理科授業での板書の書き方 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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教師の夏休み特集:研修活用・自己研鑽・過ごし方のヒント

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
理科授業での板書の書き方 【理科の壺】

1学期が終わり、束の間の夏休みを過ごされていると思います。1学期の授業、子どもの様子を振り返り、2学期はこんな授業がしたい!と気持ちを高められるのが夏休み期間中だと思います。「この授業は子どもたちがよく考えていた! 主体的に取り組めていた!」というポジティブな振り返りだけでなく「あの時はなんで子どもから意見が出なかったんだろう。」「自分が想定していたよりも考察が書けていなかったな」など、自分の成長につながる振り返りも行い、授業力のさらなる向上を目指しましょう! 今回は、理科授業での「板書」がテーマです。2学期以降の授業に少しでも役立てていただけたら幸いです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・小林靖隆
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

理科授業における板書の書き方

理科授業における板書には、「学習の見通し」「他者との共有」「安全な実験にするための注意喚起」「学習内容の理解」など、多くの役割があります。どこに何を書いてもよいわけではないですし、言葉をただ書き続けるだけでもいけません。インクルーシブな視点で ICT も活用しながら板書していきましょう。以下にポイントを4つ記しました。

ポイント① 〜問題解決過程のどこにいるのか、現在地を明確にさせる〜

今何を考えているのか、何を話し合っているのか、問題解決がどこまで進んでいるのかなどを教師も子どもも把握しやすいように、必ず問題解決過程のどこに今いるのか明確にさせましょう。毎回チョークで書いても良いですが、何回も使うので「問題」「予想・仮説」「実験」「結果」「考察」「結論」などの掲示物を作成して、授業中に掲示すると良いでしょう。

ポイント② 〜子ども目線でインクルーシブな視点をもつ〜

問題解決過程を明確にさせたら、今度は子どもの目線に立ち、どのような板書が学習に効果的か考えていきましょう。私が意識しているのは、子どもが使用しているノートと教師の板書を揃えるということです。小学校4年生以降は5mm方眼の横書き15マスノートが多いです。そのため、黒板の文章も横を15文字として、それ以降は改行することで子どものノートと揃えることにしています。ただし、「問題、予想・仮説、実験、結果、考察、結論」を左側2マスに書いてある場合は13文字にしています。学習用具をノートにこだわらず子どもが学習ノートと一人一台端末のいずれかを選んでもよいでしょう。

次に授業者が使うチョークの「色」です。チョークは色を使い分けることで子どもたちに理解してほしいことを強調させることができますが、色の違いをはっきりと捉えられない子どもも一定数いると言われています。効果的な場面で効果的な色を使うようにしましょう。

最も目立つ色は「黄色」で、次に「白」「赤」「青」と言われています。よって、最大に強調する必要はないが意識させたい「問題」などは文字を「白」、枠は「赤か青」で囲み、授業中に学んだ言葉「電流、電圧」「浸食、運搬、堆積」などや子どもから出た全体に共有したい子どもの意見は「黄色」を使いましょう。

ポイント③ 〜ICTの活用〜

理科は問題解決過程に沿って学習が展開されるため、前時に何を学んだかが重要です。よって、教室備え付けの大型テレビに前時の板書を表示して、前時の「予想・仮説」などを想起しやすくしましょう。これは子どもの短期記憶を補助する役割としても有効です。また、実験の注意点や結果は黒板に書くよりも大型テレビの方が共有しやすいです。学習者用デジタル教科書には実験の安全上の注意がわかりやすくまとめられています。

ポイント④ 〜子どもの言葉を拾い上げる〜

例えば、問題づくりをする際に、どのように子どもの言葉を繋いで授業展開をして、どのような板書をすればよいのか悩むことはないでしょうか。授業の中で、子どもと教師で事象との出合いを経て、疑問を投げ掛け合い、問題を見出していきますが、教室の中には耳で聞くだけでは授業中の文脈を捉えられず “置いてけぼり” の状態になってしまう子どもがいます。そこで私は、事象との出合いであってもどんな現象を見たか子どもが「事実」を発表して、それを教師が板書し、その周りに漫画の吹き出しのような枠で子どもから出た「疑問」を書き記しています。深まりそうな発言には問い返して意見を深めていきます。そうすることで、事象との出合いから出た学級内の「疑問」を基に「問題」を見出しやすくなります。

ここまで板書のポイントについて書きました。子どもの資質・能力をいかに育むかが授業の目的であって、綺麗な板書を書くことはその目的を達成するための手段の1つです。基本を大切にしつつ、授業展開や児童の実態に合わせて柔軟に授業や板書を工夫していきましょう。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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<執筆者プロフィール>
小林靖隆●こばやし・やすたか 東京学芸大学附属小金井小学校教諭。理科の実践研究を中心に行う。平成29年度東京都教育委員会 教職員表彰 立志賞受賞。武蔵野大学しあわせ研究所客員研究員。理科おもしろゼミ研究会庶務。共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書出版)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版社)など。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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