コロナ禍で自主研究会を中止した校長の決断と特別活動【楽しい学校をつくる特別活動~研究発表会のあり方①】
単行本『楽しい学校をつくる特別活動~すべての教師に伝えたいこと~』(小社刊)の発刊を記念して、執筆者の1人である尚絅大学平野修教授(前熊本市立帯山西小学校校長)に、特別活動や自主研究発表会のあり方等についてうかがいました(取材は2022年2月)。インタビューを2回に分けて紹介します。第1回目の今回は、校長の役割、自主研究発表会のあり方、中止に至った理由などを聞きました。
※本記事は、2回連載の第1回目です。

特別活動を愛する教師たちの全国組織である「特別活動希望の会」は、前文部科学省視学官であり、國學院大學杉田洋教授をリーダーとして特別活動を実践する教師たちの集まりです。その会を牽引する1人として、尽力する前熊本市立帯山西小学校・平野修校長は、今年4月、尚絅大学教授として活躍の場を変えられました。その移籍記念も兼ねて、校長の役割や公開研究会のあり方、特別活動の実践についてお聞きしました。また、校長として最後になる特別活動の自主研究発表会がコロナ禍の影響によって中止となりました。断腸の思いで中止された背景なども伺いました。
目次
校長の役割は目標を示すことに尽きる
――校長としての役割についてお聞きします。子供たちや教職員たちに、校長として何を伝えることが重要でしょうか。
平野 校長として大事な役割はたった1つだと思っています。それは、学校が進むべき目標を明確に示すただそれだけです。目標がしっかりと共有されれば、それぞれ先生方は、自分のよさややり方を生かしてそこに向かっていきます。校長は、その姿を「面白いね!」「いいね」と後押ししてやればいいのです。本校の場合「わくわくする学校を創る」が学校目標なので、何かをするときの物差しは「わくわく」するかどうかです。
先生たちには「自分がやりたいことをこの学校でやってください。わくわくできることなら、そのことに対して、制限はかけないから」と言っています。何か提案するときは、「先生自身がそれをやってわくわくするの? わくわくするならやったらいいし、わくわくしないのならやめたら」とも伝えています。また、昨年と同じような提案をしてきたら、「これに先生のわくわく感はどこにあるの? なかったら、自分がわくわくするものに作り替えたら?」と言っています。
校長の仕事というのは、最終的な姿を示すだけでよいと私は思っています。「うちの学校をどういう姿にしたいのか」ということをきちんと全部の先生がわかっていれば、それで学校は動くと思うのです。それがあいまいだと、何していいかわからないし、あっち向いたり、こっち向いたりしてやるでしょう。
目標がみんな同じでやっているならば、同じ方向に進んでいます。当校は本当に「わくわくする」だけで、先生たちはそこに向かっているし、子供もわかっています。先生たち全員、学校をどんな姿にしたいのかわかっています。そういうところが大事になります。
2学期に、子供たちに「2学期はわくわくしましたか」というアンケートをタブレットで取りました。結果、「わくわくしていた」という子供が90パーセント以上いました。子供たちが学校に対してわくわくを感じていることが一番だと、思っています。
――帯山西小では、特別活動の研究を以前からされていましたか。
平野 帯山西小は、特別活動の研究はまったくやっていませんでした。特別活動の指導については最初、学級会のやり方などミニ研修会などを行うことで方法などを学んでいきました。私がこの学校に赴任してきたときに、私が特別活動を実践してきた者だと知っている先生が多く、赴任してきた当初から「せっかく先生が来たのだから特別活動を勉強させてください」という前向きな声がたくさんありました。そこで、1年間はこれまでの研究を踏襲しながら子供の様子と職員の意識を見ながら2年目から特別活動を中心とした学校づくりに取り組みました。
子供の実態があり、職員たちが子供のこういうところを育てたいというものがあっての特別活動で、最初から特別活動ありきの研究のスタートではありませんでした。
――ICTについては、先生方にどのように研修されましたか。
平野 ICTに長けている先生がいましたので、2人で相談して、放課後の時間を活用して、自由参加という形で私が特別活動のミニ研修会を、その先生がICTのミニ研修会を行うことにしました。職員が自分たちで主体的に学んでいく場を作ってやることが大事なことだと感じています。その後、コロナ禍になり、より効果的に授業を作る上でI C Tの活用は、先生たちにとって切実な問題となって、一気にスキルが上がったように感じています。
また、コロナによる最初の一斉休校があった際に、職員からオンライン授業をやりたいという希望が出て、取り組みました。今でこそ、オンラインでの授業は当たり前になってきましたが、当時はとても画期的なことでした。そのときに、同時にユーチューブも作り、配信しました。このような危機的状況の中で、様々なアイデアを出し合い、新しい試みとして行ったことが、教師集団の力を大幅に上げることにつがなりました。
特活祭りとして自主研究発表会を計画
――自主研究会は、どのような形で実施されようとしていたのですか。
平野 そもそも自主研究発表会(以下、自主研)をしようというのは、教員の中から自然と上がってきたものでした。その理由としては、「この学校の子供たちの姿を、いろいろな先生方に見てほしい」「子供たちが自主的に生き生きと活動している姿を見てほしい」という願いのようなものでした。また、本校では様々なことにチャレンジしていて、その新しい取り組みも見てほしいという意図もありました。例えば、ICTを活用した代表委員会、全校児童が参加する児童総会のようなものなど新しい提案もできるのかなって思いもありました。そして、それらを公開することで様々な評価をいただき、次の実践に生かしていきたいという思いもありました。
2月5日は「特活祭り」と称して位置付けて、他の学校ではやらないようなことをやりたいということで、4本のプログラムを組みました。1本目が、20分間の「児童集会」です。ICTを使って、コロナ禍の状況下でも子供たちが双方向で集会ができるという姿ややり方を見てほしいということです。
2本目は、「わくわく子供会議」です。これは代表委員会から発生していますが、中学校の生徒総会と同じように、代表委員会をやりながら、1年生から6年生までをオンラインでつなぎ、ある場面になったら、学年や学級で話し合ってもらい、そこで意見をまとめたものを代表委員会のほうにあげ、練り上げていくという話合いのやり方です。
代表委員会とは純粋に言えないけれども、新しい形の全校児童参加での話合いというものを見ていただきたかったのです。
3本目が、当校がずっと取り組んできた学級活動(1)の授業です。ここでは、いわゆる学級会なのですが、議題へのこだわりや話合いの中でのICTの効果的な活用などについても提案ができたと思っています。
4本目が、縦割り班活動です。毎週1回、朝の20分の時間を使って行っている活動です。子供たちが自主的に自分たちで計画しながら、6年生が中心になってやっている活動を見てもらいたいと思いました。