“仮の本番”で磨き上げる、本実験・調査の完成度|中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑫

前回の記事では、個別実験・調査の計画ができたからといって、すぐに本番に進むのは少し危険で、“仮の本番”ともいえる「予備実験・調査」をしたい、といったことを述べました。今回、このことについて、もう少し考えてみましょう。
執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章
過去の記事はこちらから!
◆中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう①~考えを整理して、テーマを決める~
◆課題研究の実現可能性をチェックしよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう②
◆先行研究をチェックして、研究テーマにストーリーをもたせよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう③
◆研究テーマが決まったら、研究の道すじを考えよう─中・高等学校の【課題研究】はこう進めよう④
◆研究の「最終ゴール」を明確にしよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑤~
◆「やることリスト」を整理して、研究の全体像をつかもう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑥~
◆個別実験・調査項目の中身を具体化しよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑦~
◆「個別ゴールに届いたといえる事象」を考えてみよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑧~
◆「どうすればできる?」の見通しをつかむ~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑨~
◆「どうすればできるか」を具体化する~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑩~
◆本番の成功は予備実験・調査にかかっている|中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑪
目次
“仮の本番”だからこそ見えてくるもの
どれだけ入念に準備したつもりでも、実際にやってみると、ほぼ必ず
●作業上の改善点
●条件上の改善点
が見えてきます。
前回も触れたように、予備実験・調査は「練習」というより“仮の本番”。実際にやってみることで、計画段階では気づきにくい弱点や見落としが浮かび上がります。本実験・調査を“ぶっつけで実施しないための、安全網”ともいえる工程です。
見えてくるさまざまな改善点
まず明らかになりやすいのは、作業手順そのものの改善ポイントです。たとえば、生徒が「食品包装に使われるフィルムの伸びやすさ」を測る個別実験をするとします。予備実験をしてみると、「フィルムの形状やつかむ方法が毎回わずかに異なり、伸び方にばらつきが出る」「測定器具が不安定で、少し触れるだけで値が揺れる」といった問題が起きるかもしれません。この場合、「フィルムの形状や保持方法を明確に規定する」「治具を使ってフィルムを固定する」などの改善が必要です。ポイントは、前回記事でも強調した「いかに安定、かつ精度の高い方法で信頼性の高いデータを取得するか」という視点です。
また、作業面だけでなく、設定した条件自体に無理があることもあります。条件が適切でなければ、たとえ信頼性の高いデータが得られても、意味ある考察につながりません。つまり、「条件の最適化」もまた、予備実験で行うべき重要な検証項目です。
さらに、これらすべての前提として欠かせないのが安全性(作業環境・手順)の確認です。予備実験は、こうした作業改善・条件改善・安全性の三つを同時に点検するための場といえるでしょう。
