卒業文集は手書きで制作期間は1~2か月が多数!【みん教総研アンケート】〈126人の声が集まりました〉
卒業文集の原稿は手書き? 外部に委託? 制作費用はどのぐらい?「みん教総研アンケート」で行った「卒業文集」に関する126人のリアルをご紹介します。先生方の率直な回答内容から6年間の集大成に込めた文集づくりへの切実な想いが伝わってきました。
【調査概要】
■調査期間:2025年10月30日~11月17日
■調査機関:自社調査。Webメディア「みんなの教育技術」でのアンケート調査
■有効回答数:126人
目次
最も多いのが2~4回、約9割の先生が2回以上は卒業文集を制作
Q.これまでに何回卒業文集を制作しましたか?(担任、学年担当、委員会などを含む)
初めに質問したのが卒業文集の制作回数。約9割の先生が2回以上、そのうち約4割が5回以上の制作経験があるということが分かりました。
「先生からのメッセージ」が1位。次いで「六年間の思い出」や「将来の夢」
卒業文集にはどのような企画を設定しましたか?(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
最も気になる「卒業文集のテーマ」では「先生方からのメッセージ」が115人、次に「六年間の思い出」(105人)、「将来の夢」(103人)と続きました。逆に子どもたちから贈る「先生への一言」(28人)も少数派ながら挙がりました。その他では、「先生のダジャレで心に残っているもの」というテーマも。
〈その他の回答より〉
・委員会紹介
・プロフィール
・自己紹介(好きなもの、座右の銘、もしも〇〇だったら、10年後の私)
・先生のダジャレで心に残っているもの
卒業文集によって6年間の思い出を共有し、自己表現する力が身に付くと回答
卒業文集を通して、児童にどのような力が育つと思いますか? (複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
卒業文集づくりは自己表現力や文章力といった技能面よりも、子ども同士の「思い出の共有」につながると多くの先生が考えているようです。だからこそ、児童主導で卒業文集づくりを大切にしてほしいという先生の想いが伝わってきます。
〈その他の回答より〉
・メタ認知
・後に残るものを書いてよいことかどうか判断する力
・6年間の思い出を残す
「重要だと思う」「それほど重要でもない」の二極化
卒業文集は学校文化としてどの程度重要だと思いますか?

この問いに対しては「やや重要」「あまり重要ではない」に二極化した傾向が見られます。卒業文集は学校行事の一環として、必ず作成したほうがよいと考えている先生方が全体の約1割にとどまりました。
手書きによる作成が圧倒的
卒業文集はどのような形態で作っていますか?(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にお書きください

卒業文集は手書き原稿が多数を占めていました。その人らしさが個性として文字に出るため、後になって読み返したときにも特別感のあるものになりますよね。その他の回答と照らし合わせても、パソコンや業者を利用していても、子どもによる手書きページを設けているところが多いようです。
【その他】の回答より
- 子どもは手書き、職員はPCで作っている
- 業者の卒業アルバム制作の後半ページに児童による手書きページを設けた
- schoolTakt(スクールタクト)
- ロイロノート・スクール
- Pages(ページズ)
- 一太郎
制作期間は1~2か月という回答が6割強
制作期間はどのくらいですか?

先生方の約6割が制作期間は1~2か月と回答しています。逆算して、12月のこの時期から卒業式に向けて文集づくりがスタートするようです。その他の回答では、6か月もの期間を制作に充てるという声もありました。
文集づくりのピークは12月!
特に忙しくなる時期はいつですか?(複数回答可)
この記事を読んでくださっている、今まさにこの時期が文集づくりのピークを迎えている先生方が多いようです。企画段階で時間を費やすのか、またはじっくり時間をかけて制作に取り組むのか、それぞれ力点を置いているところも少しずつ異なっていることがうかがえます。
最も大変なのは、子どもたち全員の原稿を回収すること
制作でいちばん大変だと感じる工程はどれですか?
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
この問いでは、子どもたちから原稿を集めるという作業工程がいちばん大変という声が多く挙がりました。さらに、その原稿を校正し、不備があれば子どもに修正させる、そして保護者への確認と、いくつものステップを踏まざるを得ないことに苦労しているようです。このほか、掲載写真に偏りがないか、見栄えをよくするためのレイアウト作業にも注力していることが分かります。
【その他】の回答より
- 文章添削、印刷(学校で印刷したため)
- 不適切な表現がないかのチェック、保護者の同意
- 写真選び
- 個人ページにおける保護者の内容確認。前任校では昨年からクラスのページのみで個人原稿を廃止した。
- 原稿の校正。特に子どもに字を修正させること
- 子どもの文章の推敲。「恥ずかしくない」字面ゆえの書き直し
- 子どもたちの掲載写真に偏りがないか、掲載枚数をカウントすることが大変。最近ではその作業を業者に依頼するようになった。
主だった要望は写真のページ追加やアップデート化
保護者や児童から要望されることはありますか?(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
写真ページの追加やアップデート化を望む声はあるものの、この回答数からは絶対的要素というわけではないことがうかがえます。逆を言えば、制作過程において児童や保護者の要望がしっかり取り入れられているということにつながります。
- 金額を下げること
- 不登校児童の対応
- 特に要望はなかった
卒業文集のみとアルバム一体型とでは費用に大きな幅が
1冊あたりの制作費用はどのくらいですか?
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその金額をお書きください。
卒業文集単体では、校内で印刷のため費用ゼロという学校がある一方、1万円以上かかっているというところもありました。しかし、卒業アルバムとセットで発注のため、文集のみの費用は不明というケースも。合作型では1~2万円と高額な費用がかかっているようです。
【その他】の回答より
- 卒業アルバムと合体しているので、文集単体では分かりません
- 卒業アルバム後半にセットになるため5000円から10000円の間の費用がかかる
- 学校で冊子印刷なのでなし
- 卒業アルバムとの合作で10000円
- 卒業アルバムと合体型で16000円
- 印刷、帳合まで行い、製本のみ印刷所へ依頼しています。3学級各クラス15000円
- 卒業アルバムと一体で業者発注のため不明
- 校内の紙を使用して制作。製本も手作り。教材費として学年で購入した用紙を使用
- アルバムと合本で20000円
- 11000円
- 8500円
- 15000円
- 卒業アルバムの費用に含まれているため分からない
アルバムと一体型のパターンも多く、徴収額は10000円を超えるケースも
保護者からの徴収額はどのくらいですか?(概算で構いません)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください(徴収なし・学級費で対応、など)
1500円以下は約2割、徴収なしと回答したのは約1割でした。卒業アルバムと合作型というパターンでもその費用は保護者が全額負担のようですが、積立金から支出しているため、文集のためだけに別途徴収はしていないという声もありました。
【その他】の回答より
- 卒業アルバムが高額化しており、文集は自校印刷か作成しない
- 文集のみでは徴収なし
- 卒業アルバムと合作型の費用5000円~10000円を保護者全額負担
- 15000円
- 学級費で対応するため徴収なし
- 保護者からの卒業準備金(積立金)より支出
- アルバムと併せて20000円弱
- 6000円くらい
- 卒アルとセットで8700円くらい
- 積立費で対応
- 12000円
「ある派」約6割、「ない派」約4割
卒業文集制作を外部委託したことはありますか?
「ある」が約6割、「ない」が約4割という結果になりました。卒業文集の制作には時間や手間がかかるため外注することは珍しくありませんが、4割近くが自校で制作している点を考慮すると、制作経験の有無や、学校・地域で差があるということがうかがえます。
「ない派」は費用が最大のハードルに!
外部委託しない理由があれば教えてください(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
外部委託を利用しない最多の理由が「費用が高い」という結果になりました。次いで、校内制作が慣例化しているからという結果に。このほか、外部委託の認知度が低いため選択肢になかったという声も多くありました。なかには、決定権が学校になく利用できないというケースも。
【その他】の回答より
- 外部委託を考えたこともなかった
- 締め切りが早い
- 子どもの文章添削に時間がかかる
- それじゃない感が出る
- どこに外部委託できるのか分からない
- 学校としてその選択をさせてもらえない
- 外部委託ができることを知らなかった
- 外部委託という選択肢がない
- やったことがない。そのような話が出たことがない
約7割の人がプロの仕上がりに満足
外部委託した場合の満足度は?
「やや満足」も含めると、仕上がりに満足しているのは設問に回答した人全体の約7割になります。手間や時間が省略され、プロの仕上がりに納得されている方が多いのが分かります。
費用対効果という点で不満という声が最多
前問で「不満」と答えた方にうかがいます。その理由を教えてください。(複数回答可)
反対に外部委託に不満のある回答理由で最多が「費用に見合わない」と、サービスとコストパフォーマンスに対して十分ではないと考えているようです。このほか、編集作業の仕上がりが期待値を下回っていたことや、校内での意思決定プロセスに負担があったことなどが挙げられました。その他の意見では、「外部委託といっても、校正や編集は教員が行うので、そんなに楽ではない」という声も。
モノとして残る「冊子形式」の価値を認めつつも、デジタルの利便性を享受したいという声が多数
卒業文集の形式と、今後の活用について教えてください。
現在どのような形式で作っており、今後どのような方法を取り入れたいと思いますか?(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。
この回答からも分かるように、卒業文集の主流は圧倒的に「冊子形式」であり、形として手元に残すことに価値があるという意見が根強いようです。一方、「冊子形式を継続したい」(44人)が最多でありながら、今後は「デジタル化」「効率化」に強い関心を持つ層が多いこともうかがえます。
【その他】の回答より
- 今年からなくなりました
- できることなら廃止したい
- 犯罪者の過去の作品で報道されることがあるのを考えると、作らなくてもよいのではないかと考える
- 現在の勤務校では作っていない
- 本当は業者に製本を委託できる文集つきの卒業アルバムにしたい。児童数減少により価格が高騰しアルバムの業者委託が難しくなったため仕方なく手作り冊子を作っている。効率化したい
- 必要ない
外部サービスを利用する上で最も重視するのは「費用」
今後、外部サービスやICTツールを利用する場合、重視する条件は何ですか?(複数回答可)
※「その他」を選ばれた方は、具体的にその内容をお書きください。

効率化をはかるにあたり、重視する点で最も多かったのが「費用」。次いで「操作の簡単さ」「セキュリティ」という結果でした。毎年継続させるためにも、費用対効果のある外部サービスやICTツールの選択には慎重なようです。
【その他】の回答より
- 制作過程を「授業」としてどう活用するか
- 文章の校正
- 担任や学校が一切関わらなくてよいこと。学校側の費用負担がないこと
- 学校の意図をくむ力
- 永年利用可能
顔認証のAI技術やグラフィックデザインソフトなどで効率化
卒業文集制作の際、役立ったサービス、ソフトウェアやアプリ、商品等があれば具体的に教えてください(自由記述)
- クラスのランキングは子どもがGoogleフォームでアンケートを取り、Canvaで作成した。教員は事前の準備がなくて楽だった
- Adobe イラストレーター
- Canvaで制作し、ロイロノートで提出
- 私の地域では、卒業アルバムに卒業文集を含めて作成しています そのため、原稿さえ用意すればいいです
- アルバムスクラム
- ロイロノートで国語科の内容を貼り付けた。 特別に時間を設定したわけではないので、お手軽だった
- ワード、教育技術などのシート
- 私は数年前、ワードで書かせて校正を自分で行ったが、まだ、手書きのほうが味があるという方もいる。 難しいと感じる
顔認証AIが児童の登場回数を自動でカウントし、掲載枚数の少ない児童の写真を探し出す「アルバムスクラム」はアルバム制作に便利なサービスのようです。ほかにも、グラフィックデザインソフトの「Canva」を使って制作している声もありました。
サポートしてほしいのは「文章校正」「写真の選定」
今後の文集づくりに関して人手によるサポートがほしい部分、改善したい点や希望はありますか?(自由記述)
- 本来学校のカリキュラムの中に位置づける必要があると思う。つまり、つけたい力を明確にして、どの教科の中で学習するかということである。この場合は、国語科で、「書く」内容として、指導要領:B 書くこと 目的や意図に応じて、感じたことや考えたことなどから書くことを選び、伝えたいことを明確にしている。(1)ア となるであろう。このように考えれば、授業内で5〜6時間などの設定をした上で、できるようにする必要がある
- 写真を選ぶのが大変。誰が何回写っているか、数え続ける作業がむなしくなる。子供が自分で選んで、自分オリジナルのアルバム、文集を作ってほしいが、費用がとてもかかると聞く
- 6年間の思い出として学年ごとの写真のページがあり、その写真を選ぶのに相当な時間がかかる
- このアンケートで想定されていそうなICTを活用した具体的な例を多く知りたい
- 自分たち(実行委員)で作成するような形。 探究活動の一つとして、一人一冊ずつ自分オリジナルの卒アルができたらいいな、と思う。 例えば、個人写真はみんな同じだけど、クラスページの見開きは自分だけで選んで作るなど個人的には、写真屋さんとの協力や個人持ちのデータを合わせて、入学からの写真もあってもすてきだなと思います
- 子どもの原稿指導と校正
- 特別支援学級の子どもの作文指導が非常に大変。ただ、あまりにも通常の学級の子どもと違う形式になるのはかわいそうなので、うまいやり方を考えたい
- かつては印刷が大変でしたが、いまは、スクールサポートスタッフにお願いできる予定なので、校内での印刷、帳合を選択しました
- 保護者が自由に写真を選んで自分の子どもだけのマイアルバムを作れるとよい! 担任が写真を選ぶ必要はない気がする
- ロイロノートで制作できるようにしたい
- 文章の添削。誤字脱字の確認
- 写真選び。何回写っているか、全員写っているか、転出入した子はどうするかなど、とても気を遣う上、膨大な時間と手間を要する。外部サービスでは自動検索のような機能もあるそうだが、小さく写っているものも大きく写っているものも「1」とカウントされるため、業者も勧めない。購入者が写真を選べるシステムになったらいいと思う
サポートしてほしい部分では「原稿の校正」「写真の選定」が多く挙がりました。前述した「アルバムスクラム」を活用する以外にも、スクールサポートスタッフや保護者の方の協力を仰ぎたいという声もありました。
ほかにもこんな要望や意見がありました
- 本年度は、6年担任をしているので、どうしても書けない児童を対象に、学習初期段階で、半構造化インタビューをして、それを基に、生成AIで下書きを書いてもらう予定をしています。その後、児童が加筆修正をして、自分の文章に仕上げていく方法を採ろうと思います。どのようになるのか楽しみです
- 卒業アルバムも文集も、大変な仕事。なくなると楽にはなるが、子どものことを考えると思い出がなくなるのはかわいそう。本当にやってくれる人がほしい
- 各学校で簡単に卒業文集作成に必要なシートを開発し、無料で手軽に利用できるよう情報発信していただきたい
- 今、まさに卒アルをどのようにするかを6年生の担任団で話をしていました。 子どもたちの気持ちを大切にしつつ、保護者や先生方の働き方も考えていかなければならないと思います。なにがいいかは分かりませんが、やはり6年間の集大成としての国語の文章力、子どもたちの協働作業(クラスページ)、どれをとっても成長あるものだと思います。 6年生の担任が遅くまでチェックを繰り返してできる1冊なので大切なものです。個人的には進化をしつつ残していきたいものの一つかと思います
- 日々の作文指導がだんだん少なくなり、また、毎日や毎週の日記宿題を出す先生が少なくなっていることで、長い文を書くことが苦手な児童が増えているように思います。卒業文集用の作文を昔の児童は普通に書いていましたが、現在は作文用紙一枚の作文が書けない児童が増えています。文集を作るために横に付いて何を書くか、どう書くかを指導する必要があり、その時間が先生の負担になっていくと思います。教師の働き方改革も言われる現在。卒業文集は未来的になくなっていくように感じます
- 自分の教え子たちは、文章を書いたが、自分の子どもはかなり簡易的になった。 もはや、文集の手間は国語の時間でできる範囲にしたい
- 子どもの人数が減ってきており制作費用を抑えないと作成できない。制作費用を抑えるために写真を選ぶなど教員の負担が増えている。どうしたらいいか悩む
- 文集を作らなければいけないという時代でもない。個人情報にやかましくなった昨今では後になって悪用されることもありがち。アルバムの後ろにつける学校の行事特集ぐらいでちょうどいい。負担を減らす方向へ向かうべき
いかがでしたか。卒業文集はアルバムとセットで制作するところもあり、「思い出を大切にしたい」という思いがある一方、「教員の負担」という現実的な問題にも直面していて、継続させるためには制作体制への変革が急務である、という声が多く挙がりました。負担軽減のためにも外部サービスやICT活用による効率化が強く望まれます。
成長や思い出の集大成である1冊ですが、文章力の低下による完成度の低さも指摘されていて、その指導における負担増も否めません。
廃止希望という意見が多くあるなか、「働き方改革で作成しない教師も出てきたが、小学校の集大成として、子どもたちにぜひ主体的に取り組ませたい」と願う教師も一定数存在しており、文集づくりを今後も継続していくためにも、教員の負担解消が最優先の課題であることが今回のアンケート結果から推察されます。
今後も「みん教総研」のアンケートを通じて、教員のQOLを高めるための施策を様々な角度から考えていきたいと思います。
文/みんなの教育技術編集部














