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4年3組学級経営物語(9)

2019/7/11

学級経営物語タイトル

7月②「総合的な学習」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。イワオジの教師力の原点を聞き、自身の未熟さを反省をする渡来先生。そんな姿を見たイワオジは、7月に行う総合的な学習のゲストティーチャーとの打ち合わせを、渡来先生に任せることにしました。

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライだ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

ゲストティーチャーはフランスからの留学生

翌日の放課後、会議室の前に立つ渡来先生。

『ゲストティーチャーはジャンヌ、フランスの留学生だ。フランスについて子どもたちが質問し、日本のことを伝える…。異文化交流を通じ、地球市民としての意識を高める調べ学習だ』。*

昨日の主任の言葉を思い出し、胸がドキンドキン。

『フランス語しゃべれないけど…、でもトライだ!』

4年3組学級経営物語

思い切って開けたドアの向こうに座っていたのは、フランス人形に似た美しい瞳の女性。

「ボ…、ボンジュール。マドモアゼル、ええと…」

完全に舞い上がってしまった渡来先生。

立ち上がるジャンヌ、フワリと揺れる長い髪。

「コンニチワ、ハジメマシテ、トライだ先生!」

「えーっ、日本語上手じゃないですかぁ!」

「オジイサン、日本大好キ。ダカラ、ワタシモ日本文化ニ興味ヲ持ッタノ。コノ春カラ大学デ勉強シテマス。ヨロシクネ!」

ピエールじいさんの孫娘、ジャンヌが優雅に手を差し伸べてきました。

ピンチ! 指導案通りにはいかない!

「…ワタシ、日本文化ノ研究シテルノヨ。小学生ニ聞キタイ事ナンテ無イケド」

困った顔で、ジャンヌが答えました。

「ソレニ、フランスノ事ハ、ガイドブックデ調ベル方ガ、正確ニ分カルヨ」

『交流活動にならない。どうしよう…』

主任から手渡された指導案を見ながら、悩む渡来先生。

「ゴメンネ。フランスデハ、自分ノ意見ヲハッキリ言ウ。日本ハ、和ヲ以テ尊シナンダケドネ」

会話が途切れます。

質問が浮かばず焦る渡来先生を不思議そうに見つめるジャンヌ。

大ピンチ!  焦りが頂点に達します。

その時、あの厳つい顔と言葉を思い出しました。

『課題を持ち、学びにつなぐには…。ん…、あっ…、そうか』

心に浮かんだ素朴な疑問を、言葉にしました。

「…日本に来て、自分の国とは『違うなぁ』と感じたことは? それと、『ああ同じだ』と思ったことは?」

ジャンヌが、目を輝かせました。

「イッパイ有ルヨ! グルメハ同ジダケド、食材ヤ料理法ハ違ウノ。日本ハ、カタツムリ食ベナイ。オ汁粉ハ、黒クテ甘イカラ苦手。小豆ハ、塩味デ茹デルノガ普通ナンダケド…」。

話題が急激に膨らみ、先生自身も 何だか楽しくなってきました。

ジャンヌに…トライだ?

「では、インタビューを続けます」

学者タイプのハジメが質問します。

「フランスでは日本のアニメが大人気だそうですが、ジャンヌさんは?」

「私モ大好キ! 好キナノハ、○△×…」

なじみのアニメ番組名が出され、喜ぶ子どもたち。

「たこ焼きは食べましたか?」

ハジメが聞くと、「大阪名物だよ!」という声が続きます。

ジャンヌが、困り顔で答えます。

「タコハ苦手ナノ。フランスデハ、海ノ悪魔ッテ言ウカラ…」

「へえー、そうなの」

「美味しいのにね」

カバンから、大きな地図を取り出すジャンヌ。

「今日ハ、ヨーロッパノ地図ヲ持ッテキマシタ」

「日本はどこ?」

「あっ…、東の端にあった!」

「日本ハ東ノ端、極東トシテ描カレテイルワ」

「世界地図の中央は、必ず日本と思ってた…」

アキが手を挙げます。

「でも、いろんな地図の描き方があるんだね。国や地域によって」

「感じ方、考え方、表現の仕方は随分違う。しかし同じこともある。さっきのアニメのように」

渡来先生、ナイスアドバイスです。

一学期最後の総合的な学習は、ジャンヌを中心に盛り上がりつつあります。

廊下側の窓からは、大河内主任と葵先生が興味深そうに参観しています。

「ジャンヌを、教材としてうまく活用している。引き出しが1つ増えたな」

笑顔でつぶやく主任。

「でも、『違いを認め、共に生きる』って国際理解教育の本に載っています。事前に読めば、ムダに試行錯誤せずとも…。それに調べ学習にどうつなげるかも不明確です」

厳しい評価の葵先生。

「まず基礎基本からだな、教師力アップは。いいセンスを持っているが、まだまだ修行が足りん」

渋い顔の主任と葵先生に気づかぬ渡来先生。

ノートには今夏のキャリアアップの秘策が…。

それは「ぶらり旅で教師力向上~引き出しを豊かにする夏の旅行計画!~」でした。*

(8月①につづく)

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『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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