生徒の未来を築く「しめくくり」にトライ!【4年3組学級経営物語19】

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学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
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12月②「各々のしめくくり」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。学年主任・大河内巌先生(通称イワオジ)の元教え子で、学生ボランティアの大和川くんから改めてイワオジの教師力を知ることになった、渡来先生と葵先生。自分たちのさらなる成長の為にも、渡来先生たちも生徒たちと同じ様に「今年のしめくくり」をすることにしました。

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。
大和川くん

大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。

イワオジからの「深い学び」

「思い込みが激しく、感情に流されやすかった僕は、相手の立場や思いを考えられず、まわりの子に迷惑ばかりかけていました」

頭を掻きながら、過去を猛反省する大和川強くん。

「でも、大河内先生は決して怒らず、いつも『何が良くなかったか』を悟らせてくれたんです。納得するまで何時間もかけて…。先生の熱い想いが心にしみました。僕もあんな教師になる、と心に決めて教育大学に進みました」 

感動の涙がにじむ渡来勉先生に語る大和川くん。

「しめくくり、ふり返り・・・、最近大学の授業で教わった事ですが、先生があの頃伸ばそうとしていた力は…、『メタ認知力』だったんですよ」

「凄すぎだわ

驚く葵ゆめ先生に、キョトンとする渡来先生。

「…メタ認知って?」と思わず質問しますが、話の腰をボッキリ折られました。

「客観的に自己を見つめる力、自分自身をモニタリングする力。生徒指導や学習指導の場で、注目されている能力なのよっ

葵先生の厳しい指摘、そして大和川くんの熱い話が続きます。

「はい…。それに加え、授業はいつも対話形式。主体性を育て、課題を深く考えられるように」

「それって、『主体的、対話的で深い学び』だぞ。でも、新しい教育課程の内容をそんな昔に・・・」

やっと反応できた渡来先生に、大学の講義内容にも対応できる葵先生がニッコリ微笑みます。

「しめくくりは、メタ認知力を高めて主体的な学習を促進する。…灯台もと暗し、だったわね」

「イワオジを目標に頑張って勉強してきたんですが、あの優れた指導力や教師力を直接学び取りたくて…。だから押しかけてきました」

「偉いなぁ…」。感心しつつ自分の怠惰な学生時代と比べ、反省モードに入った渡来先生。

「今まで前ばかり向いて、夢中で走ってきた。自分自身を見直すなんて、考えもしなかった」

「私も…。去年と比べれば、少しは成長したかな、とは思うけれど」真剣な表情の葵先生。

「過去をふり返り、正しく評価し、改善する。まさに主体的・能動的な生き方の基盤だわ。私たちも、『今年のしめくくり』をするべきね」

「大賛成

嬉しそうな渡来先生。

「今からしめくくり大会をしましょうよ。そして、明日から各学級でガンガン実践しましょう

学級の成長を確かめる振り返りを!

運動会、作品展、学習発表会、校外学習…。二学期には、たくさんの活動や行事がありました。その一つひとつに精一杯取り組むなかで、担任が前に立って実施する活動から、子どもたちの主体的な活動へと、進化させることができましたか? 4年生の後半期は、5年生に向けての準備期でもあります。いつまでも担任のリーダーシップのもとで、子どもたちが「言われた通りに動く」というような取り組みでは、高学年として学校を動かすリーダーシップは育ちません。二学期の学級の様子を、下のチェック表で振り返りながら、三学期に向けての課題について考えてみましょう。

「しめくくり」にトライだ!

「最初は何も分からず、ひたすら不勉強を悔いる日々…」

厳かに語り出す渡来先生。

「でも、子どもたちが可愛くて…。それをエネルギーに、いろんな事にトライしてきた。苦手な音楽の授業研究、総合的な学習、西華祭…。失敗してよく叱られたけれど、先生方や子どもたちに支えられた。自信はまだ無い…。でも、もっともっといい先生になりたい。今後の課題は…、引き出しをさらに増やすことかな」

終了と同時に、握手を求める大和川くん。「ぜひ、勉と強で『勉強コンビ』の結成を

暫く躊躇していた葵先生も、語り出します。

「反省は『魔の10月』。チーム4年に支えられて乗り越えた。キチンと子どもに向き合えなかったことを猛反省。課題は…、もっと子どもたちを愛する自分になること…です」

「僕も、チーム4年に入れてください

感激する大和川くんに、同時に声をかける二人の教師。

「いいけど、まず採用試験にパスしようね

よりよい未来を築く「しめくくり」

翌朝、マスクで顔半分を覆った主任が出勤してきました。

「ゴホン、ゴホン。面目ない…」

恐縮する主任に、感謝の意を表す3人。

「先生の教師力に触れさせていただき、感動です

「自分の学級との違いが、はっきり分かりました」

「新たな目標を子どもたちに見つけ出させるために、しっかりとしめくくってきます

キョトンとする主任を一人残して、各々の教室に急ぐ渡来先生たち。

「さあ、今年をしめくくるぞ

気合い十分の渡来先生に、微笑む葵先生。

「あの子たちが、自分の力で『よりよい未来』を築くために…。頑張るわ

(1月①につづく)

『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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