『突っ張り棒』&『SPF材』でデッドスペースを有効活用【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #5】
学校にわくわくしながらも同時に不安を抱える1年生が、安心して学べる「教室環境づくり」について提案する連載(月1回公開)です。『教室ギア55』(東洋館出版社)や『日常アレンジ大全』(明治図書出版) などの著書をもつ、教室環境づくりのプロフェッショナル〈鈴木優太先生〉が、さまざまなアイデアを紹介していきます。
第5回は、『突っ張り棒』&『SPF材』を使って、デッドスペースを有効活用する方法です。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)など、著書多数。
目次
ロッカーのデッドスペースを有効活用するワザ2選
教室の見える場所に物が溢れかえってしまってはいませんか?
しかし、よく見てみてください。ロッカー内には、まだ活用しきれていないデッドスペースが意外と多いものです。
ロッカー類の「棚」を増やすことで、教室の収納力が各段にアップします。ロッカー内のデッドスペースを「ユースフルスペース」に変える心強い味方が『突っ張り棒』と『SPF材』です。
『突っ張り棒』2本で、簡単に「棚」を作成
『突っ張り棒』は、万能収納アイテムです。100円ショップで簡単に手に入り、壁に穴を開けずにどこにでも手軽に取り付けられるのが強みです。
備え付けのロッカー内で『突っ張り棒』2本を平行に突っ張ります。すると、物を置いたり掛けたりできる「棚」になり、収納力が格段にアップします。
例えば、ストロー、ビニール袋、消毒用スプレーを置くための「棚」を『突っ張り棒』で写真のように設置します。バケツも置けて、一つのロッカー内に給食時に使う全ての道具が収まりました。そして、子供たちの手で出し入れするのも簡単です。掃除ロッカーなどにも応用できます。
例えば、鍵盤ハーモニカや絵の具セットを置くための「棚」を『突っ張り棒』で写真のように設置します。2段でも3段でも重ねることができます。教材室などにも応用できます。
『突っ張り棒』は、「バネ式」と「ジャッキ式」の2種類があります。教室では手軽に使える『バネ式』がおすすめです。正しい取り付け方は次の通りです。
①突っ張る面よりも数センチ長く伸ばす。
②バネを圧縮しながら取り付ける。
誤った取り付け方をして『突っ張り棒』の十分な力を発揮できていないことも多いようです。適切な「長さ」、用途にあった「耐荷重」の物を、「正しく取り付ける」ことで落下の心配なく、安全に使うことができます。
『突っ張り棒』の活用法だけを1冊にまとめた本が発売されているほどです。ネットで検索してもたくさんの実用的アイデアが手に入ります。これらを学校生活の中で生かさない手はありません。
『SPF材』で、ロッカー内の棚板を増設
『SPF材』(針葉樹材)は、値段がお手頃でDIYに最適な木材です。Spruce(えぞ松)とPine(松)とFir(もみ)の頭文字をとってSPF材と呼ばれています。DIYショップに積まれているあの大きな板です。
DIY ショップの中には、購入した木材を無料or数十円で裁断してくれるサービスがあります。「事前に採寸」さえしてあれば、お店の方が機械で裁断してくれて、オーダーメイド品があっという間に完成します。棚板の実物をDIYショップに持ち込み、「同じ大きさにしてください」と言うのも手っ取り早い方法です。
『SPF材』で、棚板を移動できるタイプのロッカーの「棚」を増やしましょう。
木製のロッカーは写真のようになります。
棚板を支える「ダボ」は、「六角ボルト」で代用できます。
鉄製のロッカーは写真のようになります。
棚板を支える「棚受け」は、「V型」や「L型」などの金具があります。金具の実物をDIYショップに持ち込み、似た物(同じような形であれば互換性は高い)を手に入れましょう。ちなみに私は、ネット通販で手に入れました。
子供たちが使いやすいロッカーにすると、教室環境が格段にアップ
これらのロッカーは、棚が少ないこともあって、普段は使わない先生の物をしまいがちです。先生の物しか入っていない、開かずのロッカーになってしまっているのはもったいないことです!
棚が多く、細かな物も置けるロッカーだと、子供たちが開けて使うにも便利です。コピーしたノート、色紙や画用紙などの紙類、貸し出し用文房具類、カードゲーム類など、子供たちが手に取りやすいようにロッカーに収納することで、見える場所の物が大幅に減り、教室がすっきりとした学びやすい空間に変わります。ロッカーの一つを「子供用(学習用)」にできると、望ましいです。
教科書類、教材類、単元テスト類などを収納する先生用ロッカーも、棚が増えることで格段に使い勝手が良くなります。
教室のデフォルトの仕様は同じ自治体でも様々なのですが、棚板を移動できるタイプのロッカーの規格は全国で統一されているものがほとんどです。そのため、『SPF材』で自作した棚板を、異動した学校でも使える確率はとても高いです。前述した可変する「バネ式」の『突っ張り棒』を4~5本突っ張って「棚」とするのもアリです。
教室の備え付けのロッカーや、棚板を移動できるロッカーの「棚」の数を増やすことで、教室の収納力は各段にアップします。ロッカー内のデッドスペースを「ユースフルスペース」に変えるひと工夫で、教室の子供たちの「学びのスペース」が大きく広がるのです。試してみませんか?
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)