「オンライン研修会」200%活用術
コロナ下の今、「オンライン研修会」が目白押しです。どの研修会に参加し、どのように学び、どう活用すればよいのか、リピーター参加者である先生方に、詳しく話を伺います。
目次
これまではできなかった、同日開催の研究会への複数参加
千葉県公立小学校教諭・平松正裕
私は今年度から長期研修に出ており、時間的にも余裕があるため、研究テーマである生活・総合を中心に、オンラインの研修会や研究会をいろいろ活用しています。このようなオンラインの研修会を活用するようになった契機は、やはりコロナ禍でした。
私は以前から、地元地区の有志10人ほどが集まって行う、自主研修会に参加していました。そこでは月2回、明日の授業や学級のことなどについて話し合っていたのです。
ところが、コロナ禍で会場の手配なども難しくなったため、昨年度からオンラインで研修会を開くようになったのです。
それを機に、他県で行われるオンライン研究会にも参加するようになりました。
例えば、和歌山大学附属小学校や奈良女子大学附属小学校といったところの研究会がそれです。それらは実際に授業もオンラインで見られるため、子供たちがどんなことを話しているのか、どういう方法で研究を進めていけばよいのかなどの勉強になりました。
もちろん授業を見るのは、映像よりも直接のほうが子供の姿が細かく見られるので、よりよいと思います。しかし、理論的な実践発表の研修はオンラインでも十分だと思いますし、著名な大学の先生の講演も行われますので、得るものがとても大きいと思います。
特に他県の研究会は、移動の時間や経費も少なくて済むため、たくさん参加できるというメリットもあります。場合によっては、これまでは参加できなかった同日開催の研究会に複数参加することもできます。
先日、生活・総合の学会が静岡県の学校で行われたのですが、私はオンラインで参加した後、30分も経たずに行われた、ESDに関する文部科学省の担当官のお話を聞く会にも参加できました。これは以前では絶対にできなかったことですが、興味があるものにいろいろ参加できるよさがあります。
その他、オンデマンドでの多様な大学の先生の講義も活用しています。オンデマンドの場合は繰り返し見られます。しかも一度、お話を聴いた後、自分自身が考えて、実際に実践をし、経験した後にもう一度聴くと、より深く理解できるというよさがあります。
若い先生方も、もし自分の興味があるものがあれば、一歩踏み出して参加されてみたらよいと思います。初めて参加するのは勇気がいりますが、直接参加よりもオンラインのほうが、気持ちのうえでのハードルが低いのではないでしょうか。勇気を出してぜひ一度、参加してみてほしいと思います。
オンライン研修を通し、多数の同世代の先生と話ができる
静岡県公立小学校教諭・浅井公太
私は前任校在籍時に当時、常葉大学におられた佐藤和紀先生(現在は信州大学助教)に指導に来ていただき、そこから情報機器を活用した授業づくりを学びました。
そのご縁で、後に佐藤先生や常葉大学の三井一希先生が中心になってつくられた、オンラインの勉強会に参加するようになりました(2週に1回開催)。
そこではICTの活用に限らず、教育に関わる広範囲なテーマで意見を出し合っています。最初は、研究者の先生がテーマを出されて話を進めていくような形もありましたが、現在は参加している全国の現場の先生方が話題を提供し、それについてディスカッションしていくような形で進めています。
ここで得た情報を基に、2週間自分でいろいろ考えて実践し、また情報を持ち寄って議論することがとても大きな力になります。
ちなみにこの勉強会には、佐藤先生の研究室の大学院生も参加しており、テーマによって例えば、児童の話している時間をデータ化してくれたのもとても勉強になりました。
また、その勉強会経由で、全国の著名な大学の先生が主催されているオンラインの多様な研修会などにもご紹介いただき、参加させていただきました。
このようなオンライン研修会の一番のよさは、気軽に見て学べることだと思います。多くのオンライン研修会では、自分の顔がモニターに出ることがないため、あまり構えずに参加できます。また動画を録画してあって、オンデマンド化し、後から見られるようにした研修会もあります。それらは時間のあるときに見られますし、実践してみて、また見ることで、より学びが深まるでしょう。
このような研修会、研究会では他地域の先生方と知り合え、情報を得ることができるのもとてもよいと思います。また現在、職場には同年齢層の先生が少ないのですが、オンライン研修を通し、多数の同世代の先生とお話ができるのもオンラインのよさでしょう。
とにかく、まずそのようなものに参加し、一度見てみるとよいと思います。一度見ると必ず先生自身が変わるはずですから。
各地で何が実践されているのか、最新情報が得られるのが嬉しい
広島県公立小学校教諭・橋本智美
私は元々広島県の東部で自主研修会に所属していました。それがコロナ禍で、「子供たちの学びを止めない」ということと同時に、「教師の学びも止めない」ということで、オンライン研修会に切り替え、週1回行うようになりました。
当初、直接対面で研修会を行っていたときは、会場や機材の手配などの準備があるため、月1回か2か月に1回程度しか行えませんでした。しかしオンラインならば、その必要はありませんから、以前よりも頻繁に行えるようになったのです。
また総合的な学習の時間を研究していることもあり、昨春から昨夏にかけて、國學院大學の田村学先生が行われた研修会にも参加しました。そこで「コロナ禍の中、いかに子供の学びを止めないか」といったことを学ぶとともに、田村先生にも名前を覚えていただいて、全国の先生方とつないでいただきました。
そうした機会もあり、田村先生にご指導をいただいて数回の研究会を行う機会を得、全国の学校での実践も聞けるようになりました。そのようにして、同じ研究をしている他地域の先生方とつながりができたのがとても嬉しいことです。
また、甲南女子大学の村川雅弘先生にご指導をいただいている研究会は、今も継続して参加しています。
そのような会を通して知り合った、学会などでないと会えないような他地域の先生方とは、月に1回、夜にオンラインで集まっています。その他、ツイッターなどで、さまざまなオンライン研修の場を見付けることができて、それも学びの場を見付けるチャンスになっています。
こうした会を通し、今各地で何が実践されているのかの最新情報を得られ、この学校の実践がすごい」という話が入ってくるのはとても嬉しいことです。
研究者の先生も参加され、授業の実践から始めて理論が語られるのがとても分かりやすいと思います。そうやって、理論と実践がつながって理解できることが大きな力になるのだと思います。
若い先生でオンライン研修が初めてだと、抵抗感があることもあると思いますが、思ったより手軽に質の高い学びを得ることができるので、一度参加してみてください。加えて、人とのつながりができることも大きな力になります。
他地域の多様な実践や多様な研究会に参加できる
愛知県公立小学校教諭・後藤 宗
私は名古屋の情報教育研究部会に所属しています。その会のメディア研修グループから、NHK主催のファシリテーター育成講座に参加したことが、オンラインでの多様な研修に参加するきっかけと言えるでしょう。
その講座を通して、全国の先生方とのパイプができ、さらにそれがフェイスブック上で広がっていって、全国の多様な勉強会、研究会を知り、参加するようになりました。
一方で、その講座に指導に来られていた、東北大学の堀田龍也先生や信州大学の佐藤和紀先生、常葉大学の三井一希先生と知遇を得ることができ、そうした先生方の研修会をはじめ、多様な研究者の先生の研修会にも参加するようになりました。
このような研修会に参加し、全国の先生方とつながって実感するのは、自治体ごとに多様な面で違いがあるということです。
それだけに、若い先生方に伝えたいのは、「目の前の現場を見ることはもちろん大事だけれども、教育をよくしていくには、他地域の多様な実践や多様な研究会に参加することも大事」ということです。
実際に、そういう学校や地域外の多様な研修会や研究会があることを知らない若い先生もいますが、私から若い先生に声をかけ、興味をもってくれた先生が参加すると、必ず「勉強になりました」と言ってくれます。特に若手の先生は、そのような場に顔を出し、多様な立場の先生方とパイプをつくることが、研修会の研修内容と同時に重要だと思います。
そのような研修会のよさは、参加してみないと分からないものです。現地に赴く研修会も同様ですが、一度参加してみると、私が「こんなことが学べるんだよ」と言う以上のものが必ず学べると思います。
実際、私自身のことで言えば、オンライン研修を通し、例えば「子供の思考を可視化させるためにはどうすればよいか」「情報の関連付けをさせるものは何がよいか」といった教育の方法についても学んできました。しかし、同時にオンライン研修を通して、他地域の先生方と多くのパイプをもてたことが、とても大きな力になっていると実感しています。
教育的なよさとともに、オンラインのよさを学ぶことができたというのが実感です。それはGIGAスクール時代の学びをつくるうえで、とても重要なことだと思っています。
取材・文/矢ノ浦勝之
『教育技術 小三小四』2021年8/9月号より