教師の過酷職場対策:政令を確認し、笑顔でNOと言う勇気を
学級の子どもたちはもちろん大切です。でも、だからこそ、教師がまず自分自身を大切にし、笑顔で子どもたちの前に立つことが必要です。担任のレベルで明日からできる「働き方改革」について、上越教育大学教職大学院教授 西川純先生にご提案いただきました。
執筆/上越教育大学教職大学院教授・西川純

目次
政令を再確認すれば「嫌です」と言えます
「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」に、校長が命じられる超過勤務は、以下の4つだけであると定められています。
イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
そして、上記は臨時又は緊急のやむを得ない必要がある時に限られるのです。皆さんが今、忙しいと感じていることは緊急ですか? 違いますよね? だから、勤務時間が終わったら退勤できるのです。
例えば、勤務時間外の登下校の見守りを求められたら、「嫌です」と言えばいいのです。勤務時間外の地域の委員は、断ればいいのです。「そんなことをしたら大変なことになる」と心配するかもしれません。
しかし、それを心配するのはあなたではありません。管下の職員が勤務時間内の勤務で学校を動かす責任を負っているのは、あなたではなく、教育委員会・校長なのです。
教員勤務実態調査結果(速報値)(平成29 年) によれば、小学校教諭の3割強が、厚生労働省が定めた「過労死ライン」を超える時間勤務をしています。そして、実態はもっときつい。
なんでこんなことが起こるかと言えば、あなたが「嫌です」と言わないからです。自分で自分の首を絞めているのです。
「給特法」に関する誤解の存在を認識しよう
「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という法律(以降「給特法」と記す)によって、教員は4%の手当が付く代わりに、残業代が出ません。
何故、4%なのかと言えば、給特法が成立する直前の昭和41年の「教職員勤務状況調査」で、当時の教員の残業時間が4%だったからです。びっくりしますよね。何故、今の状況になったのでしょうか?
当時は子どもの数が増え、学級数も多く教員の数も多かったのです。
真面目な日本の教師は、「子どものため」「地域のため」と仕事を請け負っていたのです。請け負えるマンパワーがあった。それに燃える教師が十分にいたのです。
ところが少子高齢化社会に突入して、学級数も教師も少なくなりました。だから、教師の仕事もダウンサイジングしなければならないのに、それができなかった。それは長い間、「サービス」を続けていたため、保護者や地域がそれを本務だと誤解したのです。いや、教師すらも誤解してしまいました。