小6国語「帰り道」指導アイデア

教材名:「帰り道」 光村図書

指導事項:〔知識及び技能〕(1)ケ
     〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)イ・エ
言語活動:イ

執筆/京都府公立小学校教諭・深田知子
編集委員/文部科学省教科調査官・菊池英慈 前京都府公立小学校校長・藤本鈴香

単元で付けたい資質・能力

①身に付けたい資質・能力

本単元では、物語の視点の違いに着目しながら、登場人物の相互関係や心情などについて描写を基に捉えるとともに、人物像について具体的に想像する力の育成を目指します。

人物像を具体的に想像するためには、登場人物の行動や会話、様子などを表している複数の叙述を結び付け、それらを基に総合して判断することが必要です。

本単元の教材文「帰り道」は、同じ出来事について二人の登場人物それぞれの視点で描かれています。視点の違いに着目し、登場人物同士が互いにどう思っているのかを総合し、人物像を捉えることができるようにしていきます。

②言語活動とその特徴

本単元では、「物語の視点の違いに着目しながら人物像を捉え、感想を書いて交流する」という言語活動を位置付け、複数の叙述を結び付けて人物像を具体的に想像できる力の育成を図ります。

教材文は、二人の視点から物語が描かれているため、出来事やそれぞれの性格の捉え方が異なります。それらを結び付け、総合した人物像として具体的に想像し、自分と比べながら読んで感想を書くことで、人物像を深く捉えることができるようにします。

単元の展開(4時間扱い)

主な学習活動

第一次(1・2時)

①五年生までの物語文を読む学習を振り返り、教材文を読んで「視点の違いに着目しながら人物像を捉え、感想を書いて交流する」という学習課題を設定し、学習計画を立てる。

【学習課題】視点の違いに着目しながら人物像を捉え、感想を書いて交流しよう。

第二次(2・3時)

②視点の違いに着目しながら、同じ出来事に対する捉え方や心情について、共通点や相違点をまとめる。
→アイデア1

③登場人物の人物像を捉え、その後の二人の関係を想像する。
→アイデア2

第三次(4時)

④二人の人物像や関係について、感想を書いて交流する。
→アイデア3

アイデア1 同じ出来事に対する捉え方や心情について、共通点や相違点をまとめよう

教材文「帰り道」は、同じ出来事について違う視点で描かれていて、登場人物それぞれの捉え方や心情を読み取ることができます。子供たちも初読の段階で視点の違いに気付き、興味をもつことでしょう。

そこで、「律」の視点から書かれた「1」と「周也」の視点から書かれた「2」を並べて示すことで、主体的に共通点や相違点を見付けていくことができるようにします。

そうすることで、起こった出来事については共通しているけれど、それに対する捉え方や心情が違うこと、それぞれの性格についての捉え方が違うことに気付くことができるようにします。

二つの文を並べて比較するとき、真ん中に間をあけておくことで、共通する出来事(様子)などを書き込むスペースとして活用するといいですよ。

▼ワークシート例

ワークシート例

起こった出来事に対する捉え方の違いや、それぞれの心情については、色分けした付箋に書くとよいでしょう。

色分けした付箋を活用すると、どちらの心情なのかが一目で判断でき、移動など操作することができるので、人物像を捉えていくときの手掛かりとして活用することもできます。

アイデア2 視点別に人物像を捉え、話し合って総合した人物像を考えよう

人物像を具体的に想像するためには、登場人物の行動や会話、様子などを表している複数の叙述を結び付け、それらを基に総合して判断することが必要です。

「帰り道」の場合、片側の視点からだけで人物像を捉えるのではなく、総合して人物像を捉えていくことが大切です。そこで、あえて「律」視点グループ「周也」視点グループに分けてそれぞれの人物像を考えることで、対話の必然性をもたせるようにします。

次のような手順で人物像を捉えていくとよいでしょう。

①「律」グループ「周也」グループでそれぞれ人物像を捉える

▼「律」視点グループ

「律」視点グループ

▼「周也」視点グループ

「周也」視点グループ

それぞれの視点で、相手や自分のことをどのように見ているか関係図に整理していきます。このとき、前時に書いた付箋を操作し、根拠として活用するとよいでしょう。

②視点ごとに捉えた人物像を話し合いながら総合する

視点ごとに捉えた人物像を話し合いながら総合する

「律」は、自分ではテンポについていけないと思っているけど、「周也」はそれを「落ち着いている」って見ているんだね。

「律」はおっとりしていて、すぐに言葉にするのは苦手だけど、物事をじっくり考える、落ち着いた人だと思うな。

お互い、自分にはない部分をもった相手のことを、憧れや尊敬の気持ちをもって見ているね。大事な友達なんだね。

アイデア3 二人の人物像や関係について「自分」と重ねながら感想を書いて交流しよう

子供たちは、物語を読むということを通して、様々な体験、経験をすることができます。六年生になったばかりの子供たちにとって、「律」と「周也」という対照的な登場人物は、自分を重ねて読むことができる、身近な登場人物だと考えられます。

自分では短所だと思っていることが、違う見方をすれば長所にも変わるということは、この時期の子供たちにとって大切な学びです。

ここまで、それぞれの視点で物語を読んできましたが、今度は「自分」という視点で物語を見て、どのように感じたかをまとめることで、再度自分自身で物語を味わい、自分の学びを振り返ることができるようにしましょう。

語られる視点が変わることによって、物事の見方は変わります。だから、物語を読む際の「語り手」が誰なのかはとても重要なことなのです。教科書の「この本、読もう」に挙げられているような、視点に着目して読むと面白い本を紹介し、読書の楽しみを広げていきましょう。

イラスト/斉木のりこ 横井智美

『教育技術 小五小六』2020年4/5月号より

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