【相談募集中】要支援児に対する支援のヒントと応援教諭との関わり方

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岡山県公立小学校教諭

南惠介

「みん教相談室」に1年生の担任教諭から相談が寄せられました。要支援児がいる学級で、応援に来るほかの先生方との関わり方について悩んでいるそうです。特別支援教育をベースとした学級経営を提唱されている、岡山県公立小学校教諭 南惠介先生の回答をこちらで紹介します。

【相談募集中】要支援児に対する応援教諭との関わり方
写真AC

Q.要支援児がいる学級で、ほかの先生方の力も借りて頑張っているのですが…

公立小学校1年生の担任をしています。支援が必要な子が6人いて、私語やたち歩き、飛び出しが絶えません。ほかの先生方に応援に来ていただいていますが、どのような支援をお願いしたらいいでしょうか? ちなみに、応援してくださる先生方からいろいろとアドバイスをいただくのですが、受け入れられないものもあり、でも断れず辛くなってしまいます。(やま先生・40代女性)

A.まずは専門家によるケース会議が必要だと考えます

ご質問を読ませていただき、日頃苦労されながら奮闘されている様子が伝わってきました。また、応援してくださる先生方もたくさんいらっしゃるとのこと。同僚を大切にされる素敵なやま先生だからこそなのだと思います。

さて、ご質問に対する私の回答です。

どのような支援をというのが質問の主旨だと思いますが、私がまず必要だと考えるのは専門的な方を招いてのケース会議を開くことだと思います。できればその方に事前に何度か教室を覗いていただいて、その子たちの様子、そして周囲の関わり、先生方の動きを見ていただきます。(スクリーニング)

そして、その上で、特別支援上のセオリーに基づいた具体的な方針を決めていくことが必要だと考えました。お願いできる専門的な方はスクールカウンセラーや地域の特別支援センターの方など、学校や地域によって異なりますが、今はどこでもある程度そのようなリソースは存在すると思います。

そうすることで、アドバイスもある程度整理され、支援全体の方向性も定まってくると思います。

日常的に子どもと向き合っている担任の先生の「断りきれず辛くなる」ような心の負担を軽くすることもとても大切な要素だと思います。きっと周囲に気遣いをよくされる優しい先生なのでしょうね。

それでは、支援の方法について書きたいと思います。ズバリこういうことをすればいいですよという方法を提示できればいいのですが、なにぶん状況がわからないので、アドバイスをすることが難しいです。

支援の方法は子どもにあっていればサプリにも薬にもなりますが、同じ方法でも子どもに合っていなければ毒にもなります。

ですので、支援の方法については一般的によく言われていることを中心に紹介します。

1  環境調整の必要性

直接的な支援ではないかもしれませんが、子どもたちを取り巻く環境が子どもたちの落ち着かなさに繋がっていることがあります。その環境をまず調整してみましょう。

環境には以下のようなものが挙げられます。

教室の掲示物

前面には基本的に掲示物は貼らないようにします。その日の予定が分かるもの。学級の目当て。1年生なら始めと終わりの時間がわかるように時計のモデルを黒板に掲示する、くらいでしょうか。後はすっきりさっぱりさせる。

ついつい「視覚支援を」と考え、あれこれ掲示してしまうこともありますが、情報過多となり、イライラの原因となることがあります。必要な情報も、その時に「提示」するようにして、必要でない時まで貼りっぱなしにしないようにします。

細かいことですが、私は掲示物をラミネート加工することはあまりありません。光が反射して見づらくなることがよくあるからです。

見通しを持たせる

常に見通しを持たせるようにします。より具体的にいうと、その日、その時間の予定を知らせるということです。例えば、1日の予定を朝の会で唱和する。その時間にすることを、番号を付けて簡単な言葉で小黒板に書き示し、見えるところに置いておきます。

先生たちの言動を調整する

不適応を起こし始めている子どもたちは些細な音や動きに対して不快だと感じたり、興奮してしてしまったりすることがあります。

・声の高さ、速さ
・言葉の柔らかさ、硬さ
・動きの多さ、少なさ。

支援の先生がたくさんいるなら、その先生の動きが子どもたちの目につかないようにします。時に主指導の先生と同じくらいの声で支援に入られている状況を見聞きすることがありますが、それは子どもにとって混乱を招き、落ち着かない状況を作り出していきます。

どれが良い悪いではなく、子どもたちの様子に合わせて調整していきましょう。ちなみに私の場合は、動きすぎ、喋りが早くなりすぎる傾向があるため、時々ビデオなどで自分の授業を録画してチェックしています。

実は、今は子どもたちにとって不安を感じさせる状況が続いています。それはコロナ禍の中、日本中どの学校の先生もマスクをして子どもたちの前に立っていることです。

人にとって最も不安を感じるのはどういう表情でしょうか。多くの場合、それは怒りでもイライラでもなく「無表情」です。マスクで感情が読めない不安感を今、誰もが潜在的に感じています。

せめて目でプラスの感情を伝えられるように工夫してみましょう。そしてプラスの言葉がけを多めにします。それも子どもたちにとっては重要な環境となります。

他にも必要に応じてカーテンを閉めて外の魅力的なものが目に入らないようにしたり、子どもたちの席の配置を配慮したりすることなども環境となります。

2 落ち着かなさ、トラブルに対して

始め、中、終わり

始め、中、終わりは国語の説明文で出てくる言葉ですが、支援の上でも大切にしたい考えです。 子どもの不適応な行動に「突然」はほとんどありません。その不適応な行動の前に何かがあることは多いです。

友達との関わり、特定の授業、活動、時間帯、などなど。そのトラブルに直接繋がらなくても、本人の中で「いつもこれがあると(起こると)イライラしている。」ということがあるかもしれません。

また、トラブルの後も大切です。トラブルの後、本人にとって実は何か得をする状況はないでしょうか。そういうトラブルの前後に注目してみましょう。手がかりがつかめるかもしれません。

「良い授業」ではなく、子どもたちが入りやすい授業を志向する

なんとなく「良い授業」の定義が画一的になってきているように感じています。本来の「良い授業」の定義はかなり多様だと考えます。 今の先生の学級の子どもたちにとっての「良い授業」とはどんなものかをもう一度考えてみてください。

支援が必要な子どもたちにとっては次のような授業が入りやすいことが多いです。

  • 動いたり、声を出したりする活動がある(よく動き、よく話すことで脳の成長は促され、結果的に落ち着いていくことは多い)
  • 褒められる
  • ゲーム性がある
  • ある程度パターン化している
  • ユニット授業(1時間をいくつかのパーツで組み立てる)
  • 面白そうな掲示を提示している

この他、 私が1年生を担任した時は絵本をよく読むことにしています。また、パペットを持ち込んでパペットに話をさせる、パペットと先生が会話するという方法も子どもの注目を集め、しかも注意する時もやさしく刺激少なめで行なえるので、お勧めの方法です。

ルールの確認を子どもに伝わる形で行う

口頭での注意は伝わるようで伝わっていないことがあります。最低限何をしないといけないかを、子どもにも伝わりやすい簡単な言葉で書いて提示してみましょう(一定期間教室の前面に多くない分量で提示するのも効果があることが多い)。

スケッチブックに「〇〇をします」と提示するのもよいでしょう。「〇〇しません」という禁止は「じゃあどうすればいいのかわからない」こともあるので、こうしたらよいということを具体的に提示した方がよいと思います。

また言葉だけでは不十分なので、できている子に注目するよう促します。モデル提示による視覚化も効果的です。

クールダウン(カームダウン)はシステム的に

あまりにも落ち着かない状況の場合は、クールダウンできるスペースを提示して、時間を区切って利用することを子どもたちに提案します。

不適応な行動をしている子たちは、もちろんルールがはっきりわかっていない場合もありますが、それとは別に本人が不安や緊張など、そもそも「困っている」ことからスタートしていることがとても多いです。

なので本人と確認の上、クールダウンできる場所を設定して、そこで本人が気持ちの切り替えができるのを待つという方法もあります。「落ち着くのに何分くらいいる?」と子どもと確認して、10分くらいを目安にクールダウンする時間を確保します。

どこが落ち着くかは子どもによって違います。教師が用意した仕切りのある場所がよい場合もあれば、過去に関わった子どもたちの中には階段の踊り場、トイレの片隅などが落ち着くという子がいました。

変わったところでは教室の用具入れという子が、複数名もいました。安全確保の面から教師が確認できる場所であれば、子どもに任せてもよいと思います。

書き出せばきりはないのですが、 最後に一つ大切なことを。

支援というとついつい何かをしてあげることと考えてしまいがちですが、「見ているけれど関わらない」のも、とても大切な支援です。

例えば、子どもの不適切な状況をスルーすること(教育的無視)、これは応用行動分析で言うところの「消去」に当たります。叱られることも含めて、関わることは「報酬」つまりご褒美となります。

良くない行動をするたびに関わってもらえるとなると、悪いとはわかっていても繰り返すことにつながっていきます。関わることでその行動は維持されたり、強化されたりしていきます。そう考えると、逆に「当たり前にできている時」に多く関わることは、すごく大切です。

支援はその言葉からもついつい「足し算」で考えてしまいますが、何を止めるか、何を減らすかという「引き算」もかなり大切になってきます。そういう視点も大切にしつつ、目の前の子どもたちにとって必要なことをよく考えてできそうなことからスタートしてみてください。

子どもを育むということは、なかなか時間がかかり、したことに対して効果が出るのにも時間差があることも多く、見通しの立ちづらいことだと思います。ただ、はっきりしているのは先生が子どもを大切に思い、一生懸命関わられているということはとても価値があるということ。

そんな先生のこと、きっと子どもたちは大好きだと思います。

日々、本当に忙しい中で、悩まれることも多いとは思いますが、コツコツとできることを積み上げていくことで、きっといつか何かしら良いことが起こると信じて子どもと関わっていきたいですね。

私もそう信じて、先生と同じようにコツコツと積み上げていきたいと思います。


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