が入ってくる、行きつ戻りつしながら計画の質を高める、というイメージです。先にも触れた通り、このように、指導と評価の一体化を図りながら、指導計画の精度を上げることは、結果的に単位時間の目標、あるいはめあてなどの精度を上げることにもつながりますし、日々の授業の精度を上げることにもなるのです。
校種ごとに異なる課題も指導と評価の一体化で改善できる
このように指導計画と評価計画を一体に進めることは、必ずあらゆる校種の先生方にとって、よりよい「単元づくり・授業づくり」、言い換えれば日々の授業改善につながっていくのです。
例えば、評価に対する意識に関して、校種別の傾向を比較してみると、小学校の先生方は、さほど厳密さにこだわらない傾向があるように思います。子供の学びに寄り添おうとする意識は強いように思うのですが、信頼性と妥当性の高い評価を実現しようという意識がやや弱い傾向を感じます。そのため、評価規準を適切かつ的確に設定し、子供の学びをより精緻に見とって指導改善につなげていくという点で弱さがあるように思うのです。
それに対して、中学校や高等学校の先生方は評価に対して非常にセンシティブであり、小学校に比べれば、より厳密に行おうとする傾向があると思います。ただし、それは高校入試や大学入試につながる評定のほうに目が向く傾向が強いように思います。そのため、どうしてもテストの点で輪切りにして評価するという意識が強く、子供たちの日々の学びの状態自体をていねいに見とったり、それを指導改善につなげていくという意識が弱いように思います。
だからこそ、この機会に指導と評価の一体化を図り、精緻な評価規準を設定し、指導計画・評価計画の作成と実施を意図的に進めていくことを、あらゆる校種の先生方に意識していただきたいのです。それによって、校種ごとに異なる課題が、いずれも改善されていくことになるのではないかと考えています。
指導と評価の一体化から考えるルーブリックのシンプルな整理法【田村学流 単元づくり・授業づくり#25】はこちらです。
執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之