「ネットいじめ」調査開始以来最多の1万8870件【教育ニュース】
先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマは増え続けている「ネットいじめ」についてです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子
目次
同級生からのネットいじめで小六女児が命を断つ
使い方次第で人を助ける道具にも、傷付ける凶器にもなる。子供たちが学習で使うパソコンやタブレット端末も、その一つかもしれません。
「いじめの対応は、積極的な認知に始まり、早期の組織的な対応や児童生徒への継続的な支援が重要」。文部科学省は9月21日付で、各教育委員会にそう通知しました。
文部科学省 「いじめ防止対策推進法等に基づくいじめに関する対応について(事務連絡)」
認知と初動対応を適切にしなければ、重大事態につながると真摯に受け止める。些細な兆候でもいじめの疑いをもち、複数の教員で関わって組織的に動く。自殺などいじめ防止対策推進法の「重大事態」が疑われるときは速やかに教委に報告…。通知は随所に下線も添え、対応の徹底を促しています。
内容はこれまでの要請とさほど変わりません。今回通知したのは、一人の子供が自殺したからです。昨年11月、東京都町田市の小六女児が、同級生からのいじめを訴える遺書を残し、命を絶ちました。いじめには、国の「GIGAスクール構想」に基づき、学校が一人1台貸与していたタブレット端末も使われていました。女児が通った学校は、構想の先進校として当時全児童に端末を渡していたのです。
学校は事前にアンケートでいじめを把握し、関係児童の「指導」をしたと言います。
けれど、指導後も端末から女児の悪口が書き込まれ、ネット空間でいじめが続きました。学校側のIDやパスワードの管理もずさんで、いじめに拍車をかけた可能性があるとも言われています。
「学習以外の用途に端末を利用する」などが課題
いじめの認知件数は年々増加していましたが、2020年度は前年度より9万5333件減の51万7163件でした。新型コロナウイルス禍で、子供同士の対面が減ったのが一因です。
ただ、パソコンや携帯電話での誹謗中傷などの「ネットいじめ」は増え、調査を始めた06年以来最多の1万8870件に上りました。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
GIGAスクール構想の本格実施に伴い、文科省は3月、教委や学校に端末を利用する際の留意点や、子供や家庭と確認しておくルールを示しました。そこには「端末、ID、パスワードを適切に扱う」「学習に関係のない目的で使わない」「他人を傷付け、嫌な思いをさせることをネット上に書き込まない」とあります。端末導入では「先進校」だった町田市の学校は、ルール面で「後進校」だったと言えます。
国が7月、構想について教職員や保護者に行った調査では、子供に関する課題の上位に「学習以外の用途に端末を利用する」(23.2%)、「情報モラルが不足」(22.4%)が挙がりました。
記述欄にも「SNSトラブルが絶えない」との意見があります。
構想がめざすのは、単に端末を使って指導や学習をすればよい、というものではありません。端末の機能を生かしつつ、安全に使うことが前提です。配備がほぼ完了した今、ネットいじめの対策を今一度、考えるときではないでしょうか。
文部科学省「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について」
『教育技術』2021年12/1月号より