やる気が出ない、ストレスも… ネガティブ感情の対処法とは?【後編】中野信子のDo you脳「人のココロ」?Vol.4

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中野信子

小学校の先生方が抱えがちな悩みや問題を、脳科学者・中野信子先生が脳科学の視点から分析。悩みの原因とその対処法を科学的に解き明かします。
今回は、 「やる気が出ない」「ストレスを感じる」…、そんなときにどんな対処法が効果的なのか、脳科学の視点から前編・後編に渡り対処法をアドバイスいただきました。

※前編記事はこちらからお読みいただけます

中野信子
撮影/長嶋正光

リラックス効果あり。セロトニンを増やす生活習慣

前編では、「やる気が出ない」「ストレスを感じる」など、ネガティブな気持ちになりがちな時季に有効な、脳が元気になる方法を紹介しました。

後半では、精神をリラックスさせるホルモンであるセロトニンを増やす生活習慣のアイディアと、心理的ストレスの対処法を紹介します。

セロトニンを増やすためには、セロトニンを生成するときに使われるトリプトファンという成分が含まれている食べ物を、頓服的にとるとよいでしょう。

トリプトファンは、マグロやナッツ類、豆乳などに多く含まれており、サンマやニンニクなど、ビタミンB6を多く含む食品と一緒にとるとさらに効果的です。またお風呂でお湯につかったり、自分の好きなことをするのもおすすめです。リラックスできることでセロトニンが増加します。

先生ではない自分を受け入れてもらえる場所をつくる

私が心理的ストレスの対処法として取り入れているのは、「本来の自分を出せる場所」をつくることです。仕事以外の場所で、先生ではない自分が受け入れられていると感じられる友人や場所をつくっておくとよいでしょう。つまり、オンとオフを切り替えるのです。先生の時に着ているものと、普段着るものを変えてみるだけでもよいと思います。

心の内を言語化して話すことで、心をケアする

ここまで紹介したことはあくまで脳に関する対処法です。

これらの対処法を試してみても効果がないときには、より大きな心理的ストレスを抱えているケースもあります。その場合は、丁寧に自分の心を見て、ケアする時間を取る必要があります。原因がわからない場合は、心の内を話せる相手をつくり、言語化していく作業をするのがよいと思います。カウンセラーに話をするのもよいでしょう。

「うまくいかない」と思った時こそ、新しい発見ができるチャンス

また、若い先生方にとっては、1年間をふり返りクラスのいろいろな問題が顕在化し、「こんなはずではなかった」と、気持ちが空回りしてしまうこともあるでしょう。30人もいれば、いろいろな子どもがいて当たり前で、理論上のことと現実のこととは全く違うという場面に直面する時だと思います。もし、「こんなはずではなかった」という気持ちがストレスの原因になっているのであれば、「若さ」という自分のアドバンテージを生かしていただきたいと思います。

「こんなはずだ」と教わってきたことが違っていたと気がついても、若い先生方には、これからたくさんの時間があるのです。現代の子供たちというものを、最も近い場所で見ながら、トライアルを重ね、この先新たに自分の理論をつくることができるのです。

がんばっても報われない場合は、努力の方向性が間違っているのかもしれません。客観的にどこが間違っているのかを分析してみましょう。「うまくいかないな」と思った時こそ、新しい発見ができる時。教わるだけの学生であった自分から、主体的に考える教育者としての自分に変わる良いチャンスだと考えましょう。

「うまくいかない」と思った時こそ、新しい発見ができるチャンス
イラスト/須長千夏

中野信子(なかの のぶこ)● 1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。現在、東日本国際大学教授。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。著書に『ヒトは「いじめ」をやめられない』『キレる!』『「嫌いっ!」の運用』(いずれも小学館)等がある。

取材・構成・文/出浦文絵

※この記事は2016年『小二教育技術』に連載された記事に加筆修正したものです。

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