どの学校でもどの先生でもできるプログラミング授業を目指そう

30年以上にもわたってプログラミング教育の研究・実践に取り組んできた佐和伸明校長先生が、GIGAスクールでICTを取り入れた授業への対応に追われている先生たちの一助になる「プログラミング授業実践の実例集」を上梓しました。だれでも、どの学校・学級でも取り組めるプログラミング教育について、お話を伺いました。

佐和伸明さん・千葉県柏市立手賀東小学校校長
佐和伸明さん・千葉県柏市立手賀東小学校校長

プログラミングで、自分で課題を発見し解決していく力を育てる

―本書の特徴を教えてください。

佐和 本書を編集した柏メディア教育研究会や柏市教育委員会は、平成28年に国が新学習指導要領でプログラミング教育を検討しているという段階から、「どの学校でも実施できるプログラム教育のあり方」にこだわり、実践と検証を重ねてきました。

いわゆる研究校を指定し、優秀な実践モデルをつくるのではなく、どこの学校でもできるプログラミング教育を開発してきたのです。

そして、平成29年度には柏市内42校全ての小学校でプログラミング教育がスタート。4年ほど研究・実践を重ね、柏市のスタンダードプランが固まりました。そして今回、その成果を他校にも共有し、日本中の多くの子どもたちにプログラミング教育を普及させることを目的に本書をつくりました。ですから、特徴は、 どこの学校でもできる実践事例が盛り込まれていること。例えば、ロボットプログラミングや教科書に出てこないような有料のソフトは、ほぼ使っていません。できるだけ無料のソフトを使い、どこの学校でも費用的な負担がないようにしています。

―プログラミング教育の目指すものとは?

佐和 今の子どもたちは、ドリルのように正解が決まっている課題は解けるのですが、答えが一つではない課題に取り組んだり、いままでやったことがない問題に出合ったときにとりあえず解いてみようとする気持ちが欠けています。しかしこれからは、自分で課題を発見し解決していく力が求められます。そのために必要なことは、課題に対し、どうすれば解決できるか論理的に思考し、試行錯誤しながら解決していこうとする態度の育成です。これがプログラミング教育の目指すものです。

教科の中で取り組めるプログラミングが必要になってくる

―学校におけるプログラミング教育にはどんな課題がありますか?

佐和 学校で進めていく上での大きな課題は、時数の問題でしょう。プログラミングの授業時間をどう確保すればよいか困っている学校も多いでしょう。そこで本書では、教科の中でできるプログラミング教育を提案しています。本来、学校でプログラミング教育を系統的・体系的に学ぶのであれば、教科の中で教えるべきだと考えているのです。しかも、本書では教科のねらいを達成するためのプログラミングというものにこだわっています。ただし、この方法には反対する人もいるでしょう。プログラミング教育は教科とは別に学ぶべきものだという考え方も確かにあると思います。しかし、私たちは前述したように、「どこの学校でも、どの先生でもできる」、かつ「効果を感じられる実践」を重視しました。

とくに先生方は、最初のプログラミングの授業を自分一人でどう行うのか悩まれることが多いと思うので、まずこの本を見て、自分にもできそうだと感じてほしい。そして、この本をたたき台としてスタートしていただき、その後はその先生なり学校なりの創造性が出てくるとよいと思っています。

佐和伸明さん・千葉県柏市立手賀東小学校校長
佐和伸明さん/千葉県柏市立手賀東小学校校長

佐和伸明さん監修の本

教育技術MOOK
即実践! 小学校のプログラミング授業
監/佐和伸明
編/柏メディア教育研究会・柏市教育委員会

取材/大和信治(EDUPEDIA) 撮影/編集部 まとめ/出浦文絵

※この関連記事は、先生のための教育事典『EDUPEDIA』でも配信します。あわせてお読みください。

『教育技術』2021年1月号より

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