小6 国語科「熟語の成り立ち」全時間の板書&指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「熟語の成り立ち」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問例、予想される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:熟語の成り立ち(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/長野県駒ケ根市立中沢小学校・原 猛

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、これまでに学習してきた漢字二字の熟語に加えて、漢字三字や四字以上の熟語について、その構成を考えます。漢字三字以上の熟語は、その組み合わせ方によって、

①「一字語+二字語」という組み合わせから成る熟語
②「二字語+一字語」という組み合わせから成る熟語
③「一字語+一字語+一字語」という組み合わせから成る熟語

に分類できます。漢字四字以上の熟語も、基本的にはこれらの組み合わせ方の延長か、「二字+二字」、または「二字+三字」のように、二字熟語と三字熟語の組み合わせになっていることが多いです。

本単元では、熟語がこのような構成でできていることを知ることで、熟語を構造的に認識する力を身に付けるとともに、言葉の理解を促します。また熟語を構造的に認識することで、日常生活の中で熟語の意味を理解したり、効果的に使用したりする力を伸ばすことも期待できます。

2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

学習指導要領には、高学年の「知識及び技能」として、「語句と語句との関係、語句の構成や変化に ついて理解し、語彙を豊かにすること」と示されています。
「語句と語句との関係」とは類義語や対義語、上位語・下位語などのことで、「このような語句と語句との関係を理解することは、語感を高めたり、言葉の使い方に対する感覚を豊かにしたりすることにもつながる」とされています。
また、「語彙を豊かにする」とは、「自分の語彙を量と質の両面から充実させること」ともあります。つまり知っている熟語の数を増やすだけでなく、その熟語の構成や語同士の関係、成り立ち等を理解することで、熟語の意味や使い方に対する認識が深まり、話や文章の中で使いこなせる語句が増える、ということです。

本単元では、上記の「知識及び技能」を主体的に身に付けることができるように、いくつかの語を組み合わせて熟語をつくったり、身の回りにある熟語を取り上げ、それを構成する語句に分解したりする言語活動を設定しました。具体的には、児童は4年生「熟語の意味」の学習で、「熟語」という概念や、訓読みを手掛かりにすることで熟語の意味を考えられること、さらに

似た意味を持つ漢字の組み合わせ
② 反対の意味を持つ漢字の組み合わせ
上の漢字が、下の漢字を修飾する関係にある組み合わせ
④「~を」「~に」に当たる意味の漢字が下に来る組み合わせ

という二字熟語の構成について学習しています。そこで、この既習事項を基にした「合体熟語クイズ」「分解熟語クイズ」を、言語活動として考えました。

「合体熟語クイズ」は、「高」「学年」、「運動」「会」、「衣」「食」「住」など、三字熟語を分解した語をカードに書いておき、それらを組み合わせて三字熟語を完成させます。そして完成した熟語を二字熟語の構成を手掛かりに分類します。

「分解熟語クイズ」は、三字熟語や四字以上の熟語の構成を学習した後に行います。
身の回りや教科書などから四字以上の熟語を選び、「交通安全教室」→「交通」「安全」「教室」、「児童会活動」→「児童」「会」「活動」のように、語の区切り方を答えるクイズをつくって出題します。

これらの言語活動を通じて熟語を語構成の視点から理解できるよう促すことで、熟語の意味や使い方に対する認識を深め、話や文章の中で使いこなせる語句が増えていくことを目指しています。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 クイズを楽しみながら熟語の成り立ちへの関心を高める

主体的な学びを生み出すために、本単元では「クイズを通して熟語の成り立ちを考えること」「既習の学習内容を振り返ること」を意識します。
児童はこれまで生活の中で数多くの熟語に触れてきています。しかし、それらの構成を意識することはあまりなかったのではないでしょうか。そこで「合体熟語クイズ」では、学校生活や教科学習で使われている熟語をできるだけ取り上げるようにします。
例えば「運動会」「円周率」など、馴染みのある熟語が、その成り立ちによって3パターンに分類できると分かることで、身の回りの熟語に対して関心をもち、様々な熟語の分類を進んで考えようとする姿が期待できます。

「合体熟語クイズ」で完成させた熟語を分類する場面では、最初に確認した二字熟語の分類パターンを手掛かりに考えるよう促します。それによって、「似た種類の漢字が組み合わさっている」ことや、「何字と何字に分かれる」というポイントに気付きやすくなるでしょう。

〈対話的な学び〉 熟語の構成を協働して考えたり、クイズを出し合ったりする

本単元では対話的な学びの場面として、1時間目の「合体熟語クイズ」で三字熟語をつくったり、完成した熟語を分類したりする活動に協働して取り組みます。
協働して取り組むことで自分一人では気付けなかった組み合わせに気付けたり、様々な視点から分類パターンを考えたりすることが期待できます。
また2時間目の「分解熟語クイズ」では、自分が考えたクイズを友だちと出し合います。自分が考えたクイズを友だちに解いてもらうことは、活動に対する意欲の高まりが期待できますし、対話的な学びによって、より多くの熟語に触れながら熟語の構成を理解していくことも期待できます。

〈深い学び〉 熟語を語構成の視点から捉えることで、熟語の意味への理解を深める

学習指導要領では「深い学び」の視点として、「各教科の特質に応じた物事を捉える視点や考え方で ある「見方・考え方」を、習得・活用・探求という学びの過程で働かせることを通じて、より質の高い深い学びにつなげることが重要である」と書かれています。本単元でいえば、熟語を語構成の視点から捉えることが「見方・考え方」の一端であると考えます。
2時間目の「分解熟語クイズ」では、これまで何気なく使っていた熟語を、例えば「二等辺三角形」を「二(つの)」「等辺(辺が等しい)」「三角(角が3つの)」「形」のように、その成り立ちから捉えようとすることで、熟語の意味をより深く理解できることを目指しています。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)カードに書かれた語を組み合わせて三字熟語をつくる「合体熟語クイズ」を行う

熟語を分解した語を組み合わせて三字熟語をつくる際に、ホワイトボードアプリ等でワークシートを作成しておけば端末上で容易に操作できますし、ワークシートをグループで共有すれば、複数の児童が同時に複数の付箋を操作したり、完成した熟語を協働して分類したりすることもできます。
また、グループの考えを全体で共有することも容易です。分類する際には、熟語を線で囲んだり気付いたことを書き込んだりしながら、三字熟語の分類パターンを考えていくとよいでしょう。

(2)身の回りから四字以上の熟語をさがし「分解熟語クイズ」を考えて出題する

身の回りや教科書などから四字以上の熟語を探して語の構成をクイズにする際には、ホワイトボードアプリやワープロアプリを用いることで児童同士の共有が容易になります。
例えば、自分が考えた問題を友達に提示して画面上に答えを書き込んでもらったり、画像投影装置を使って一人の児童が考えた問題を全体で一斉に共有したりすることもできます。さらに一人で問題を考えることが困難な場合は、クイズ作成用のワークシートをグループで共有し、協働してクイズを考えることもできます。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名:~熟語博士になろう~ 合体熟語クイズ・分解熟語クイズをつくろう

【主な学習活動】
1時2時
① 4年生で学習した二字熟語の構成を振り返る
②「合体熟語クイズ」で三字熟語をつくり、できた熟語の構成を考えて分類する〈 端末活用(1)
③ 漢字二字・三字の熟語の成り立ちを基に、四字以上の熟語の構成を考える
④ 身の回りから四字以上の熟語をさがし、「分解熟語クイズ」をつくる〈 端末活用(2)

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

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