迷ったときは3段階で判断する! 管理職を支える「命・法・教育」という優先順位の思考技術【GKC|がんばれ教頭クラブ】
教頭・副校長以上になると、情報が十分にそろわないまま、短時間で判断することが求められる場面が急増します。判断材料が多岐にわたったり、これまでの経験則が当てはまらなかったりすることも多いです。そこで判断に必要な条件を優先順位づけして、自信をもってものごとを決めていけるようなアイデアをご提案したいと思います。

執筆/元山形県公立学校教頭・山田隆弘(ようだたかひろ)
目次
なぜ管理職の判断は迷いやすくなるのか。問題の構造を考えてみよう
もしもあなたが判断に迷ったとしても、それは個人の資質や経験不足によるものではありません。最大の要因は、教頭という立場そのものがそもそも迷いやすい構造をもっている点にあります。3つの観点から整理してみましょう。
(1)業務の性質が計画型ではなく割り込み型であること
教頭職の判断が難しくなる第1の理由は、業務の多くが割り込み型であることです。
担任時代の仕事は、授業や学級経営、教材研究など、ある程度見通しを立てながら進められる計画型の業務が中心でした。
しかし教頭職に就くと一変します。朝に立てた予定は、欠勤連絡、保護者からの電話、突発的な事故対応などによって、次々と変更を余儀なくされていきます。
(2)不確実な情報のまま判断を求められること
管理職が判断を迫られる物事というのは、大きな事案であることが多いです。そして、その事案が起こったという結論がまず来て、詳細については不確実であることがほとんどでしょう。
例えば児童が転倒し、けがをした。という事案が起こったとします。
- どこで起きたのか
- いつ起きたのか
- なぜ起きたのか
- どの程度のけがなのか
これらの原因は、ケースによって異なり、初動段階では不明確なことが多くあります。情報がすべてそろうまで待ってしまうと、危険が拡大する場面もあるのが学校現場です。
(3)複数の価値が同時に衝突する立場であること
そして、教頭の判断は常に、関係者たちの価値観の衝突の中に置かれます。
- 教職員は、労務の適正さや公平性を重視します
- 保護者は、説明責任や納得感を重視します
- 地域社会や教育委員会は、適正な運営と学校への信頼を重視します
これらはいずれも正当な価値ですが、すべてを同時に最大化できる判断とは限りません。ここで全員が納得する結論をめざしてしまったり、忖度をしてしまうと、判断や対応が遅れてしまうことが往々にしてあります。
「命・法・教育」の3つは並べない ~教頭の判断には順番がある~
よく「迷ったら命・法・教育で考えよ」と教えられます。みなさんもお聞きになったことがあるのではないかと思います。この3つを、行き来しながら結論を探す基準ではなく、優劣のはっきりした3つのチェックポイントとして考えてみましょう。
第1段階 命(安全) ~最初に確認すべき絶対条件~
第1に確認するのは、その事案が生命・身体の危険に関わるかどうかです。
- 外傷や疾病が発生または発生していないか? 今後発生する可能性はないか
- 心的外傷(不安やトラウマ)が発生していないか? 今後発生する可能性はないか
教育的にどうか、誰が悪いかなどは問いません。危険があるかどうかだけを切り出して判断します。この段階で危険が高いと判断される場合、他の要素が入り込む余地は全くありません。
第2段階 法(ルール) ~学校を守る防波堤~
命の安全を確認した次に行うのが、法令・ルールへの適合性の確認です。具体的には、
- 法令・条例
- 服務規程・就業規則
- 校内規程・ガイドライン
- 教育委員会の通知・方針
などに照らして、問題がないかを整理します。この段階で重要なのは、教育的に良いかどうかではなく、ルール上、許されるかどうかです。教頭が判断で揺らぎやすいのは、教育的配慮を優先するあまり、この法の確認を後回しにしてしまうときです。
第3段階 教育(学び) ~土台が整った後に調整する~
命が守られ、法の適合の正否を確認した上で、最後に検討するのが教育的な調整です。
- 学習機会をどう確保するか
- 教育活動をどう継続するか
- 児童生徒の最善の利益にかなっているか
ここで初めて、どう工夫するか、どう調整するかということになります。
教頭の判断が迷走する典型例は、考える順番が逆になってしまうことです。本来は優先順位を踏まえて判断すべきところを、目の前の目的や感情が先に立ってしまう場合があります。
例えば、行事を教育的に実施したいという思いが先行すると、
→ 暑さ対策や交通安全の確認が不十分になる
また、
保護者に早く納得してもらいたいという気持ちが先に立つと、
→ 個人情報や記録の適切な扱いが後回しになる
このような問題を残したままにしておくと、後になって、より大きな負担や責任となって返ってくることが少なくありません。
「命・法・教育」という順番を守り、整理して判断することで、
- 判断が安定する
- 説明が分かりやすくなる
- 結果として信頼を得やすくなる
ということにつながります。教頭に求められるのは、物事をうまく丸める技術ではないのです。
