「ヤングケアラー」とは?【知っておきたい教育用語】

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社会の認知度と問題意識が高まっている「ヤングケアラー」。子どもの将来に大きく影響する可能性がある問題だけに、その問題の本質や政府の対策などについて押さえておくことが大事です。

執筆/文京学院大学外国語学部教授・小泉博明

「誰も知らない」

法律上の定義はありませんが、「ヤングケアラー」とは一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされています(文部科学省ホームページより)。学校だけではなく、社会全体でヤングケアラーに対する必要な支援が求められています。

テレビCM「誰も知らない」(2021年、ACジャパン・NHK共同キャンペーン)で、「世話をしている家族がいる ”ヤングケアラー” 中学生の約17人に1人」が放映されました。その解説には「誰にも相談できず、勉強に満足な時間もとれず、子どもらしいこともできず、進学や就職をあきらめなければならない不条理な現実」とあります。この放映で、ヤングケアラーへの認知度が向上しましたが、この問題をどのように解決するかが問われています。

子どもが子どもでいられる街に

子どもが家事や家族の世話をすることはごく普通のことであり、このことが問題にされているのではありません。ヤングケアラーは、子どもの年齢等に見合わない重い責任や負担を負うことで、本来ならば享受できるはずの、勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、友人との他愛ない時間など、まさに「子どもとしての時間」と引き換えに、家事や家族の世話をしているのです。

具体的には、食事の準備や掃除や洗濯といった家事、見守り、きょうだいの世話、感情面のサポートなどです。そして遅刻、早退、欠席が増え、勉強の時間が取れないなど学業への影響や、友人とのコミュニケーションを取る時間が少ないなど友人関係への影響があります。やがて睡眠が充分に取れない、ストレスを感じるなど心身が不調となることもあります。

ヤングケアラーが「自分一人じゃない」「誰かに頼ってもいいんだ」と思うようになり、「子どもが子どもでいられる街」にしなければなりません(厚生労働省ホームページより)。

文部科学省・厚生労働省連携のサポート体制

文部科学省・厚生労働省の副大臣を共同議長とする「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告」(令和3年5月17日)では、今後取り組むべき施策として、「悩み相談支援(SNS等オンライン相談も有効)」「関係機関連携支援」「教育現場への支援」「適切な福祉サービス等の運用の検討」「幼いきょうだいをケアするヤングケアラー支援」を挙げています。特に「教育現場への支援」では、スクールソーシャルワーカー等の配置支援や、民間を活用した学習支援事業と学校との情報交換や連携の促進が取り上げられています。

「適切な福祉サービス等の運用の検討」では、家族介護において、子どもを「介護力」とすることなく、居宅サービス等の利用について配慮するなどヤングケアラーがケアする場合、その家族に対するアセスメントの留意点等について地方自治体等への周知が求められます。

今後は、2023年に発足予定の「こども家庭庁」を司令塔にして、省庁横断型で問題の解決を図ることになります。

ケアの倫理

ケア(care)とは広い意味では、世話や配慮、気配りですが、狭い意味では看護や介護のことをいいます。ヤングケアラーについて考えるには、そもそもケアとは何か、あるいは「ケアの倫理」についても視野に入れて、議論する必要があるでしょう。

▼参考資料
公益財団法人ACジャパン(ウェブサイト)「誰も知らない(ACジャパン・NHK共同キャンペーン)」
文部科学省(ウェブサイト)「ヤングケアラーについて」
厚生労働省(ウェブサイト)「子どもが子どもでいられる街に。」
厚生労働省(ウェブサイト)「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告」

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