「学校におけるユニバーサルデザイン」とは?【知っておきたい教育用語】
障害のあるなしにかかわらず、すべての人がお互いに尊敬しあって共生する社会の実現が目指されています。学校においては、子どもたちの多様なニーズに対応する教育が求められており、「ユニバーサルデザイン」は重要なキーワードになっています。
執筆/常葉大学教授・堀井啓幸

目次
ユニバーサルデザインという考え方
ユニバーサルデザインの考え方は、1950年代から提唱されていた「どのような障害があろうと一般市民と同等の生活と権利を保障されなければならない」というノーマライゼーションや、1970年代に広まった「障害者を中心に建築などの物的環境を変えよう」とするバリアフリーデザインの考え方が集約された概念です。
日本では、対象を障害者や高齢者に限定して「バリア(障壁)を除去する」という意味で語られることも多いユニバーサルデザインですが、「誰にとっても使いやすい、アクセスしやすいデザイン」としてさまざまな場面で実践されています。
「2020年東京オリンピック・パラリンピック」の開催にあたって、「心のバリアフリー」を推進するための「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が立てられ、実践されました。
ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンターを設立したロナルド・メイスは1985年、ユニバーサルデザインの概念を提唱しています。ロナルド・メイスは、将来は障害者や高齢者の要望を踏まえた建築を考えるべきであると提案すると同時に、高齢者や障害のある人のためだけの特別なものではないユニバーサルデザインの必要性を示唆しました。
ユニバーサルデザインセンターによる「ユニバーサルデザインの7原則」は以下のとおりであり、学校におけるユニバーサルデザインを考えるうえで参考になります。
- 誰もが公平に使える
- さまざまな使い方ができる
- 使い方が簡単で明確に理解できる
- 使い手に必要な情報がわかりやすく理解できる
- 誤った使い方をしても事故を起こさない
- なるべく少ない身体的な負担で使用できる
- 使いやすい大きさや広さが確保されている
障害のある児童生徒との交流
学校教育法が改正され、2007年4月から、盲、聾、養護学校から障害種別を越えた特別支援学校に一本化されました。また、これまで支援の対象外であったLDやADHD、高機能自閉症等のいわゆる「軽度発達障害」への積極的な対応を視野に入れた特別支援教育が法的拘束力をもって施行されています。
学校教育において、障害をもつ児童生徒との交流が積極的に求められるようになり、学校教育におけるバリアフリーやユニバーサルデザインが意識されるようになったのはこの頃からといってよいかもしれません。そして2011年には、改正障害者基本法が公布施行され、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に教育が受けられるようにすることが求められました。
ただし、文部科学省の調査によると、2016年度の実績では、特別支援学級が設置されている学校において、特別支援学級との交流および共同学習が実施されている学校は、小学校81%、中学校80%とまずまずの結果でしたが、特別支援学校との学校間交流を実施している学校は、小学校16%、中学校18%、高等学校26%であり、障害のある人との交流活動は積極的とはいえない結果でした。
さらなる交流や共同学習を進めるために、2017年告示の学習指導要領において、「障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の一層の推進」を明示しています。