GW明けに困らない!「クラスの荒れ」防止策
ゴールデンウィークという長い連休が明け、落ち着かない子供たちの生活リズムを元に戻すために、学級経営や授業をどのように工夫すればよいのでしょうか。 神奈川県立総合教育センター指導主事・ 鈴木夏來先生に、ベテラン教師のアイディアを聞きました。GW明けの荒れ防止に必読です!
目次
「待ちの時間」のルールを浸透させる
先生が授業の準備をしている「待ちの時間」にするべきことをルール化しましょう。子供たちが自分で考えて行動できれば、クラスがバラバラになることを防げます。
例えば、国語の授業。子供たちが待っている間に音読をする習慣を付けさせます。まず、黒板に教科書の音読教材のページを広げてクリップ付きのマグネットで貼り出し、その近くに音読してほしいページを書きます。
先生は説明しなくても「〇〇ページを開くということだな」「音読するということだな」と分かります。
理解して音読を始めた子はきちんとほめましょう。何日間か繰り返していけば、ルールは自然と浸透していきます。
何もすることがない「待ちの時間」は、子供がだらけやすくなります。状況に合わせて、取り入れやすいルールをカスタマイズしましょう。
細かく係を決め子供を信頼して任せる
準備係、黒板係、宿題係、各教科の係などを決め、準備などを子供に任せることも、授業を円滑に進めて「荒れ」を防ぐ方法の一つです。まじめな先生ほど全てを自分でやろうとしがちですが、それは子供の活躍の機会を奪うことになりかねません。子供を信じて任せるということが重要です。
例えば、準備係。準備係は、次の授業で何を用意するかを授業の前に先生に確認し、黒板に「ふ」や「ノ」など、準備するものの頭文字を書きます。それを見れば、「次の授業では筆箱とノートを使う」ということが分かるため、ほかの子供たちも自分で準備を進めることができます。
また、宿題係の子供には、宿題を集めたら向きをそろえ、教卓や先生のデスクなどの決まった場所に置いておくまでを任せます。
係の子供が自分の仕事ができていない場合には、頭ごなしに叱ったり、小言を言ったりすることは避けましょう。「先生があなたにお願いしたことだからやってくれる?」など、信頼して任せていることを伝えると、子供は応えてくれます。
合わせて、係の補欠役も決めておきましょう。係の子供が休みの日や、係だけでするには大変な仕事を任せる際にもスムーズに運営できます。
学級経営が上手な先生のクラスでは、子供たち自身がクラスのために何ができるか、自ら考えて行動するようになります。子供たち自身の力で「自治」をするようになるのです。
姿勢を正して音読すると子供の心が落ち着く
「荒れている」クラスには、机に対して正面を向かずに横を向いていたり、椅子の上で膝を立てていたりする子供がいます。厳しく叱っても、一時的に姿勢を正すことにしかなりません。
子供の姿勢を整えたい場合は、全員で声をそろえて音読させると効果的です。国語の音読教材のページを開き、体を机のほうに向かせます。椅子には深く座らず、背筋を伸ばします。教科書は立てて、全員で声をそろえて音読させましょう。音読しているうちに自然と子供の姿勢が正しくなり、姿勢が正しくなると、心も落ち着いてきます。普段から「音読の姿勢をしよう」などと声をかけ、姿勢を正すルールを浸透させましょう。
学級経営が上手な先生と「一日学級担任交換体験」
学級経営の仕方の見直しをしたい場合は「学級担任交換」をしてみるのも一つの方法です。他のクラスを見て授業のやり方を勉強したい旨を校長や教頭、教務主任などに伝えて、相談してみましょう。
クラスを交換して学級経営が順調なクラスの授業を担当したり、学級経営が上手な先生に代打をお願いして授業の様子を見学したりする方法があります。他の先生が、どのようによい学級づくりをしているのかを見て参考にしましょう。
「なぜなぜ大前提」で子供に問いかける
子供にさせたいことや決められたルールについて、『なぜ、しなければならないのでしょう?』と問いかけてみるのもおすすめです。
例えば、給食の時間。机にテーブルクロスを敷かせたい場面で「机にテーブルクロスを敷きなさい」とは言わずに「なぜ、給食のときは机にテーブルクロスを敷かなければならないのでしょう?」と質問します。
理由や意義を子供たちに考えさせることで、テーブルクロスを敷くことへの反発からポイントをずらすのが目的です。子供は「食べ物がこぼれないようにするため」などと理由を考えて答えるので、すかさず「うーん。でも、お盆があるからテーブルクロスがなくても机にはこぼれないですよね?」などと反論しましょう。
すると、子供は次々にテーブルクロスを敷かなければならない理由を考えます。子供の意見に対して、ここはしつこいくらい反論しましょう。テーブルクロスを敷くことを前提に子供たちからいろいろな意見が出てきたら、成功です。
子供が机にテーブルクロスを敷かなければならない理由を見出しているようであれば、「なるほど。そういうことならば、先生も納得しましょう」と切り上げましょう。テーブルクロスを敷くことに対する反発が、なくなってくるはずです。
問いかけについては、先生自身が答えを知らなくても大丈夫。体育館で体育館履きに履き替える理由や、集会で先生の話を聞かなければならない理由など、さまざまな場面で使えます。
また、「なぜそんなに姿勢がいいの?」「どうしてそんなに字をきれいに書けるの?」など、「なぜ?」という言葉を使って子供をほめることも有効です。「なぜ?」という問いには明確な答えがなかったり、複数の答えがあったりしますが、その中でも子供は肯定的な理由をいくつも考えます。普通にほめられるより何倍も嬉しく、子供のモチベーションが上がります。
時間割のつくり方や宿題の出し方も重要!
時間割を毎週できるだけ固定することも大切です。毎週の時間割に変更が多いと、「心構え」ができないため、子供の負担になります。時間割の計画を立てる際は、他のクラスの先生と相談しながら、「月曜の1時間目はなるべく国語に」など、固定の時間をつくるように心がけましょう。毎週、曜日ごとにどんな授業があるか事前に分かることで、子供がリズムに乗りやすくなります。
また、宿題にも配慮が必要です。宿題の確認に30分や40分もかけて、子供と向き合う時間が減ってしまっては本末転倒です。まずは宿題の出し方を工夫して、確認を短時間で終わらせるようにしましょう。
「クラスの荒れ」への先生の心構え
・連休明けはふり返りのチャンス!
連休明けは、4月から取り組んできたことのふり返りをする時期と捉えましょ
う。授業での流れやルールを、子供がしっかり覚えて実行できているかを一つ一つ確認しながら授業を進めます。授業の流れやルールが曖昧になっている場合には、改めて確認し直します。頭ごなしに叱るのは避け、「このときはどうするルールだったっけ?」と問いかけます。
できていない子供に対しては、直接指摘せず、周りの子供に目配せするなどして注意するように促すと、反発を防げます。子供全員に「自分で考えさせる」ことを促せば、先生が毎回小言を言う必要もなくなります。
・連休明けのリズムの乱れを理解することが大切
生活リズムは、毎日の繰り返しの中で無意識につくられます。休日のリズムになってしまった体を、すぐに学校のリズムに戻すのは、大人でも難しいことです。
ですから、連休明けに子供たちに落ち着きがないのは当然。無意識の部分でうまくいかないところが出てきてしまうものなのです。連休明けは、子供が落ち着かない状態にあることを理解して指導に当たりましょう
・よくできた子をほめることから始める
クラスが「荒れている」状態になってきたとき、先生は、言うことを聞かない
子供にばかり注意をしたり、叱ったりしがちです。しかし、こういうときこそ、
ルールを守れている子供や、正しいことができている子供をほめることから始めましょう。
「荒れている」クラスにも、ひたむきに頑張っている子供は必ずいます。直接「えらいね」と伝えるのはもちろん、目配せをしたりうなずいたりして、先生がその子供をきちんと評価していることが周りにも伝わればOKです。
・ルーティンで先生が平常心を保つ
先生がイライラしていると、その空気が伝わり、子供の落ち着きもなくなりま
す。先生が平常心を保つためにおすすめなのが、ルーティンづくりです。
ルーティンとは、決まった一連の動作のこと。壁や椅子に順番に触れるなど、さまざまなパターンがあります。心の平静を保つのに効果抜群なので、自分に合ったルーティンをつくってみてください。先生自身が平常心を心がけると、結果として、クラスの「荒れ」防止にもつながります。
鈴木夏來(すずき・なつる) 神奈川県立総合教育センター指導主事。1974 年生まれ。公立小学校教諭、三浦市教育委員会教 育研究所指導主事、学校教育課主幹(指導主事)を経て、現職。モジュール学習やカード・カルタによる自主学習、ICT教育、ユニバーサルデザインなどを得意分野とする。趣味はオリジナル教材の開発。著書に『安心と安全を創る 教室インフラ』(中村堂)、『子どもの表現力を引き出す「想像画」指導のコツ』(ナツメ社) がある。
取材・文/浅海里奈・加藤隆太郎(カラビナ)
『教育技術 小三小四』 2019年5月号