100均ショッピングから学べる大切なこと【あたらしい学校を創造する #42】

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。
今回も、前回に引き続き「自由」の時間の活動についてお話しいただきました。100円均一での買い物から、どんな学びが生まれるのでしょうか。

目次
みんなの役に立つものを一つだけ
今回も4月の授業で行った「自由」の話です。金曜日以外は1時間の枠ですが、実際には1時間半くらい行うこともありました。時間に縛られないことも、ヒロックの強みだと思います。
さて、ヒロックから徒歩で10分くらいのところに100円均一ショップがあります。そこで、「クラスのみんなに役に立つものを一人1個ずつ買いに行こう」という企画を行いました。
この学びでは、交通ルールを守りながら並んで歩く練習とともに、自分たちで教室環境をつくるということがねらいでした。

それぞれ使える金額は110円。店内では「自分はこれが欲しい」という欲望と「それが果たしてみんなのためになるか」という葛藤が繰り広げられている様子も見られました。
例えば、ある子は手品の商品を手にして逡巡していました。ナイフの形をしているのですが、刺すとナイフが引っ込むという商品です。見ていると、10分くらい握り締めていたでしょうか。結局「それを買ってもみんなの役には立たないだろう」という判断が勝り、手を放していました。

ショップから帰って報告会をすると、子供たちは収納グッズ、掃除道具、双眼鏡などを買ってきていました。僕はそれぞれに対して「これ、何のために使うの?」と聞くだけで、評価は一切しません。子供たちには「評価はこの場が決める。みんながその品物を使ってくれたら、それはよい選択をしたということになるし、みんなが大して使わないのであれば、それは失敗として受け止めたらいい」と話しました。大人が要らないと思ったものが意外と役に立つ、ということもあるかもしれません。