子供の心を伸ばす特別活動「キャリア教育」
二学期は成長の時期です。一学期のうちに固まってきた、それぞれの集団が十分に活動するときです。昨年度と同じ活動をするにしても、「何をするか」ではなく「どのようにするか」「何のためにするか」という自分の学びを自覚する「キャリア教育」について解説します。
執筆/東京都公立小学校校長 清水弘美先生
目次
目標に向かっていこう!キャリア教育の要としての役割
キャリア教育の要として、特別活動が位置づけられています。キャリア教育は生き方教育ですから、教育活動の全てにおいて行われている教育活動です。けれど各教科等の中でばらばらに行われているだけでは、各教科等のねらい達成が優先されるために、子供たちにキャリア形成を自覚させることは困難です。
そこで、各教科等の学びを実生活に活用できるようにするために、体験活動や振り返りを大事にしている特別活動の中でキャリア形成を進めることが大切になります。キャリア教育の要としての役割を果たす上で、いくつかの言葉を押さえておきましょう。「キャリア」とは、人がさまざまな役割を果たしていくうちに「自分はこれに向いているな」と気づいたり、「役に立つって、楽しいな」と感じたりしながら、活動を通して学んだことの連なりや積み重ねのことです。
「キャリア発達」はそんな働きかけの中で、自分らしい生き方を実現していく「過程」です。いまの状態が、どんな有様なのかということです。「キャリア形成」は、自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現していくための「働きかけ」ですから、学校教育のすべてにおいて行われることです。例えば、係活動や学級集会もそのまま「キャリア形成」だといえます。
特別活動では、自分や自分たちの経験を振り返って、自分の学びを自覚する時間を大切にしています。これが、キャリア教育の要となる活動です。各教科等の学びもつないで自分のキャリア発達を自覚し、自己肯定感や自己有用感を高めていくことができます。
キャリア教育を視野に入れた特別活動の実践
では、具体的に特別活動の中でキャリア教育は、どのように行っていけばよいのでしょうか。まず間違えてはいけないことが、学級活動(3)*をすることだけで、キャリア教育をしていると思うことです。学級活動(3)を、各教科等のまとめのように使ってはいけません。
キャリア教育は、大きくまとめると「生きること」「学ぶこと」「働くこと」に分けることができます。特別活動の中では、「生きること」は「目標に向かって頑張ろうとすること」「健康や安全について考えること」「自分のよさを伸ばそうとすること」など、「学ぶこと」は「自分の学習習慣を見直すこと」「図書館を使って探究活動をすること」「関心のあることに取り組むこと」など、「働くこと」は「係活動」「当番活動」「児童会活動」「集会活動」で役割分担をして協働することなど、があります。特別活動のすべてが、キャリア教育の目標に向かっているのです。
* 学級活動(3)とは
「小学校学習指導要領(H29年告示)解説 特別活動編」に示されている学級活動の3つの内容の3つめ「一人一人のキャリア形成と自己実現」にあたる項目。(ア)(イ)(ウ)の3項目から成る。(3) 一人一人のキャリア形成と自己実現
ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成
イ 社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解
ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用
キャリアパスポートの考え方
キャリア教育は、教育活動すべての中で行われるものです。とはいえ、すべての教育活動の成果物などをただ取っておいても、意味がありません。その成果物の中から成長したことを見出し、ある程度まとまった期間ごとに成長を再編成しておくことが必要です。自分の成長を見直し、この先へ向かっての目標を再編成する時間に学級活動(3)を使うことができます。
清水弘美 特別活動を柱にした教育活動により、子供の自尊感情を高め、学級崩壊のない学校づくりを実現。2015年には、モンゴル・エジプトなど各国の教育者が前任校を視察に訪れ、「特別活動」「日本型教育」のモデル校として新聞各紙で大きく紹介され、話題となった。著書に、『みんなでできる! 心がまとまる! 集団行動の指導法』『台本選びから演技指導・演出法まで 学芸会の指導~成功への道筋~』『特別活動でみんなと創る 楽しい学校』(以上、小学館)など。
『特別活動でみんなと創る 楽しい学校』
清水弘美・著
東京都八王子市立弐分方小学校での特活の取り組みをまとめました。
1500円+税
ISBN 978-4-09-840174-1
小学館刊
取材・文/高瀬康志
『教育技術 小五小六』2019年9月号より