「教育DX」とは?【知っておきたい教育用語】
デジタル技術の活用によって教育を変革する「教育DX」。国の取り組みや、DX推進によってめざす姿はどのようなものなのでしょうか。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
デジタル技術の活用による教育変革
DXは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語。デジタル技術の活用によって、社会や生活、ビジネスモデルなどをよりよいものに変革することを意味します。
経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義。近年、企業や行政など、さまざまな組織においてDX化が積極的に進められています。
教育DXは、それらと同様に、教育現場においてもデータやデジタル技術の活用によって、学校教育の在り方や教育手法の変革を行うこと。文部科学省のGIGAスクール構想も、そのための施策の一つです。
「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」の実現
デジタル庁は、2021年9月に「GIGAスクール構想に関するアンケートの取りまとめ」を公表し、2022年1月には、総務省、文部科学省、経済産業省とともに「教育データ利活用ロードマップ」を策定しました。
ロードマップでは、教育のデジタル化のミッションを「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」と掲げており、これが、国が教育DXによってめざす姿と捉えることができます。
それぞれのキーワードについては、以下のような内容が示されています。
●誰もが、どこからでも……不登校や病気療養などで学校に通えない児童生徒も、オンラインでつながって学べる
●いつでも……前に戻れる・先に行ける、どこからでもどこまでも学べる
●誰とでも……外部の専門家とつながる、同じ目標の仲間と学べる
●自分らしく……特性に合わせて自分らしい学び方を選べる、興味関心を伸ばしてどんどん学べる、ワクワクを見つけられる
また、ミッションで掲げる社会の実現に向け、デジタル化のビジョンとして、データの①スコープ(範囲)、②品質、③組み合わせ、の拡大・充実により、教育の質を向上させることを示しています。
文部科学省に学校DX推進本部を設置
文部科学省は、2020年12月に「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を取りまとめ、ポストコロナ時代のニューノーマルに対応するためのDXと、それに係る取組の必要性を示しています。
また、ソフトとハードの両面から各分野におけるデジタル化に向けた取組を加速させ、中長期的視野から世界との競争力の源泉となる新たな成長基盤の構築を推進していく必要があると強調し、教育におけるデジタル化の推進、デジタル社会の早期実現に向けた研究開発、「新たな日常」における文化芸術・スポーツ・行政各分野のDX化、さらに、DX人材の育成と確保が重要だとしています。
2022年2月25日には、中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」において2021年11月に取りまとめられた審議まとめを踏まえ、個別最適な教師の学びなどの「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて、末松信介文部科学大臣の下に「学校DX推進本部」を設置しました。
学校DX推進本部は、以下の2点を具体化する抜本的方策を、主な検討事項としています。
●デジタル技術の活用をはじめとした教員研修の更なる高度化や教師のICT活用指導力の向上
●校務の情報化をはじめとする学校における働き方改革
2022年3月4日には、第1回学校DX推進本部を開催。末松信介文部科学大臣は、その開催にあたって、教師を取り巻く現状は依然として厳しい状況と受け止めているとしたうえで、文部科学省として実効ある取り組みを進めていく考えを示しています。
▼参考資料
日経パソコン編『日経BPムック よく分かる教育DX』(日経BP)
経済産業省(ウェブサイト)「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」
デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省(ウェブサイト)「教育データ利活用ロードマップ」
文部科学省(ウェブサイト)「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」
文部科学省(ウェブサイト)「第1回学校DX推進本部を開催」