子供とのコミュニケーションで学級の荒れ・乱れ防止【二学期後半】

特集
学級崩壊・学級の荒れ:立て直しからリアルな緊急避難まで

クラスが乱れがちな11月。今年度の後半を子供たちと楽しく過ごすために、クラスを落ち着かせる「子供との関わり方」について考えます。ここでは、二学期後半に気を付けたいことをまとめました。

お話しを伺ったのは…
神奈川県公立小学校校長・小嶋千里
岐阜県公立小学校教諭 杉本大昂

子供とのコミュニケーションで学級の荒れ・乱れ防止

クラスの荒れに気付いたときは子供との関わり方を見直す機会

11月、学級の乱れを感じると、担任の先生は不安な気持ちになるでしょう。同じように子供たちのなかにも、不安な気持ちを抱えている子や困っている子が必ずいます。「クラスが乱れてきたかも」と感じたときこそ行動のとき。

二学期後半とはいえ、きちんと子供との関わり方を見直したり、新たな活動を取り入れたりして、荒れを防ぐ手立てを打ちましょう。

今は感染症対策で、朝会など全校で集まる機会がほとんどなくなりました。一堂に会す場や学校全体のなかで指導されたり、「〇年生らしく、しっかり整列しよう」「低学年のお手本になろう」といった、自分たちの「あるべき姿」や「なりたい姿」を感じたり、「さすが〇年〇組さん、すばらしい姿勢ですね」とほめてもらったりと、クラスをより大きな集団の中で客観視する機会が減りました。同じように、縦割り活動など異学年との関わりも、これまでと質も量も変わりました。コロナ禍により、「外からの目」を感じづらくなったことは、クラスの荒れにつながる要因として注意が必要です。

(小嶋千里)

荒れる教室

荒れの原因を探るには「集団」と「個人」の視点をもって見る

子供たちを漫然と見ていても、クラスの荒れの解決の手立ては浮かんできません。明確な視点をもって観察し、原因を探りましょう。

しかし原因は一つとは限りません。「一人ひとりはよいのだけれど、集団になるとまとまらない」など、「クラス集団として見る」「個人として(特性や背景まで)見る」と、二つの視点をもつことで対応策も変わってくるでしょう。 また中学年も後半となると、4月よりも学級集団がぐっと成長し、初めは担任主導だったことを、子供たちの手に委ねていく部分が増えていくと思います。とはいえ、全て子供たちに任せられるわけではありません。「どの部分をどのくらい任せよう」というさじ加減が学級経営の肝とも言えます。集団へのさじ加減と個へのさじ加減。それは毎日いっしょにいる担任の先生だからこそ感じられる加減です。

(小嶋千里)

「明日の集会どこまで子供たちに任せよう…」

重要なのは、教師主体の「居場所づくり」と子供が主体的に紡いでいく「絆づくり」の視点をもつこと

いじめ・不登校などを含む、荒れの未然防止のためには、子供たちが安心できるよう自己存在感や充実感を感じられる場所を教職員がつくりだす「居場所づくり」と、子供自らが主体的に取り組む共同的な活動を通して、絆を感じ取り、紡いでいける「絆づくり」のためのフォローが必要になってくると考えています。 

そのためにも、教師は日頃から子供の様子を見つめ続けて、状況や状態を把握し続けていくことと、荒れが起こらないようにさまざまな環境を整えていくことを怠ってはならないと考えています。

荒れを未然に防いでいくための最大のポイントは、子供のことをどれだけ事前に把握できているかにかかってきます。そして荒れの要因分析を欠かさないことです。

その際には、もちろん「この子は〇〇タイプだろう」などの経験則から子供像を捉えることや、「あの子は実はああ見えて〇〇なところがある」など、教師自身が抱く主観的な情報も大切にしますが、そればかりにとらわれすぎてしまうと、思わぬ勘違いをしたり、子供にとってはレッテルを貼られたように感じてしまうことも少なくありません。

そこで私は、生徒指導や養護教諭などから年に数回出される「いじめアンケート」「こころのアンケート」のようなアンケートや、多くの学校で実施されている「QU」(楽しい学校生活を送るためのアンケート)を活用しています。そして一人ひとりの気持ちの変化を分析したり、子供の気持ちを個別の面談で直に話を聞くなどして、教師の主観的な捉えだけでは捉えきれない子供の思いや関係性について、より客観的・俯瞰的な視点で分析することも大切にしています。

そうすることで、気にかけるべきポイントが分かり、急なトラブルにも焦ることなく対応することができます。また突発的なトラブルが起こらないように予防的に声かけをすることが可能になり、安定した学級経営ができます。

加えて、荒れにつながる言動や問題行動が見られたとき、「なぜそのような気持ちになるのだろう」という要因の分析を、友達関係、家庭環境・社会関係などから、多角的に分析する必要があります。荒れの背景には、祖父母の介護を保護者といっしょに任されているヤングケアラーなどの実態があるかもしれません。 

また社会学的には、家庭環境が経済的に厳しかったり、家庭の教育環境が脆弱であったり、家庭が地域や親族関係などのコミュニティとのつながりが希薄だったりすると、そういった家庭の子供は、生活や学習に対する意欲が低くなる傾向にあると言われています(インセンティブディバイド)。

このように多角的に深く分析することで、より子供の気持ちに寄り添った指導が可能になると考えています。

(杉本大昂)

11月ごろに起こりがちな集団の乱れ その要因となる事項をチェック!

①学級集団の成長と担任の先生の支援のズレを確認

  • 担任が手(や口)を出しすぎていないか
    →(子供にもっと任せられるのではないか)
  • 担任の支援が足りていないところはないか
    →(任せすぎてはいないか)
  • 支援や指導が子供たちに合っているか
    →(的外れではないか)

②学級の向かうべき方向の共有

  • 目標を見失っていないか
    →(特に大きな行事の後など、次につなげるふり返りをしているか)
  • 学級目標など、方向性を共有できているか
    →(クラスにストーリーがあるか)

③学級での居場所づくり

  • クラスへの所属感が一人ひとりにあるか
    →(居場所や安心できる場所の確保)
  • 一人ひとりが大事にされ、楽しめているか
    →(一人ひとりの役割、満足感の確保)
  • 役割と責任をもつ場面が十分にあるか
    →(「お客さん」から「学級の一員へ」)

(小嶋千里)

取材・文・構成/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎

『教育技術 小三小四』2021年10/11月号より

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