特活で自尊感情を高め合い、ポジティブな学級をつくる

現在のコロナ禍の逆風の中、子どもたちの関係性を高め、学級づくりに力を発揮することが特活に期待されます。元文部科学省初等中等教育局視学官で特別活動のスペシャリスト、國學院大學教授・杉田洋先生が『特別活動で、日本の教育が変わる!: 特活力で、自己肯定感を高める』(小学館/共著・稲垣孝章)を上梓されたのを機に、今求められている特活のあり方についてお話を伺いました。

目次
コロナ禍で広がるネガティブな空気に負けない自尊感情を醸成する
―本書の中では、特活の意義や課題について語られています。コロナ禍のいま、学級づくりにどう特活を生かしていくとよいのでしょうか?
杉田 ネガティブな社会からは、ポジティブな自尊感情が育ちにくいのです。なぜなら日本の自尊感情は、自己有用感に裏付けられているのが特徴だからです。独りよがりの自尊感情とは違い、みんなから認められている、必要とされているなど、他者評価が得られることが重要です。
つまり、ポジティブな学級であれば、子供たちも自尊感情をもちやすくなるわけです。だからこそ特活は大事なのです。特活には正解がないため、さまざまな主張や発言をしても否定されることがありません。特活の活動を通し、学級の中に失敗しても許される環境や、友達の発言を後ろから支えるような風土をつくり、さらには発言した子が、自分が発言したことは無駄ではなく、他者にも学級にもなんらかの影響を与えることができたと実感できるようにしてあげてほしいと思っています。
「みんな仲良く」は実社会ではありえない…では、どうする
―指導する教師は、どのようなことを心掛けるべきでしょうか?
杉田 例えば、先生はよく「みんな仲良く協力し合いましょう」と言います。しかし、我々大人にも気の合わない人がいますよね。指導内容と現実の乖離があるわけです。本当は「気の合わない人もいる。でも何か一つみんなで達成するためには、その感情を越えて協力しないといけないよね」と教えるべきなのです。
そもそも実際に協働したことがない子供に「協働とは何か」ということを言葉で教え、子供が質問に答えられてもなんの意味もないのです。
一つの目標に向かって、みんなで何かをやり遂げることを体験的に学ばせるしかないのです。問題が起きた時には、大人が介入し解決したほうが早いでしょう。しかし、それではいつになっても子供たちは育ちません。子供を信頼し、任せることが大切です。最後の最後で自分たちでこれを解決できたという自信をもてたら、それは必ず世の中で使える能力になるはずです。