小3小4二学期「学級づくりの見直しが大事!」な3つの理由
二学期に入り、今年度もいよいよ後半。年度はじめに描いた「学級づくり」について、このタイミングでしっかり見直して修正し、子供たちをスムーズに次学年へと進級させましょう。
監修/東京都公立小学校主幹教諭・佐々木陽子
目次
なぜこの時期に学級づくりを見直す必要があるのか
なぜ、10月に学級づくりをもう一度見直す必要があるのでしょうか。中学年ならではの理由が三つあります。
その1 脱力感
二学期は大きな行事が目白押し。行事をやり遂げた後は、子供も教師も大きな達成感を得ることができるでしょう。同時に大きな目標を達成した安堵感から、脱力感に襲われてしまう子も少なくありません。
そしてうまく気持ちの切り替えができないまま、クラスに漫然とした空気が漂い、学級経営がまとまらなくなってしまうことが多いのです。
その2 学力差
二学期以降は学習の難易度が上がり、学力差が顕著になる傾向があります。
特に算数科は、かけ算やわり算の筆算でつまずく子が多く、個人差が出やすい教科。授業についていけない子はストレスを抱え、さらに勉強ができる子も進度の遅さなどに不満をもつようになり、授業が荒れやすくなります。
その3 友達関係のマンネリ化
友達関係に変化が見られず、いつも一定の友達と活動し、人間関係がマンネリ化します。なれ合いの人間関係を続けていると、仲がよいだけにお互いに対する遠慮がなくなり、些細なことで喧嘩になってしまうこともあります。
二学期後半にありがちなトラブルと対処法
その1 無気力になる
大きな行事を終えると、燃え尽き症候群にな ってしまう子もいます。また中だるみで、何事もやる気が起きないという子も出てきます。そんなときこそ、読み聞かせや読書活動をするなど、少し落ち着いた時間を取り入れるようにするとよいでしょう。
読書活動を行うときのポイントとしては、短時間でいろいろな本を読むのではなく、ある時間の中で一冊の本をじっくり読むことです。
なぜなら本をその都度変えていると教室中がざわざわしてしまい、心が落ち着かなくなるからです。早く読み終えた子も、もう一度最初からその本を読むように伝えましょう。
もちろん、読んでいる時間はおしゃべりNG。そうすることで教室中が静かになり、ゆったりと読書ができて心が落ち着いてきます。
また行事の後、子供たちが無気力になってしまった場合は、その大きな行事のふり返りをしっかりすることが立て直すコツです。
例えば、運動会なら自分のことだけではなく、友達の活躍やよさをほめ合う時間を設定。自分だけでは、気付かなかったよさを人から教えてもらうことや、人のよさを見付けることを通して、お互いに自己肯定感が高まります。そして自分に自信がもてるようになり、他の活動への取り組みにも意欲が高まります。
その2 友達や他学年とのトラブル
思いも寄らない友達関係のトラブルが増えるのも二学期の特徴。友達関係がマンネリ化して些細なことでよくケンカしたり、友達の輪も広がるため、他学年とのトラブルも増えてきます。
自分たちの仲間意識が強くなる中学年では、自分たちの遊び場(陣地)に入ってくる他学年に言いがかりをつけたり、挑発したりすることもあります。対応策としては、他学年の先生たちと連携を図ることが大事。もしトラブルが起きたら、周囲の人の情報を参考にして事実に基づいた証拠を集め、問題を解決していきます。
その3 羽を伸ばす
学校生活になれきってしまうと、その環境から羽を伸ばして、いろいろなことに興味・関心を広げていくようになります。好奇心旺盛であることはよい場合もありますが、その反面、事件や事故に巻き込まれることも。
好奇心から、友達とつるんで学区外に遊びに行ったり、ゲームセンターに子供だけで行ったりと、ルールや決まりを守れなくなることもあるため注意が必要。朝の会や帰りの会などで、「こんなことが隣の学校であったよ」と事例を出して注意喚起すると効果的です。
「学区外で遊んでいて、中学生にお金を貸してほしいと言われて怖い思いをした」「ゲームセンターに行って、大人に〝家においで〞と誘われて危なかった」など、自分たちが思ってもない事件や事故に巻き込まれる可能性があることを、具体例を出して話していきましょう。
学級づくりの見直しポイント
その1 年間計画を見直す
学年会で4月に決めていた年間計画も、各ク ラスの状況によってはその都度追加や見直しをしていきましょう。二学期の後半は各学級で荒れの兆候が見られたり、中だるみを感じたりすることもあります。再度学年会を開き、各学級の状況を報告。必要があれば、学年全体での活動を取り入れるのもよいでしょう。各クラスが活性化し、学年もまとまります。
学年全体の活動を盛り上げるには、子供たち自身が課題を見付け、自分たちで活動を動かしていると思わせるのがポイントです。
例えば、計画委員を募集し、子供たちが中心となって「学年ドッジボール大会」や「百人一首大会」を企画、実行するのもおすすめです。
その2 学級目標を見直す
学級目標もふり返ることが大事です。しかし、目標自体を途中で変えるのではありません。 例えば、「みんなと仲よく協力して活動しよう」という学級目標を設定していた場合、授業の後、遠足の後、運動会の後、社会科見学の後などのあらゆるときに、目標を達成できたのか、できなかったのかの確認をしていくことが重要です。繰り返し確認をすることで学級目標を達成しようとする意識が高まり、目標に合ったクラスがつくられていくからです。
目標を達成できていない子がいたら、達成できた子に話を聞いてコツを教えてもらい、クラスで共有することも大切です。
また、クラスの全員が達成できたら、学活でみんなの好きな遊びをするなど、ごほうびがあると楽しく取り組むことができます。
学級活動の見直しポイント
係活動を見直す
係活動は、最初はやる気満々でスタートし、楽しく活動を始めますが、二学期後半になると活動が鈍ってしまったり、一部の子だけで活動する係が出てきたりします。もう一度、各係でめあてをふり返るなど、試行錯誤する時間を設定して、クラスがもっと楽しくなるような関わり方がないか、話合いをさせましょう。
学習規律の見直しポイント
その1 あいさつ
あいさつはすべての基本です。
「おはようございます」「よろしくお願いします」「ありがとうございました」など、自らあいさつをすることで気持ちもよくなり、あいさつをされた人の気持ちも明るくさせます。特に「おはよう」は朝から最高のプレゼント交換です!
ガヤガヤした教室を落ち着かせるのも、「よろしくお願いします」という始まりのあいさつです。休み時間と学習時間の切り替えのためにも、しっかりあいさつをさせましょう。
また「ありがとうございました」という感謝の言葉は、クラスを温かな雰囲気にしてくれます。教師から積極的に使うようにしましょう。
その2 返事
先生に当てられたら「はい」と返事をして席を立ち、自分の意見や考えを述べます。こうした些細なルールを徹底していないクラスは荒れやすいのです。
担任も最初のうちは、返事をしない子や声が小さい子に指導をしますが、毎日毎時間のことなので、指導もそのときそのときになってしまうこともあるでしょう。
しかし返事を徹底させるには、担任の根気が勝負になります。返事がないなら返事をするまで何度もやり直しをしていきましょう。この繰り返しをするかしないかで、返事ができる学級、できない学級が分かれるのです。
その3 話を聞く姿勢
「なれ」が出てくる二学期には、授業中もガヤガヤしてしまったり、「話を聞く姿勢」にゆるみが出たりしがち。特に先生の話を聞く姿勢、友達の発言を聞く姿勢はしっかり見直し、指導にもひと手間加えるようにしましょう。
例えば、いつものように挙手をした人を当てて発言をさせるとき、先生がインタビュー形式で拳をマイク代わりにして発言する児童の所まで意見を聞きに動くと、注目が集まり、クラスみんなの姿勢や顔が発言者に向きます。
つまり、先生が動くことで、より発言者に注目して話を聞こうという、よい姿勢になります。この瞬間を見逃さず、大いにほめてあげましょう。
生活指導の見直しポイント
その1 ルールを見直す
忘れ物が多くなる、廊下を走る、登校が遅れ気味になるなど、学校生活に関する課題が浮き彫りになる時期です。
こんなときは以前より子供同士が認め合い、称賛し合える場を設定します。帰りの会の「キラキラタイム」など、今日のすてきな行動をしていた人やがんばっていた人を称賛する時間を、いつもより多めにとってあげましょう。
また、「校長先生から聞きました。〝〇〇さんは、自分から元気にあいさつできて素晴らしい!〞とほめていたよ」「三年生の〇〇さんが〝廊下は走らないよ!〞と注意しながら歩いていて、六年生が感動したそうです」などと、第三者からのほめ言葉を伝えることで、学級全体でルールを守ろうとする意識が一層高まります。
その2 人間関係を見直す
どんなに仲がよくても、「なれ」が出てくると些細なことでケンカが増えます。固定した友人関係だけで活動するのではなく、いろいろな人とコミュニケーションをとる工夫を取り入れましょう。
休み時間は、曜日を決めてクラス全員で遊ぶ活動を取り入れるのもおすすめです。どんな遊びをするか、子供に内容を考えさせるようにしましょう。単純な鬼ごっこのような遊びも、クラス全員で全力で行うと盛り上がり、ストレス発散になります。そのほかにも、さまざまな遊びや学習を通して、固定した友達関係をシャッフルする活動をさせるようにしましょう。
教室環境の見直しポイント
その1 机のサイドをチェック
机の両サイドにフックがあり、子供たちはそのフックにいろいろな物をぶら下げます。フックがあれば物をかけたくなる心情は分かりますが、たくさんの物をかけすぎると、かけた物が友達の足に引っかかり、けがをさせてしまうことがあります。なるべく通路側のフックには物をかけないように指導しましょう。
その2 机やロッカーの中を整理する
お道具箱をすべて机の中から出したときに、机の奥にお便りやプリントがグチャグチャになって潰れていることがあります。ロッカーも同様。ロッカーの物を出したときに、いろいろな物が奥に挟まっていたり、潰れていたりします。整理整頓をするときは、ロッカーの物や机の中の物を一度机の上にすべて出させましょう。またお道具箱の中身もすべて取り出して整理させるようにしましょう。
その3 黒板をすっきりと!
子供たちが一日のうち、一番注目するのは、担任の先生。次に黒板です。特にコロナ禍になって、全員が前向きで学習したり生活したりしています。黒板に学習とは関係ない資料が貼られていたり、何か書かれていたりすると気が散ります。担任も気がゆるむこの時期、黒板は常にスッキリさせ、その時間に必要な情報だけを書いたり、提示したりします。
保護者との関係の見直しポイント
その1 学習面
個人差が目立つ二学期後半は、学習面で心配する保護者からの連絡を受けることもあります。
保護者から相談を受けたときに、「そうですね、苦手ですよね」と共感するだけでは、教師として対応不十分です。日々学習指導をしているのですから、つまずきのある子に対してどんな手立てをしているのか、課題解決のためにどんな工夫をしているのかなど、教師として保護者に説明する責任があります。
また、普段からつまずきが顕著にある子に対して、保護者に連絡を入れて協力を仰いだり、放課後補習をしていくことを説明したり、事前にこちらからアクションを起こすことが大切です。
その2 生活面
保護者から友達関係のトラブルのことでよく相談を受けます。家で遊ぶ友達が固定してきたり、仲がよすぎて些細なことでケンカになったりとさまざまです。休みの日についつい長居して夜ご飯を食べる時間まで遊んでいたり、借りた物を返してくれなかったりと、なれからくるトラブルも出てきます。
また、昨今はSNSを使用したトラブル(友達の悪口の書き込みなど)も中学年から発生するほどです。保護者会や学年便りなどを利用して、帰宅時刻や学区域がどこまでか、SNSトラブルについての注意喚起や学校ルールの確認をしていきます。そして、学校ルールを踏まえて、家庭でも家庭のルールを子供と話し合って決めていただくよう、伝えていきましょう。
取材・文/出浦文絵 イラスト/藤井昌子
『教育技術 小三小四』2021年10/11月号より