#39 すばらしい成果をあげた2学期【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

浅見哲也

今回は懇談会でのお話と、沢山の行事があった2学期の振り返りです。挑み、跳び、そして兆しが見えてきました。

第39話 学級懇談会

「兆」の文字

9月に子どもたちに模造紙で示したすべての行事を無事に終えることができた。

「努力」というテーマで臨んだ2学期の生活は、想像以上に過酷であり、予想以上に子どもたちを成長させた。12月に行われた授業参観の後の懇談会では、2学期の子どもたちの生活の様子を写真やビデオで紹介した。この時の懇談会への保護者の参加率は、80パーセントを超えた。担任として本当に嬉しかった。

2学期の子どもたちの様子とともに、私はこの懇談会で保護者に伝えたいことがあった。

「夏休み中に、私は子どもたちに残暑見舞いを出しました。すると、子どもたちから返事をもらいました。ありがとうございます。ところで、それは何人くらいだったと思いますか?」

すると、保護者はざわめき出した。

「えーっ、そうだったの? 私見てない」

「来てたわよ。私見たわ。それで、返事を書きなさいって言ったんだけど、うちの子は出したのかしら?」

「うちの子は、たぶんそのままにすると思ったから、私の見ている前で書かせたんだけど…」

「実は、お返事をいただいたのが、ちょうど10通だったんです」

「えーっ!」

「先生、うちの子は出していましたか?」

「はい、いただきました。けれど、個人的な追求はするつもりは全くありません。ところで、もし、他人から挨拶のお手紙をもらったら、皆さんは、どうなさいますか?」

「…」

「決して返事を出していただくことを強制するわけではないのです。それが目的だったら、大きな迷惑をかけることになりますから。でも、ちょっぴり返事を期待していた自分がいたのは確かです。

なぜ、こんな話をするのかと言うと、こういうことってとても言いづらいし、誰も指摘してくれないと思うんです。私から子どもに言うこともできますが、それだと真意が伝わらないと思って、こうして保護者の皆さんと一緒に考えたいと思いました。

今やメールでのやりとりが多くなり、手紙を書いたりすることも本当に少なくなりました。しかし、簡単にできるメールでさえも、相手からのメールを受け取りっ放しで返事を出さないこともよくあります。相手の状況も時間も考えずに出せるようになってしまったメールにも問題が多々ありますよね。

しかし、相手から何か連絡があれば、ちゃんと受け答えする人になってもらいたいと考えています。また、自分の気持ちをちゃんと言葉や文章で伝えられる人にもなってもらいたいと考えています。

子どもたちに、あの時どうだった?と聞くと、『面白かった』『別に』『まあまあ』と、こんな言葉が返ってきます。何があった?と聞くと、『いろいろ』と返ってきます。それくらい、今、語彙が乏しくなっています。

それは、私の指導不足も原因の一つです。そこで、ちょっとした会話でも自分の心を遣って相手に返す練習をしていただければと思います。

まもなく冬休みに入りますが、年末年始には、そんなチャンスが意外と多くあると思いますので意識してみてください。大変生意気なことを言ってしまって申し訳なく思います。でも、3組の保護者の皆様となら解り合える気がしてお話しさせていただきました。

将来、子どもたちには、メールではなく、自分の言葉で告白したり、ちゃんとラブレターくらい書いたりできる子になることを期待したいですね」

こんな話は、保護者との信頼関係が築かれていなければなかなかできないと思う。でも、とても大切なことであり、素直に聞いてくださった保護者の皆様にはとても感謝している。

話を続けた。

「さて、もうすぐ冬休みになります。どんなことを心がけて生活すればよいでしょうか?

やはり、冬休みのテーマは『家族』だと思っています。家族の一員として子どもたちも大掃除などのお手伝いをし、家族そろっての団らんでは、新しい年の抱負を語る。家族そろって外出したら、よそいきの挨拶をしっかりと決める。

年越しを家族と共に過ごせることが一番の幸せではないでしょうか。『パーティー』で賑やかに楽しむことも大切ですが、厳かに『セレモニー』を味わうことも大切にしたいですね」

そして、懇談会の最後に、3月に行われる小学生として最後の授業参観の予告をした。

「3組では、1学期は『真面目』、2学期は『努力』をテーマにして取り組んできましたが、3学期は『感謝』をテーマに取り組んでいく予定です。

そこで、3月に行われる最後の授業参観は、保護者の皆様への感謝の作文発表会を行います。できるだけ全員の保護者に参加していただけると、子どもたちの励みになりますので、お仕事の都合もあるとは思いますが、できましたら予定を開けておいていただけると助かります。詳しくは、また、学級通信『BOYS&GIRLS』でご連絡いたします。

以上で本日の学級懇談会を終わりにいたします。本日は多数の保護者の皆様にご参加いただき、本当にありがとうございました」

9月1日から始まった2学期もまもなく幕を閉じる。

月の数から言えば4か月だが、この中に、運動会、写生会、親善運動会、読書感想文制作会、修学旅行、芸術祭、持久走大会があったのだから、子どもたちは、どれだけ充実した毎日を過ごしていたかがわかる。

2学期最後の1週間の授業では、じっくりと、つまずきやすい算数の「割合」の学習や、時代ごとの特色を明らかにした歴史学習、既習漢字の復習などに力を注いだ。

「ほっ!」とすることができたのは私だけでない。子どもたちも感じていることと思う。

そんな子どもたちに、2学期の生活を振り返ってもらった。

【2学期の思い出ベスト5】

第1位…修学旅行(16票)友達と一緒にいろんな所を歩いたり、道に迷ったりしたから。
第2位…親善運動会(10票)6年3組が力を合わせて全力を尽くせたから。
第3位…映画作り(7票)楽しかったし、イイ感じにできたから。
第4位…持久走大会(4票)10位以内に入れたのがうれしかった。
第5位…運動会(1票)今年はリレーの選手になれたから。

こうして、2学期の子どもたちとの生活を無事に終えることができた。

「ゴーン、ゴーン」除夜の鐘の音が響き始めた。

毎年、今年を代表する漢字が清水寺で披露される。私もこの1年を漢字で表してみた。それは「兆」である。「手へん」を付ければ挑戦の「挑」。

まさに2学期の子どもたちは、チャレンジ精神で様々な行事に臨み、すばらしい成果をあげた。そして、「足」を付ければ縄跳びの「跳」。何といっても一番の思い出となった。この努力によって得られたものは、今後の子どもたちの生き方を支えていくことと思う。

何だか新しい年によい「兆し」(きざし)が見えてきた。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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