授業力を高めたい!⑨ 教材研究ノートをつくる|樋口綾香のすてきやん通信
Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 研究の仕方が分からなかったり一人では不安だったりする先生に向けて、授業力を高めるための手段や考え方についてお伝えするシリーズをお届けしています。今回は、教材研究ノートについて、いっしょに学んでいきましょう。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
教材研究ノートをつくろう!
みなさんは各教科で教材研究ノートをつくっていますか? どの教科でもつくっている人もいれば、まったくつくったことがないという人もいるかもしれません。
教材研究ノートとは、授業をする前に、教材について調べたことや、授業計画、板書計画、発問計画などを書き込んだノートのことです。
私は、国語の教材研究ノートをつくっています。教員になったころからずっと続けていますが、その道具や内容はどんどん変化してきています。今回は、私がこれまでにつくった教材研究ノートのポイントについてお伝えします。
①学びの軌跡
印刷した教材文や、学習課題を書いたノートを準備します。その教材に対して、読者、あるいは児童の気持ちになって感じたことを書き込みます。
自分しか見ないノートなのですから、きれいに書く必要も、誰かに遠慮する必要もありません。わからないことはわからないと書き、自信がないときには「?」マークを書きます。
とにかく、思いのままに書き、「今の自分が感じたこと」を残すことに価値があります。
「今」の考えを広げていくのも、深めていくのも、否定するのも、新たな考えを生み出すのも、「未来の自分」です。そして、これらはすべて成長の証です。
考えたことや感じたことを書き残していなければ、自分が成長していることに気づかず、同じような場所をぐるぐると回っているかもしれません。
学びの軌跡を残していくことは、確実に授業力向上につながります。
②見たこと、聞いたこと、調べたこと
教材研究ノートには、今の自分が感じたことだけでなく、そのとき見たこと、聞いたこと、調べたことも残すようにしましょう。
たとえば、研究授業を参観したら、指導案を貼り、そこで見たことを書きこみます。研究授業の討議会で聞いたことも書き込みます。さらに、調べたことやもっと詳しく知りたいと思ったことも書き込みます。
指導案だけをファイルに入れて綴じている人も多いと思います。その指導案、後で読み返していますか。普段使わないファイルに入れてしまえば、もう二度と見ることがない、なんてこともありますよね。教材研究ノートに貼っておけば、1年間の自分が経験したことを振り返ることができます。
私たちは、いろいろなところから、授業力を高める機会をもらっています。研究授業を参観したとき、研修で講話を聴いたとき、放課後に何気ない雑談をしたとき、本や新聞を読んだとき。授業力に関係がありそうなことも、なさそうなことも、記録して読み返すことで、自分の知識・技能となっていき、授業力として発揮されるのです。
③授業計画
教材研究ノートに授業計画を立てるとき、具体的にどんなことを書けばよいのでしょうか。国語科を例に次に示します。
国語科の場合
- 教材分析
- 作者・筆者について
- 関連図書について
- 単元の指導目標
- 指導計画
- 各時の板書計画
- 発問と予想される子供の反応
- 学習活動、学習形態、時間配分
- 振り返りの内容
- 評価
授業計画の視点はたくさんありますが、これらはどれもつながり合っています。授業づくりにおいて多面的に見る視点が養えれば、授業力は高まります。
④ICTが大活躍
2018年度からは、タブレット(iPad)を使って教材研究を記録し、クラウド上に保存しています。
ICTを活用すれば、紙に書き込んだ教材分析も、板書計画も、子供のノートも、すべてデータ化してクラウド上にまとめることができます。
主に使っているアプリは、GoodNotes5、メモ(Apple標準)、ロイロノートです。ここでは、GoodNotes5とメモ(Apple標準)のおすすめポイントを簡単に紹介します。
GoodNotes5
手書きノートアプリである「GoodNotes5」に入れておくと便利なものは、たくさんあります。例えば、
- 教材
- 指導要領
- 教科書会社の指導計画案
- 授業記録や指導案
などが挙げられます。
全てのフォルダやノートを、手書き文字も含めて検索することができるため、探したい資料を簡単に見つけることができます。
指導要領は文部科学省のサイトから、教材は指導書に付属しているCDーROMなどからダウンロードして保存できます。これらを入れておけば、いつでもタブレットだけで教材研究ができます。
2画面操作が便利!
GoodNote5のとても便利な機能に、2画面操作が可能なことがあります。
どちらかの画面の写真やスライドを長押しし、もう一方の画面へドロップインすれば、アプリ間のデータのやり取りを簡単に行うことができます。私はKeynoteやロイロノート、写真アプリ、メモアプリなどと2画面にして使うことが多いです。
両画面ともGoodNote5にすることもできるため、教科書を開きながら板書計画を立てるのにも適しています。
メモ(Apple標準)
私は、すべての授業の記録をメモアプリに残しています。残すのは、次の三つです。
- 板書
- 子供のノートやワークシート
- 資料
資料はURLやPDF、子供のノートはスキャンして、画像とPDFを同時に二つ残すのがおすすめです。PDFは文字検索することができますし、写真はPDFよりも扱いやすいため、授業構想を練ったり、資料を作ったりするときに役立ちます。
メモアプリの設定を変更すれば、簡単に画像とPDFをどちらも保存することができます。「設定」から「メモ」をタップし、下部にある「写真に保存」をオン(緑色)にします。この設定をしてから「書類をスキャン」をすると、メモアプリにはPDFが、写真アプリにはJPGデータが同時に保存されます。
こちらの記事で、iPad標準メモアプリの活用方法について詳しく解説しています。
GIGAスクールのICT活用⑥~便利機能で仕事効率化!~
授業前の教材研究だけでなく、授業中にタブレットを使うことも多いので、授業中・授業後も単元全体を通して学んだことが記録されるのが、ICTで教材研究をするメリットでもあります。
同じ学年を再度もつときには、過去のデータを参考にして、よりよい授業をつくっていくことができるでしょう。
ICTでもアナログでも、自分に合った教材研究ノートを作成し、今の自分が感じていることをアップデートして、授業力を高めていきましょう。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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