ソサエティー5.0とは? 教育・学びはどう変わる?

タブレットを使う女の子

今や高度なネットワーク社会で、スマホやインターネットなしの生活は考えられなくなりました。しかし、近未来の世界では、仮想空間と現実世界がさらに融合し、新たな社会=ソサエティー5.0(Society5.0)の幕が開けると言われています。それはどんな社会で、「教育」「学び」はどうなっていくのでしょうか?

現在の情報化社会とソサエティー5.0の違いとは・・・?

ソサエティー5.0(Society5.0)とは、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、そして現代の情報社会(Society4.0)の次に訪れる新しい社会のことです。

* 平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画の中で提唱

ソサエティー4.0である現代社会では、通信技術の発達とデータ処理能力の向上によって新たな価値が生み出され、新たな仕事が作られ、社会には情報が溢れました。

しかし、ビッグデータと呼ばれるこれらの情報は社会全体の智恵としては共有されておらず、必要な情報だけを集めるのもひと苦労で、国や地域、性別や年齢など、様々な要因が情報の十分な活用にとって制約となる事実もあります。

また、これらの情報は特定の企業や一部の個人などに偏った富を生み出す源泉とされ、その情報をいかにお金儲けのために活用するかが、ソサエティ4.0におけるスキルだと考える人は少なくありません。

モノのインターネット=IoTが社会を新たなステージに

ソサエティー5.0では、モノのインターネット(Internet of Things=IoT)がさらに進みます。現実社会のありとあらゆるものがセンサーやチップによってインターネットとつながりますので、その情報量は現代よりもさらに飛躍的に増加し、人の能力では全く追いつかないものとなるはずです。

そして、それを的確に処理するため、人工知能(AI)の活用はさらに進みます。情報は人間が自ら集めて解釈するものから、人間にとってより理解しやすい情報としてAIが解釈・加工して提供されるものになるでしょう。

そこに、自動運転や機械による生産などといった高度な機械技術が融合し、現実社会における問題点をより効率よく解決しようとする手段が進歩します。また、公害や食糧問題、エネルギー不足などと言った環境的な問題についても、AIとビッグデータにより、適切な解釈と対処法が検討できるようになるはずです。

このように、情報が経済的な発展のための道具から、環境面や人の暮らしも含めた社会基盤を支える道具になる世界が、ソサエティ5.0なのです。

一人ひとりの能力や適性に応じて個別最適化された学びの実現

先端技術と社会との高度な融合は、教育の世界にも大きな変革をもたらすことになるでしょう。平成30年、文部科学省は 「Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会」で 学びのあり方の変革を提唱しました。

一斉一律授業の学校は、読解力など基盤的な学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場に。同一学年集団の学習は同一学年に加え、学習到達度や学習課題等に応じた異年齢・異学年集団での協働学習の拡大を。教室での学習は、大学や研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設等も活用した多様な学習プログラムが望まれる、としました。

また、EdTechを活用して個人の学習状況の「スタディ・ログ」を「学びのポートフォリオ」として電子化・蓄積することで、学習計画や学習コンテンツの提示、より精度を高めた学習を支援。

様々な活動状況(スポーツ、文化、特別活動、部 活動、ボランティア等を含む)や各教科・単元の特質等を踏まえた実践的な研究・開発、また異年齢・異学年集団での協働学習など、公正に個別最適化された学びを促進すべきとしました。


新時代に求められる「リテラシー」とは!?

高度に情報技術が進歩した時代では、そのテクノロジーに習熟することが大事なのでしょうか? いえ、そういう時代だからこそ、機械にできることは機械にまかせ、人間はより人間らしい力を身につけるべきではないでしょうか。

文科省も先の提言で、「文章や情報を正確に読み解き対話する力」「科学的に思考・吟味し活用する力」「価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力」が重要であると挙げています。

そうしたことを踏まえ、新たな社会を牽引する人材として求められているのは「技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材」、「技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材」、「様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材」なのです。

見直される学校の指導体制と教育免許制度の改善

文部科学省は指導体制の質・量両面にわたる充実・強化を図る観点から、免許制度の在り方を見直すことを提言しています。中学校や高等学校に比べて小学校教員採用試験の倍率が低迷していることや、中学校・高等学校も技術科・情報科のような特定教科の免許を持つ教員が少ない現状も踏まえてのことです。

具体的には複数の校種・教科の免許取得を弾力化する、経験年数や専門分野などに応じて特定教科の免許を弾力的に取得できるようにする等が挙げられています。

新たな学習の在り方とそれを実践できる指導者・教員の人材確保。新時代到来を見据えた学校の指導体制の確率が、ソサエティ5.0をよりよい社会にする鍵となるのではないでしょうか。

VRを操作する女の子

文/畑俊行

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