理科学習で子どもを惹きつけるポイント【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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【理科の壺】
理科学習で子どもを惹きつけるポイント

理科の学習で「子どもたちを惹きつける」方法は様々あります。授業の中では、先生の教材の提示の仕方や話し方、子どもの発言の引き出し方などがありますし、そもそも教材の事象自体が面白く、惹きつけることもあります。理科授業の初心者にとっては、「授業がうまくいくようにすること」で精いっぱいかもしれませんが、経験を重ねていくと子どもたちを惹きつける方法の引き出しが増えてきます。今回は教員経験が少しレベルアップした時の惹きつける方法をご紹介します。子どもたちが惹きつけられれば主体的な学びにつながりますね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/大阪教育大学附属平野小学校教諭・坂口隆太郎
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

理科が好きな子どもはたくさんいます。しかし、反対に生き物が嫌いだったり難しいと毛嫌いしたり、もう知っているからなど前向きにとらえることができない子どもも中にはいます。そんな子どもたちにも理科って楽しい!と思ってもらえるようにするには、子どもの立場に立った単元の組み替えや教材を工夫して子どもたちを惹きつけることが大切です。

①子どもを惹きつける“単元をつなげた授業”

理科の学習は、集気びんの中でろうそくの火が消える様子を観察するなど、自然現象の観察や比較実験などから導入することが多いです。そのような導入で子どもたちが意欲をもって学習が進むことは、とても素晴らしいことです。一方で、例えば5年生の「天気の変化」の学習で「空を観察しよう」と先生が言い出して導入を始めても、子どもによっては意欲をもてないこともあります。ここでは一例として、「他の単元とのつながりを意識した“惹きつける授業”」について考えてみましょう。

「天気の変化」の単元の場合、水の量によって浸食、運搬、堆積の働きが違うことを学ぶ「流れる水の働き」の単元を先に行い、この学習とつないで「天気の変化」の学習展開を組むことができます。

具体的には、まず「流れる水の働き」の単元の導入として、自分の住んでいる地域の洪水ハザードマップを用意し(県や市区町村の役所WEBサイトにあることが多い)、学校や子どもたちが立ち寄れそうな場所が、少しでも範囲に入っていたら、子どもたちに「洪水が起こった時に助かるにはどうしたらいいのだろうか」という問題意識をもたせることができます。

次に、洪水がどのような場所や条件で起きるのかを、土山の実験などで教科書通りに行っていくと、そこから大雨(局地的大雨や集中豪雨)や台風が、流れる水の働きをさらに強くすること(台風や台風に伴う洪水等が起こること)がわかってきます。

するとここで、「天気の変化」の単元の学習内容である天気を予想する必要性が生まれます。つまり、「流れる水の働き」の学習から、子どもたちは「洪水から助かるために」という問題意識をもって「天気の変化」でも学習し続けることができるのです。

このように、単元の組み替えや場合によっては他教科と組み合わせることで、子どもたちを惹きつけ続けることができます

単元「流れる水の働き」と単元「天気の変化」の関係①
単元「流れる水の働き」と単元「天気の変化」の関係②
問題意識をもっ天気の変化を予測する子どもたち

②子どもを惹きつける“ちょっと難しい実験”

単元の導入や、活用場面で子どもたちにとって、できそうでできない、けどやってみたい(わかりたい)といった、熱中して活動ができるようなちょっと難しい実験をすることで、子どもの興味をグッと惹きつけることができます。

例えば、6年生「燃焼の仕組み」の活用場面で(災害時を想定し)、上底をとったアルミ缶(350mL)の中で火を起こし続け、その上にもうひとつアルミ缶を用意して、お湯を沸かすことができるか、といった問題を設定します。(安全上の注意は忘れずに)グループで実験を始めると、うまくいかないことに子どもたちは驚き、熱中して話し合ったり、試したりして活動していきます。この実験で子どもたちは、『燃え続けるためには空気の入れ替えが必要』と単元で学んだことを活かして、缶の側面下に穴を開ける工夫をします。さらに、『ものが燃える時間』や『炎と温めるものの距離』など、炎をエネルギー的な見方で捉える必要があるので、そのポイントに子どもたちが気づけるように、うまくいったグループのコツをクラス全体で共有したり、互いに動画を撮って見あえるようにしたりして、支援することで、少しずつ子どもたちもお湯を沸かせるようになっていき、ますます燃焼という自然現象にのめり込んでいきます。

「燃焼の仕組み」の実験結果への疑問
「燃焼の仕組み」の実験結果をふまえた予測
予測した「燃焼の仕組み」の実験結果に喜ぶ

また、5年生『電流がつくる磁力』の導入では、一般的には、コイルに電池をつないでゼムクリップがたくさん付く、付かないという電磁石の現象から行うことが多いです。ここでは、電磁石の他にスピーカーを用意した授業をご紹介します。スピーカーで音楽を流し、直に触ってみると震えているのがよくわかります。さらに、分解してみると中に、磁石とコイルがあることに気づき、コイルと鉄で電磁石ができ、コイルと磁石を使ってスピーカーになることがわかり、子どもたちは電流を流したコイルから電気の力が出ているのか、または磁石の力が出ているのだろうかと問題意識をもち、自らこれまで学んできたことを使って調べようとする意欲が高まっていきます。

このように、子どもたちにとって、できそうでできない実験を単元に組み入れることで、子どもたちを理科の学習に惹きつけ、より深く理解することができます

理科に前向きにとらえられない子どもでも、少しの工夫で理科の学習を「自分事」としてとらえ、惹きつけられて楽しめるようになると思います。もちろんこのような学習は先生自身も本当に楽しいのでぜひ味わってください。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

<執筆者プロフィール>
坂口隆太郎●さかぐち・りゅうたろう 大阪教育大学附属平野小学校教諭。SSTA大阪支部事務局長本校独自の未来そうぞう科と理科の関連を研究している。主な著書に『「資質・能力」を育成する理科授業モデル』(学事出版)、「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「小学校アクティブラーニングの授業のすべて」(東洋館出版社)、『「想像」∞「創造」が育む未来を「そうぞう」する子ども』(明治図書出版)など。

寺本貴啓先生

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

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