主権者教育【わかる!教育ニュース#14】

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主権者教育【わかる!教育ニュース#14】

先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第14回のテーマは「主権者教育」です。

文部科学省が、主権者教育の教員向け指導資料(2部構成)を作成

「主権者」とは、国の先行きや政治を決める存在。日本の主権者は国民だと憲法で定めています。そして、18歳から選挙で投票できるようになった今、小中学校段階でも主権者教育の重みが増しています。

文部科学省も、小中学校での主権者教育に役立ててもらおうと教員向けの指導資料を作り、省のホームページに掲載しました。主権者教育が目指すものを説いた「理論編」と、実際の指導例を示した「実践編」の2部構成(データ参照)です。

理論編は主権者教育を通じて養いたい力や、学習指導要領での位置付けを説明。社会科や特別活動で取り組むに当たって、心がけることも記しています。留意点には、現実に社会で起きていることを扱う際、偏った見方で扱わないことや、学校での政治的中立の確保を挙げています。

どんな授業をすればよいのでしょうか。指導のポイントや授業の展開などを示した実践編で、社会科は小3、小4、小6の三つの授業例を取り上げています。例えば小4の「自然災害から人々を守る活動」の授業では、過去にどんな自然災害があったかを調べ、命や暮らしを守る自治体の取り組み、必要な対策や家庭での備えを考える流れを解説。ワークシートや資料のリンク先も添えてあります。

特別活動でも3例を紹介。小5の「係活動」では、係活動の意義を理解させたうえで必要な係を設定し、役割分担を決め、学期ごとにふり返りをさせるよう促しています。

学校や学級に積極的に関わるよう子供に促すことも、主権者教育の一歩

2015年の公職選挙法改正に伴い、翌16年6月から選挙で投票できる年齢が「18歳以上」に引き下げられました。中央教育審議会も同年12月、これから求められる資質や能力の一つに「主権者として求められる力」を挙げ、小中学校から主権者教育を充実させるよう促す答申を出しました。

22年4月施行の改正民法でも成人年齢を18歳に引き下げ、保護者の同意なしでクレジットカードや携帯電話などの契約を結べるようになりました。18歳からは「大人」として扱われ、自分の行動に責任をもつことが求められるのです。

高校生になってから、主権者として、そして大人としてどう振る舞うかを学んでも、簡単には身に付きません。単に模擬投票で選挙を疑似体験したところで、政治に興味がわくでしょうか。早いうちから社会で起きていることに関心をもち、自分に引きつけて考えさせながら、政治や社会に向き合う姿勢を培う必要があります。

まずは、子供にとって「身近な社会」である、学校や学級に積極的に関わるよう促すことも、主権者教育の一歩。子どもたちが、身の回りで改めるべきことや欠けていることを考え、自分の行動や周囲の人との協力によって、現状をよい方向に変える。その積み重ねが、やがて政治や社会への意識につながり、自分の意見をもって関わっていくことに結び付くのではないでしょうか。

参照データ
▽文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/220922-mxt-kyoiku01-000025143_0.pdf

不登校【わかる!教育ニュース#15】はこちらです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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