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「デジタル・シティズンシップ教育」とは?【知っておきたい教育用語】

連載
【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】

現在のデジタル社会において、私たちはコンピュータやインターネットを適切に活用して生きていかなければなりません。デジタル・シティズンシップ教育では、そのような社会の一員として私たちが責任をもって行動していくにはどうあるべきかを学びます。

執筆/麗澤大学准教授・中園長新

みんなの教育用語

情報モラル教育の限界

私たちの生活において、コンピュータやインターネットはもはや必需品です。子どもたちの世代は、生まれたときからデジタル環境に触れている「デジタル・ネイティブ世代」と呼ばれることもあります。

ICTを活用するデジタル環境においては、以前からトラブルの危険性が指摘されており、日本では「情報モラル」という独自の考え方が広く浸透しています。今や学校で「情報モラル教育」が行われることは珍しくありませんが、「情報モラル教育が“べからず集”になっている」という批判もあります。

情報モラル教育の教材では、たとえばドラマ仕立てのストーリーのなかで、主人公がパソコンで問題を起こすようすが描かれ、最後には「こうならないように、私たちは何に気をつければよいか考えましょう」といった調子で、子どもたちに行動の自制を促す展開が多く見られます。すべての情報モラル教育に問題があるわけではありませんが、抑圧的で管理主義的な生徒指導を是とする情報モラル教育は、ICT利活用の否定にもつながりかねません。

デジタル・シティズンシップ教育とは

こうしたなかで近年注目されているのが、デジタル社会における「善き社会の担い手」を目指す「デジタル・シティズンシップ教育」です。

シティズンシップは一般に公民権あるいは市民権と訳されますが、デジタル・シティズンシップ教育において政治的意図はほとんど意識されません。その一方で、社会参加のテクノロジーとしての側面を重視します。シティズンシップは「この世界を生きる“市民”の一人として、どのような資質・能力が必要か、どのように振る舞うことが“善い”ことなのかを考えること」といえるでしょう。こうした考え方を踏まえて、デジタルツールを用いて責任ある市民として社会に参加するための知識や能力がデジタル・シティズンシップであり、それを学ぶのがデジタル・シティズンシップ教育です。

欧州評議会による『デジタル・シティズンシップ教育研修資料集』によると、デジタル・シティズンシップ教育はおおむね次のように定義されています。

デジタル・シティズンシップ教育とは、若者が効果的なデジタル・シティズンになるために必要な能力を身に付けることを目的とした教育です。デジタル・シティズンシップ教育は、若者に特定の信念を受け入れたり、オンライン上の特定の政治活動に参加したりするよう説得することではありません。むしろ、新しいテクノロジーがもたらす機会を考慮し、情報に基づいた選択ができるようになることを目的としています。

『デジタル・シティズンシップ教育研修資料集』 (Cousil of Europe)

デジタル・シティズンシップ教育の実践

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