【夏休み明けのトラブル解決】ミニエクササイズでストレスとの付き合い方を知る
よいストレスは子供たちを成長させてくれますが、よくないストレスは、いじめや暴力行為などの引き金となってしまいます。夏休み中に生活リズムが崩れ、一度身に付いたルールや規範意識もリセットされてしまう9月には特に注意が必要です。ストレスとの上手な付き合い方や簡単なリラックス法を、ミニエクササイズを通して子供に紹介しましょう。
文・ガイダンスを学級づくりに活用する会代表 八巻寛治
目次
9月に多い自殺者!
ストレスの要因を知り、付き合い方を考える
9月は、学級としての目標や一度身に付けたルールや規範意識がリセットされてしまうこともあり、第二の出会いの時期とも言われています。学級内で起こる様々なトラブルは、解決が急がれる場合が多いですが、子供たちが成長するチャンスととらえることもできます。
子供が自らの力でトラブルを解決できれば、それは課題解決における「主体的で対話的な学び」にほかなりません。
現代社会においてストレスを抱え、自分ではどうすることもできず、悩んでいる子供が増えてきているのは周知のことです。
人間だれもが少なからずストレスを感じています。よいストレスなら緊張感をもち、目的を達成する等、大きく人間を成長させることでしょう。
一方、よくないストレスは、いじめや暴力行為を引き起こしたり、自分に自信がなくなって自暴自棄になってしまったりすることにもなりかねません。
かといって、生きていく中でストレッサー(ストレスを引き起こす要因)になる出来事を回避して生活するのは難しいことです。
2年生のこの時期には、ストレッサーを避けるよりも、そのストレスと向き合い、自分自身がどのようにストレスと付き合い、生活するのか、ストレスをマネジメントして「生きる力」を付けていくことが大切ではないかと思います。
【具体的な場面の例】
•友達とケンカをしてしまった時
•ついカッとなり、友達を傷つける言動をしてしまう場面
•自分自身のイライラの発散のために友達を傷つける言動をしてしまった時
•よくないと分かっていても、その場の感情を抑えることができず、後悔する場面
•友達がいじめられていても、何も言えず見ている時
□ストレスとは何かを知る。
□ストレスを感じた時、自分自身がどのようにコーピング(対処)するのか気付く(学ぶ)。
□その場、その時に自分の感情をうまくコントロールできる力を身に付ける(学ぶ・活用)。
ストレスを知る・リラックスのしかたを知る
9月は「ストレスとは何かを知る」ことと、「簡単なリラックス法を学ぶ」ことから始めます。
ストレスの定義や種類、ストレスを引き起こす原因などについて紹介しましょう。
「何かに挑戦する時に感じる軽い興奮」のような有効なストレスが存在することも伝え、「ストレスを無くすことではなく、ストレスとの上手な付き合い方を身に付けることが大切である」ということに気付かせましょう。
1.ストレッサー、ストレスの用語について理解し、自分のストレスの原因に気付く
◦日常生活の中でストレスと感じることがあることに気付く。
◦ストレスについて知ることで、毎日を楽しく健康に過ごせるようになることを知る。
→事前に子供たちに次のようなアンケートを行います。
【子供へのストレスアンケート例】
①いつ・どこで(どの時間に? どの場所で?)
②だれに
③なにを(〜といわれた。〜された)
④その時の気持ちは?
⑤その時どのようにした?
⑥自分のとった行動は?(◎・○・△)
【子供の反応例】
①夏休み中(8月20日)に・学校のプールで
②三年生のAさんに
③あいさつをしたけど無視をされた
④すごくいやな気持ちになった
⑤最初聞こえないからかなと思ってもう一度あいさつしたけどそのまま家に帰った
⑥本人に話をしていないので、△
→反応例をまとめ、紹介します。子供たちは、ストレスの原因はいろいろあることに気付くでしょう。
2.リラックス法(動作法)をすることで、落ち着いたり、気持ちが楽になったりすることを体感する
●10秒呼吸法
- お腹をへこませながら吸っている息を口からゆっくりと7秒間かけて吐き出す。
- 吐き出したらお腹を膨らませながら鼻から3秒間かけて吸う。
- いったん止めて、またゆっくりと吐き出す。
*呼吸法により心身がリラックスした状態になると、余裕をもって自己をコントロールできるようになる。課題に過剰反応しないで対処できるようになる(ストレス耐性の向上)。
●肩の上下セルフ・ペアリラクセーション
- 両肩を耳にくっつけるようにゆっくりと上げ、肩の力をストンと抜く。
- 同じように肩を上げ、今度はゆっくりと力を抜く。
- 自分の心地よかったほうを繰り返して行う。
◦ セルフ(個人)とペア(二人組)になって①~③を数回繰り返す。
◦ ペアリラクセーションは、やる人の後方に立って相手の腕に触れて優しく援助して行う。肩の弛みの心地よさが分かりやすい。
●漸進性弛緩法
〇 身体部位に力を入れる(緊張)、その状態を保持する、力を抜く(弛緩)を繰り返しながら、手首→足首→腰→胸→口→目の順に全身をリラックスさせる。
* 自律訓練法は心理的側面から、漸進性弛緩法は身体的側面から心身のリラックスをもたらす技法です。ともに心身交互作用により最終的に心身のリラックスを得るものですが、現実の身体の緊張と弛緩を手がかりにする漸進性弛緩法のほうが児童には取り組みやすいと言えるでしょう。
文/教育カウンセラー・八巻寛治
イラスト/たなかあさこ
『小二教育技術』2018年9月号より