一人一人の毎日をしっかり見取る! ベテラン教師6つの技

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宮城県公立小学校教諭

鈴木優太

クラスで一番困っている子、苦しんでいる子は、毎日違います。その日、クラスで一番頑張っている子も、毎日違います。毎日、一人一人を見取る努力をし、できるだけ理解してあげたいですよね。そのために大切な定時・定点観察のスキルと、その習慣化について、実践のアドバイスをいただきました。

撮影/大庭正美

アドバイスしてくださったのは・・・

鈴木優太先生

すずき・ゆうた。宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。縁太会を主宰する。『小1担任のための学級経営大事典』(明治図書)など共著書多数。

始業前に『家庭学習ラベル』を「観る」

始業前、提出された家庭学習に丸付けをしながら、朝の子どもたちの様子を教卓から「定点観測」します。毎日同じ時刻に、同じ作業をしながら、同じ子どもたちを「観る」からこそ感じられるものがあります。

登校時刻、声&表情&準備の所作、提出された家庭学習などを見ています。教卓に家庭学習を提出するシステムなので、教卓にいることで全員と始業前に声を交わすこともできます。

私は、家庭学習は「始業前」に全て返却するようにしています。 1 日の中で丸付けの時間を工面することにエネルギーを使う必要がなくなり、授業時間や休み時間の子どもたちを「観る」ことに、安定してエネルギーを注ぐことができるようになりました。

ここで『家庭学習ラベル』が重宝しています。

家庭学習ラベル
家庭学習ラベル

「ビニールテープ」を 4㎝に切って出席番号を書き、5人ずつ「色」を変えた物を、 家庭学習ノートやカードの背表紙上端に貼ります。

1 〜 5 … 
6 〜 10 … 
11 〜 15 … 
16 〜 20 … 
21 〜 25 … 

同じ「色」が 5人分揃ったものから返却します。5人分揃っていない「色」だけ番号を確認し、未提出者には朝のうちに「どうしたの?」 と個別にそっと声かけをしています。

『家庭学習ラベル』が貼ってあるものが家庭学習だと子どもたち自身にもはっきりと分かるため、提出忘れがなくなりました。そのためにも、子どもたちが自分で貼ることが大切です。

家庭学習ラベルを貼ったノートで、らくらくチェックできる
イラスト/ terumi

『健康観察リレー』で「観る」

朝の会では、簡単な持ち物検査も兼ねた『健康観察リレー』を行っています。

① 出席番号順や座席順に子どもたちがリレー形式で名前を呼び合います。
② 起立をして返事をする時に、ハテナセット(ハンカチ・ティッシュ・名札)を掲げ、自分の健康状態を言います。

日直「健康観察リレー。 Aさん」
A さん「(起立)はいっ!(ハンカチ&ティッシュを左右の手にそれぞれ持って掲げながら)元気ですっ! Bさんっ!」
B さん「(起立)はぃ…風邪です。名札を忘れてしまったので、明日持ってきます。Cさん」・・・

起立スピード、返事、ハテナセットを掲げる腕の伸び具合、呼名の声、目線、着席後の姿勢などが見どころです。

子ども同士で呼名し合うことで、朝一番の子どもたちの様子を、教師はじっくりと「観る」ことができます。ハテナセット以外の身支度にも目がいきます。

このように、毎朝友達に名前を呼ばれる・呼んであげるというのは、人間関係づくりの面でも効果的です。

デジカメで「撮る」=子どもを「観る」

デジカメを持つことで教師は、
① 教室を「自由」に動き回ります。
② 学びに向かう子どもたちの「すぐそば」 で撮影します。
③ 撮影した写真や動画を見て「振り返り」 ます。

子どもの微妙な変化や成長に気付くための重要な3つのポイントです。

ただし、教師「ばかり」が忙しい授業では、 ①〜③は困難です。子どもたちを撮影できるくらいの心と体の「ゆとり」が教師にある授業をプランニングします。「活動型」の授業を積極的に行うようになりました。

撮影した写真や動画も、教師「ばかり」が観るのではなく、大型テレビやスクリーンに映し出すことで、子どもたちと「いっしょ」に「観る」ことができます。ただちにです。

教師が成長を感じたことや、価値があると考えたことを、撮影したての写真や動画を示しながら、残らず伝えるようにしています。教師の変容を捉える目や伝え方が鍛えられます。継続することで、子どもの微妙な変化や成長に気が付く「感度」が少しずつ上がっていく実感があるはずです。

イラスト/ terumi

ABCパートナーの『ペアトーク』を「観る」

とは言え、教師「ばかり」が話しすぎてしまった……そんなことも、日々の中では多々あるわけです。

そうした時、そうでない時にも、『ペアトーク』を挟むようにしています。

Ⓐパートナー…隣  Ⓑパートナー…前後 Ⓒパートナー…斜め

イラスト/ terumi

「Aパートナーと、ここまでの話を30秒間で確認し合ってください」
「Bパートナーと、自分の言葉で説明し合ったら座ります」
「Cパートナーと、分からないことなぁい? と20秒間聞き合いましょう」

A・B・Cのパートナーを活用し、いつも隣の人と話すばかりにならないようにしています(3人組や臨機応変なペアで行うこともあります) 。

短いペアトークの間に子どもたちを「観る」のです。説明が理解できているかどうか、不安そうな子はいないかを観ます。

また、「トーク」 に聴き耳を立てることで、全体で共有したい感想や問いを拾うことができます。この後の授業展開を調える点でも、授業の中での『ペアトーク』は欠かせません。主体的・対話的で深い学びの土台をつくる活動だと考えています。

『何も置かない』と「何かある」を「観る」

教師用デスク
教師用のデスクの上には何も置かれていない

教師用机の上やロッカーの上には、『何も置かない』ようにしています。

見ようとしていなくても、「何か一つでもある」と瞬時に気が付きます。机やロッカーやフックなども含めた、持ち物や教室環境にも目が届きやすくなるのです。

何も置かないことに慣れると、机上の提出物やノート、連絡帳、付箋メモが気になって気になって、「一刻も早く片付けたい!」という気持ちになります。保護者からの連絡への対応もスピーディに行えます。生徒指導上のトラブルの早期発見・解決、未然防止にも貢献しています。結果として仕事の効率も上がりました。

「筆記用具や教科書、学習用具などは机やロッカーの中にしまい、使う時だけ出します」

これは私たちが一〜六年生の全ての子どもたちに求めていることです。教師も実践しましょう。

教室がとてもスッキリするだけでなく、『何も置かない』場所は、休み時間には「子どもたちの交流の場」になります。時に子どもたちの輪の中で、時に少し離れた所から見守りながら、子どもたちの多様な面を「観る」ように心がけています。

『音声メモ』で「記録」する

タブレットやスマートフォンの『音声メモ』 がとても便利です。

子どもたちが下校してからの放課後の5分間、その日見つけた子どもの素敵な変容や気になったことを、書くのではなく「話し」ます。

話したことが瞬時に「文字データ」に変換されます。データ化されたものは、お便りや通知表などにも、そのままコピー&ペーストすることができます(名前など個人が特定できる情報の入力は避ける注意が必要です)。

子どもたちを落ち着いて「観る」ことができたかどうか? これを、1日を振り返る視点にしています。


『教育技術 小一小二』2019年7/8月号より

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