【相談募集中】外部企業のサービスを学校に取り入れたい!どうすれば?
「外部企業のサービスを学校に提案するにはどうすれば?」という質問が「みん教相談室」に寄せられました。これに対し、神奈川県立総合教育センター主幹兼指導主事・鈴木夏來先生が回答した内容をこちらで紹介します。
私は公立小学校の新任教師をしています。 最近教科横断的な思考を育てるサービスを開発している人と知り合い、 すごく良さそうだったのでうちの学校にも取り入れられればと思っています。
年額1万円くらいするので、経費として申請したいと考えているものの、申請のやり方や提案する相手が分からず悩んでいる状態です。
こういった外部企業のサービスを提案する場合は、やはり学年主任や教頭などに、資料を持って行って提案する流れになるのでしょうか?
提案する際、どんなものがあればお話しを聞いていただきやすいかも、教えていただけると嬉しいです。
(ぷん先生・20代女性)
目次
「働き方改革」や「学校教育目標」具現化のための手段と捉えてチャレンジを! でも無理は禁物です
ぷん先生はじめまして。ご相談いただき、ありがとうございます。ぷん先生のやる気、熱意が溢れる、貴重なご相談だと感じました。私もお答えできる範囲で、真摯に回答したいと思います。
経費として申請するための準備
ぷん先生は「公立小学校の新任教師」。市町村立小学校の教員ですね。経費ということは、主として市町村民から集めた税金で支払うことになり、納税者たる市町村民から学校に対して質問があったり、市町村議会の予算委員会等で議員さんから質問があったりした場合、納得できる説明を誰かがしなければなりません。
なので、
- 年額1万円で、実際にどれほどの効果が期待できるのか? 数字で示してほしい。
- 評価(指導要録への記載)はどうやって行うのか?
- 他の自治体(教育委員会)や、近隣の学校での導入実績はどれくらいか?
- 同様の競合する商品は? そのライバル商品と比べ、優れているのはどんな点か?
ということを、説明できるようになる必要があります。
「すでに近隣の○市と○町の全小学校、計〇〇〇校に導入済」
「通知表や指導要録との連携が容易」
「既存の〇○と比べ、優れている点は~」
「導入した学校の残業時間が〇%減」
などといった情報が含まれた基礎資料を、その会社に準備してもらい、ぷん先生は、その基礎資料をもとに、説明できると良いです。
申請のやり方について
ここでは多くを述べませんが、申請手続きの事務作業を行うのは、ぷん先生ではなく、主として学校事務職員や教頭(副校長)になります。 申請を認可するかどうか、決めるのは〇〇長。学校予算であれば学校長(「校長決裁」といいます)が、 〇〇教育委員会予算であれば教育委員会の○○課長や〇〇部長、あるいは教育長(〇〇長決裁といいます)が認可します。
この人たちが、納税者からの質問や批判にも耐えうるように書類を整えたり、本当に必要なのかどうかを検討したりします。なので、そうしやすいように準備する必要があるのです。興味があれば、学校事務職員や管理職に聞いてみたり、教育委員会のホームページ等からご自身で調べてみたりしてくださいね。
提案相手について
学年主任に提案
当該学年で使用したいのであれば、学年主任に提案するのがセオリーです。その学年主任が「〇学年の総意」として、学校事務職員に提案することになるからです。ただし、そこで渋い表情をされてしまったら、その年は諦めるのが得策。
学年主任は、初任者や若手がさまざまな教材教具に興味を示し、買ってみたい、試してみたいと思うことを経験上、知っています。ですから、渋い表情をするのには相応の理由があるのです。
例えば「テストを作るのがたいへんなので、○社のテストを買いたい」 という提案に対し、「丸付けや評価が大変。買った以上は全部やらせないといけない」 というような声が、職場で過去に多く上がっていたこともあったなど。
ここで留意してほしいのが「横断的サービス」を用いて、時間を生み出すことができるのならば学年主任は前向きになるでしょうが、時間を奪われるサービスであれば、導入は難しいと判断される場合もあるという点です。
では、学年主任以外で提案する相手としては、以下も考えられます。
研究グループに提案
学校教育目標を具現化するための手立てとして、校内研究があります。「横断的サービス」について、校内研究の主任に提案してみましょう。いきなり主任ではなく、研究チームのメンバ-でも良いでしょう。
- 学校研究テーマと絡めて「横断的サービス」を活用したい
- 学校研究テーマの立証、延いては学校教育目標の具現化にも繋がると考える
- そのための研究費用として、1万円を計上いただくことを検討してほしい
- サービスを用いた研究授業は、もちろん自分自身が率先して行う
- 45分1コマの指導案ではなく、単元を見通した指導と評価の計画を作成するつもりだ
- 研究報告については、自分がレポートをまとめる
これらを述べると、話は通りやすくなると思います。校内研究の研究授業は学校全体と謳いつつも、研究チームのクラスや特定のクラスで先行実施される傾向があります。そこに「横断的サービス」を提案するのも方法のひとつです。
教育研究会に提案
「小教研」「市教研」といった名称で市町村の教員が集まる教育研究会があります。ぷん先生も国語や算数といった教科部会や、食育部会や図書館部会といった教科外の研究チームに所属しているかと思います。
その部会で提案するのはいかがでしょうか。部会ごとに予算が付いていますから、部会の賛同が得られれば経費となります。
初任研担当教員に提案
初任者研修の校内研究として、ぷん先生は研究授業を何度か行うかと思います。その際に、「横断的サービス」が必要だと提案してみるのもいいかもしれません。留意したいのは、「横断的サービス」が目的化しないこと。学校の教育目標の具現化、校内研究のさらなる充実のための手段であることを念頭に。
初任者研修は、文字通り初任者だけが行う研修なので、学年の総意や賛同がなくても提案できるかと思います。
教務主任に提案
「横断的サービス」が時数や評価に関わるのであれば、学校カリキュラム(教育課程、時間割)を担当する教員に提案しましょう。多くの場合、教務主任や教育課程委員長がそれを行います。
「横断的サービス」を導入することで、文字通り教科等横断的に資質を向上させるようなカリキュラムを組むことができ、教員一人ひとりの授業の持ち時間が減ったり、評価や要録作成にかかる時間が削減できたりするのであれば、結果は明るいでしょう。
提案を聞いてもらうための心構えとは
上述した説明資料を用意することとは別に、「どんな人であれば話を聞いてもらいやすいか」という視点で考えてみましょう。
▲話を聞いてもらいにくい人
・学級経営は上手だが、自分のクラスさえ良ければいいと思っている人
・授業は上手だが、自分のクラスの学力だけ向上すればいいと思っている人
自分のクラスだけ良ければいいと考える傾向にある方は、クラスのことで頭がいっぱい、クラス目標は子どもたちと一緒に熱心に作る一方で、学校教育目標や学校研究テーマは知らなかったり、「そもそも興味がない」などと言って疎かにしたりすることがあります。
そのような姿勢では、校長や教育委員会からの理解を得ることはできません。たとえ「横断的サービス」の説明資料が立派であっても、その資料に信用を与えることが困難となります。
残念ながら、「どうせ、自分のクラスのために使いたいんでしょ?」と思われてしまいがちだからです。
◎話を聞いてもらいやすい人
・学級経営も授業もまだまだだが、学年で歩調を合わせられる人
・些細なことでも、こまめに同僚に相談している人
学校教育目標には「みんな仲良く」「友達を大切に」といった社会性・協調性をテーマにした文言が入っているかと思います。今はたしかに、学級経営や授業でなかなか結果が出ていない、しかし少なくとも、社会性や協調性を大切にしている―。そんなことが分かります。
この場合、先生のためにも「横断的サービス」の説明資料を読み込み、話を聞いてもらえる可能性が高まります。 経費で購入できようが反対されようが、同僚間で情報が共有できたということです。学校のチーム力が上がっている証拠です。
ここまで、私の経験からお伝えできることを、具体的なサービス内容がわからないまま、いろいろと述べてきましたが、「横断的サービス」がどのようなものであれ、あくまでそれは手段に過ぎません。
「働き方改革」(そのサービスによって教員が時間を奪われる結果になってしまったら、子どもたちのためと言えども、やはり持続可能とは言えませんよね)と、「学校教育目標」の具現化という目的達成のために、これからも努めていただきたいと思います。
応援しています!
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