小一・小二算数「積み残しゼロ」のスペシャル指導
コロナ禍でも、学習の積み残しなく、次学年へ引き継ぐためには、どこに重点をおいてどんな指導をすればよいのでしょうか。ここでは、小一「くり上がりのあるたし算」「くり下がりのあるひき算」、小二「九九」を扱う算数の指導のポイントを紹介します。
執筆/富山県公立小学校教諭・前田正秀
目次
一年生
学年のまとめの時期になりました。その学年で学習した内容をしっかりと定着させ、積み残しなく、次の学年へと送り出したいものです。
だからといって、ドリルやプリントばかりしていては、算数嫌いの子供になってしまうかもしれません。ゲーム性のある活動を取り入れながら、楽しく復習していきたいものです。本稿では、ちょっとした隙間時間にできる、楽しい活動を紹介します。どれも、準備のいらない活動ばかりなので、気軽にお試しください。
たし算・ひき算
一年生で積み残しやすい単元のナンバーワンは、なんといっても「くり上がりのあるたし算」「くり下がりのあるひき算」でしょう。計算力を高めるには、繰り返し練習するほかありませんが、練習ばかりしていては嫌になる子供も出てきます。目先を変えながら、楽しく練習させることがポイントです。
はっけよい、たし算相撲
進め方
- 子供二人が向かい合う。
- 行司(教師)が「はっけよい」のかけ声とともに、計算カードを見せる。
- 早く答えたほうの勝ち。
単に計算の答えを素早く答える活動なのですが、「ひがぁしぃ、○○海〜」「にぃしぃ、〇〇山〜」「はっけよい」と、相撲っぽく演出するだけで、子供は盛り上がります。個人戦だけでなく、列ごとにチームをつくって勝ち星を競い合っても面白いでしょう。
ここでは、たし算相撲を紹介しましたが、ひき算でも同様に行えます。
指を教具に、たし算じゃんけん
進め方
- 子供二人が向かい合う。
- 「じゃんけんぽん」のかけ声で、お互いに好きな本数(6〜9本の間)で指を出す。
- 二人が出した指の合計を言う(例えば、6本と8本なら「14」)。
- 先に答えを言ったほうの勝ち。
指を使って視覚的に理解できます。指は5本ずつ10本のまとまりになっているので、優れた教具なのです。時間を制限して、何人に勝てるかを競い合うのもよいでしょう。多く勝とうとする中でさまざまな工夫が生まれます。
例えば、ずっと9を出し続ける子が出てくるかもしれません。相手の指だけ見て、その本数から1ひけば、答えが分かるからです。
相手が7本出したなら、そこから1ひいて6。答えは16になるというわけです。
また、少ないほうの手の指だけを数える子も出てくるかもしれません。必ず6以上の数を出すので、片方の手はパーになっています。二人のパーを合わせると10になるので、少ないほうの手の指だけ数えれば、答えが分かるというわけです。
こうした工夫を取り上げて紹介すれば、数の感覚が磨かれます。
目を閉じて、超能力計算
教室に教師用の百玉そろばんがあるなら、使わない手はありません。
進め方
- 教師が、玉を12個左に寄せる。
- 子供たちは目を閉じる。
- 教師が「カチッカチッ」と音を立てながら、玉を5個右に戻す。
「せーの」で目を閉じたまま、答えを言う。 - 目を開けて、答えを確かめる。
例えば、「12ひく5」なら、教師が玉を12個左に寄せた後、子供に目を閉じさせます。教師が「カチッカチッ」と音を立てながら、玉を5個右に戻します。子供には音を聞きながら計算させ、「せーの」で目を閉じたまま答えを言わせます。目を開けて、答えを確かめた子供からは、歓声が上がります。子供にとっては、目を閉じたまま答えを当てるのが、まるで超能力のように思えるのです。
計算が苦手な子には、「カチッカチッ」という音に合わせ、心の中で「11、10、9……」と数えるように助言するとよいでしょう。計算が得意な子には、音の数を数えさせ、12からひくように助言します。その子に応じた方法で練習することができます。
二年生
かけ算
二年生で積み残しやすい単元のナンバーワンは、なんといっても「かけ算」でしょう。二学期にしっかり覚えたから、何もしなくても大丈夫というわけではありません。子供は新しいことを学習すると、前に学習したことを忘れていくものです。
三学期にも、ちょっとした隙間時間を使って、九九の復習をしていきたいものです。
集中力アップ、九九パンパン
進め方
- 教師がランダムにかけ算の式を言う。
- 「せーの」で、子供が答えの数だけ手をたたく(十の位の数だけ拍手、一の位の数だけ机をたたく)。
例えば、「7×8」なら、答えが「56」なので、5回拍手をして、6回机をたたきます。クラス全員がぴったりそろうと気持ちのよいものです。教室がざわついているときに、このゲームをやると、集中力が高まります。
すぐにできる、16ます計算
進め方
- ノートの縦5ます×横5ますを四角で囲む。
- 最上段と左端段に、2〜9までの8つの数字を書く(教師がランダムに読み上げて、子供がそれを書く)。
- 計算をする。
確実な定着を図るための手立てとして、百ます計算が有名です。しかし、百ます計算を行うには、結構な時間がかかります。時間をかけられない場合には、百ますではなく、16ますにしてみるのもよいでしょう。縦4ます×横4ますに、2〜9までの8つの数字を入れます。かけ算はかける数とかけられる数を入れ替えても答えは同じなので、たった16ますでも九九をほぼ網羅できます。
16ます計算なら、答え合わせを含めて5分もかからないので、負担なく行えます。
はっけよい、九九相撲
やり方は、前述の「たし算相撲」と同様です。「はっけよい」のかけ声とともに、九九カードを見せ、早く答えを言ったほうが勝ちというゲームです。
三年生への助走① 穴埋めかけ算
ちょっとした隙間時間に「7×□=28」といった穴埋めかけ算を出題するのもよいでしょう。三年生「わり算」の学習への「のりしろ」になるからです。
例えば、「7×□=28」なら、7の段で積が28になる九九を探すことになります。それが、三年生で学習する「÷7」のわり算につながるわけです。
三年生への助走② 九九たんけん
進め方
- 学校の中で、九九を使って数えられるものを探す。
校内を探検して、九九を使って数えられる物を探します。教科書とは違って実際の物は、九九を使って簡単に数えられるものばかりではありません。例えば、縦に3個、横に14個並んだロッカーの数は、「3×14」となり、一見計算できないようにも見えます。しかし、「3×7+3×7」と見れば、九九を使って求めることができます。こうした「分けて計算して、後からたす考え」が、三年の「2桁のかけ算」につながります。
三学期はまとめの学期とはいったものの、2月には2月の学習内容があります。復習ばかりをしているわけにはいかないのが実情です。手間や時間をかけず、こまめに復習することが、積み残しをなくすポイントです。
イラスト/高橋正輝
『教育技術 小一小二』2021年2月号より