• 勉強マーク小学館ロゴ
  • facebookアイコン
  • twitterアイコン

4年3組学級経営物語(9)

2019/7/11

学級経営物語タイトル

7月②「総合的な学習」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。イワオジの教師力の原点を聞き、自身の未熟さを反省をする渡来先生。そんな姿を見たイワオジは、7月に行う総合的な学習のゲストティーチャーとの打ち合わせを、渡来先生に任せることにしました。

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライだ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

ゲストティーチャーはフランスからの留学生

翌日の放課後、会議室の前に立つ渡来先生。

『ゲストティーチャーはジャンヌ、フランスの留学生だ。フランスについて子どもたちが質問し、日本のことを伝える…。異文化交流を通じ、地球市民としての意識を高める調べ学習だ』。*

昨日の主任の言葉を思い出し、胸がドキンドキン。

『フランス語しゃべれないけど…、でもトライだ!』

4年3組学級経営物語

思い切って開けたドアの向こうに座っていたのは、フランス人形に似た美しい瞳の女性。

「ボ…、ボンジュール。マドモアゼル、ええと…」

完全に舞い上がってしまった渡来先生。

立ち上がるジャンヌ、フワリと揺れる長い髪。

「コンニチワ、ハジメマシテ、トライだ先生!」

「えーっ、日本語上手じゃないですかぁ!」

「オジイサン、日本大好キ。ダカラ、ワタシモ日本文化ニ興味ヲ持ッタノ。コノ春カラ大学デ勉強シテマス。ヨロシクネ!」

ピエールじいさんの孫娘、ジャンヌが優雅に手を差し伸べてきました。

ピンチ! 指導案通りにはいかない!

「…ワタシ、日本文化ノ研究シテルノヨ。小学生ニ聞キタイ事ナンテ無イケド」

困った顔で、ジャンヌが答えました。

「ソレニ、フランスノ事ハ、ガイドブックデ調ベル方ガ、正確ニ分カルヨ」

『交流活動にならない。どうしよう…』

主任から手渡された指導案を見ながら、悩む渡来先生。

「ゴメンネ。フランスデハ、自分ノ意見ヲハッキリ言ウ。日本ハ、和ヲ以テ尊シナンダケドネ」

会話が途切れます。

質問が浮かばず焦る渡来先生を不思議そうに見つめるジャンヌ。

大ピンチ!  焦りが頂点に達します。

その時、あの厳つい顔と言葉を思い出しました。

『課題を持ち、学びにつなぐには…。ん…、あっ…、そうか』

心に浮かんだ素朴な疑問を、言葉にしました。

「…日本に来て、自分の国とは『違うなぁ』と感じたことは? それと、『ああ同じだ』と思ったことは?」

ジャンヌが、目を輝かせました。

「イッパイ有ルヨ! グルメハ同ジダケド、食材ヤ料理法ハ違ウノ。日本ハ、カタツムリ食ベナイ。オ汁粉ハ、黒クテ甘イカラ苦手。小豆ハ、塩味デ茹デルノガ普通ナンダケド…」。

話題が急激に膨らみ、先生自身も 何だか楽しくなってきました。

ジャンヌに…トライだ?

「では、インタビューを続けます」

学者タイプのハジメが質問します。

「フランスでは日本のアニメが大人気だそうですが、ジャンヌさんは?」

「私モ大好キ! 好キナノハ、○△×…」

なじみのアニメ番組名が出され、喜ぶ子どもたち。

「たこ焼きは食べましたか?」

ハジメが聞くと、「大阪名物だよ!」という声が続きます。

ジャンヌが、困り顔で答えます。

「タコハ苦手ナノ。フランスデハ、海ノ悪魔ッテ言ウカラ…」

「へえー、そうなの」

「美味しいのにね」

カバンから、大きな地図を取り出すジャンヌ。

「今日ハ、ヨーロッパノ地図ヲ持ッテキマシタ」

「日本はどこ?」

「あっ…、東の端にあった!」

「日本ハ東ノ端、極東トシテ描カレテイルワ」

「世界地図の中央は、必ず日本と思ってた…」

アキが手を挙げます。

「でも、いろんな地図の描き方があるんだね。国や地域によって」

「感じ方、考え方、表現の仕方は随分違う。しかし同じこともある。さっきのアニメのように」

渡来先生、ナイスアドバイスです。

一学期最後の総合的な学習は、ジャンヌを中心に盛り上がりつつあります。

廊下側の窓からは、大河内主任と葵先生が興味深そうに参観しています。

「ジャンヌを、教材としてうまく活用している。引き出しが1つ増えたな」

笑顔でつぶやく主任。

「でも、『違いを認め、共に生きる』って国際理解教育の本に載っています。事前に読めば、ムダに試行錯誤せずとも…。それに調べ学習にどうつなげるかも不明確です」

厳しい評価の葵先生。

「まず基礎基本からだな、教師力アップは。いいセンスを持っているが、まだまだ修行が足りん」

渋い顔の主任と葵先生に気づかぬ渡来先生。

ノートには今夏のキャリアアップの秘策が…。

それは「ぶらり旅で教師力向上~引き出しを豊かにする夏の旅行計画!~」でした。*

(8月①につづく)

<<前の回へ  ● 次の回へ>>

『小四教育技術』2017年8月号増刊より

関連する記事

授業記事一覧

【先生のための学校】「音読」でクラスをつくる

今回は、 14回も二年生を担任し一年生で難儀になったクラスの立て直しを何度も実現された、「先生のための学校」に所属される、ある講師の先生のお話を紹介しましょう…

【指導計画】6年理科 土地のつくりと変化①

地面の下の様子を想像して絵や言葉で表現したり、ボーリング資料や崖の写真を見るなどして気づいたことを話し合ったり調べたりする活動を通して、土地のつくりや変化につい…

2019/9/17

子どもたちを変える!魔法の音読指導

日々の音読がいつの間にか惰性化し、易きに流れていませんか? 身体を使って音読する「あいうえ音読」などの実践で知られる佐藤隆史先生の音読指導を手本にすれば、子ども…

【指導計画】1年算数 「3つの かずの けいさん」

数量の関係に着目し、挿絵と半具体物などを関連付けて考える活動を通して、3つの数の加法の式の意味を理解し、その計算をすることができるようにします。

2019/9/15

【教育技術小五小六10月号特典】「外国語の授業レポート」動画(本誌連動企画)

『教育技術 小五小六』10月号本誌に掲載されている「外国語の授業レポート」特集と合わせて視聴するための授業動画です。本誌記事中に掲載されているパスワードを入力し…

【指導計画】5年国語 日本の文化を考えよう

【教材名】「古典」を楽しむ(教育出版 五年下)の授業アイディアです。本単元では、「好きな古典作品を読んで感想をまとめる」言語活動を行います。感想には、「あらすじ…

2019/9/14

【教科調査官に聞く】国語科の新学習指導要領-改訂ポイントと授業改善の視点

小学校学習指導要領の改訂にあたり、国語科における授業改善の重要な点を、文部科学省・菊池英慈教科調査官にうかがいました。

【小六道徳】「ここを走れば」授業展開と板書

「考え、議論する道徳」を実践するために、板書に力を入れているのが愛知県西尾市立横須賀小学校。この小学校で行われた小六の道徳「ここを走れば」の授業展開と板書の工夫…

【指導計画】1年算数「どちらが おおい」

1年算数「どちらがおおい」では、身の回りにあるもののかさに関心をもち、2つの入れ物に入っている水のかさを比較する活動を通して、直接比較、間接比較を使って、かさを…

2019/9/13

【小五道徳】「友のしょうぞう画」授業展開と板書

「考え、議論する道徳」を実践するために、板書に力を入れているのが愛知県西尾市立横須賀小学校。この小学校で行われた小五の道徳「友のしょうぞう画」の授業展開と板書の…

もっと見る