デジタル教科書は「使い方が鍵」!【わかる!教育ニュース#5】
先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第5回目のテーマは「デジタル教科書」です。
目次
デジタル教科書を使うことで、半数以上の児童が「勉強が楽しい」
子どもが楽しんで勉強するようになった。先生も教えやすい。そんな教科書なら、誰もが使いたいでしょう。ただ、教科書は「使い方が鍵」だと思わせる調査結果が、デジタル教科書について考える中央教育審議会分科会のワーキンググループの会合で報告されました(参照データ)。
文部科学省が2021年、小学校の中高学年3万177人に行った調査で、デジタル教科書を使うようになって、勉強が楽しいと感じるようになったかを問うと、「あてはまる」「少しあてはまる」という子が、どの教科でも半数を超えました。最も多いのは理科の79.7%、次いで社会77.9%、英語77.1%です。
紙とデジタルを比べて使いやすい点を尋ねると「情報を集めやすい」(59.6%)、「図や写真が見やすい」(54.5%)、「いろいろな資料を見比べやすい」(46.6%)が上位。反対に紙がまさっている点は、当たり前ですが「書き込みやすい」(48.9%)が最も多く、次に「学んだことを残しやすい」(42.4%)が挙がりました。手で書き、覚え、考える学習が、根付いていたためでしょうか。
興味深いのは、両者の違いを感じなかった点。多かったのは「友だちの考えをとらえやすい」(42.4%)、「教科書の内容をとらえやすい」(39.8%)、「考えを友だちに説明しやすい」(36.6%)。自分の意見発信や他人の考えの理解には、あまり差が出ないようです。
2024年度から本格導入のデジタル教科書
導入への機運が高まったように見えるデジタル教科書ですが、教える側は慎重です。今回、小学校と中学校の教員計3万5637人に、週にどのくらいデジタル教科書を使うか尋ねたところ、54.4%が「使わない週もある」と答えました。文科省は「試行段階の学校が多い」と見ていますが、それだけでしょうか。
デジタル教科書で不便な点や困った点を問うと、フリーズやエラー対処、インターネット環境の整備の他、デジタル教科書を活用した教科指導や、紙との使い分けといった「使い方」が挙がりました。デジタルの特性を生かした授業づくりに悩んでいるようです。
デジタル教科書を巡っては、考えるべきことが山積みです。紙の教科書との関係。教科書検定や無償配布の対象外といった現行制度。教科や発行者によって大きな開きがある価格。端末画面を見続けることの健康への影響も課題の一つです。
調査ではデジタル教科書を使うのに適したことに、写真やイラスト、図表の細部や展開図などの確認といった、視覚に訴える場面を挙げた教員が目立ちました。
紙とデジタルそれぞれに強みがあります。文科省は2024年度にも本格導入する考えですが、深い学びや指導の向上に結び付けなければ、導入する意味が薄れます。デジタル教科書をどう使うかは、まだ手探り。まずは適した使い方がどういうものなのか、示すことが欠かせません。
参照データ
新学習指導要領が目指す方向性と教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(案)/文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20220422_mxt_kyokasyo02_000022170_02.pdf
道徳の授業をするうえでの課題は何?【わかる!教育ニュース#6】はこちらです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子