生活の乱れを個別指導で解決!【4年3組学級経営物語12】
9月①「充実の二学期」にレッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。ダレている子、心が疲れた子、自信のない子…、先生はだれ一人見過ごさない。元気を出して、みんなでよりよい学級をつくっていこう! 少しだけパワーアップした新任教師、渡来勉先生が、愛と情熱で「充実の二学期」にレッツトライだ!
目次
<登場人物>
目標を決めよう!
「先生は、みんなの成長をもっと支援できる教師をめざす! 個人の努力も、学級全体での頑張りも全力で支える。みんなも…」
窓の外には大きな入道雲、久しぶりの教室。
熱く語る渡来勉先生が、子どもたちに学級目標を指し示します。 *ポイント1
「『レッツ トライだ 4年3組!』を実現するため、まず自分が頑張ることを決めよう。そして、学級全体で頑張ることもしっかり話し合おう!」
♢学級目標に関すること
学級目標を立てること、掲示物をつくることで、子どもたちは満足しているのかもしれません。もっと意識できるようにするには…
・ 学級目標を立てたときの思いや願いを振り返り、もう一度みんなで考える場をもちましょう。
・学級目標に近づくために、歌をつくったり、係の仕事の見直しをしたり、みんなで一緒にできるようなゲームをしたりしましょう。
・ 学級通信などを活用し、保護者とともに子どもたちの成長を見守ることも大切です。
頷く日焼けした顔。
その中に空席が2つ…。リュウとマリの席です。
じっと見つめる先生。
その時、ドアが静かに開きました。遅刻したマリが、不機嫌そうに教室に入ってきたのです。
さあ、二学期にトライだ!
「マリちゃん、初日から遅刻ね。…大丈夫?」
「リュウが欠席したんだってな…」
放課後の職員室、大河内巌先生と葵ゆめ先生が連続で質問。
ドンと胸を叩き、少しだけ咳込む渡来先生。
「各々指導を続けています、お任せください!」
「頑張れよ! 個別指導は、集団育成の基盤だ」
熱意溢れる渡来先生を見て、嬉しそうな主任。
「はい! 夏のぶらり旅で学びました。戦国時代の名将の人材育成法を。人は城、人は石垣…」
「でも…」
葵先生が、発言を遮ります。
「二学期は大変よ。とくに去年は…」
心配そうな主任の様子に、慌てて元気を元気を出す葵先生。
「今年は大丈夫です! 学級づくり頑張っていますから!」
個別指導(その1)~マリの場合~
両親ともに仕事優先の家庭、孤独な夏休みを過ごすマリ。生活時間はメチャクチャです。
夏休み後半、渡来先生はマリに電話しました。
「…で、なんでトライだが電話してくんのよ!」
電話の向こうのマリの渋面が、伝わります。
「マリ、先生のこと信頼してくれてるかい?」
「はぁ…、いきなり何よ!」
長い沈黙の後、「ウン」と短い返答。
「遠足の時、面倒くさいキャラの私を本気で心配してくれて嬉しかったよ」
その言葉に、単刀直入に切り返す渡来先生。
「…じゃあ聞いてくれ。先生は、マリの生物時計を修理したい。だから特別な指導を行うことにした」
「…え?」
混乱するマリに、続けて話します。
「これから毎朝、毎晩、先生が家に電話をかける。マリが、規則正しく生活できるようになるまで…。大丈夫、ご両親の了解はもらっている」
生活改善を目指した、マリとのホットラインの開始です。でも、なかなか進展はありません。
受話器を持ったまま眠るマリ。鳴っても気付かぬマリ…。ただ、電話を無視したり拒否したりは、一度もありません。
マリとの毎日の会話が、心の絆を少しずつ太くしていきました。
(9月②につづく)
『小四教育技術』2017年8月号増刊より