ネットいじめ、個人情報流出…表面化しづらいデジタルの問題にそなえよう
保護者クレーム対応の実践スキル 危機を絆に変える技術⑫

デジタル技術の普及により、子どもたちの生活環境は大きく変化しました。スマートフォンやタブレット、SNSが身近になった一方で、ネット上でのいじめや誹謗中傷、個人情報の拡散といった新たな問題も発生しています。これらのデジタル時代特有のトラブルは、従来のいじめ対応とは異なる専門的な知識と対応技術を必要とします。今回はデジタルのトラブルに対する効果的な対応方法について詳しく解説していきます。技術的な対策から保護者との連携まで、包括的なアプローチをお伝えしていきます。
執筆/一般社団法人日本未来教育研究機構 代表理事・熱海康太
目次
ネット上のいじめの特殊性と深刻さ
ネット上のいじめは、従来の対面でのいじめと比較していくつかの特殊な特徴を持っています。まず、匿名性の高さがあります。SNSやメッセージアプリでは、偽名やアカウントの使い分けにより、加害者の特定が困難な場合があります。この匿名性により、普段は大人しい子どもでも攻撃的な行動を取りやすくなる傾向があります。
次に、24時間継続性があります。学校を離れても、家庭にいてもネット上でのいじめは続くため、被害児童(被害生徒)は逃げ場を失ってしまいます。従来のいじめでは家庭が安全な場所でしたが、ネットいじめでは家庭にいても被害を受け続ける可能性があります。
また、拡散性と永続性も深刻な問題です。悪口や恥ずかしい写真などがインターネット上に投稿されると、瞬時に大勢の人に拡散され、長期間残り続ける可能性があります。一度拡散された情報の完全な削除は極めて困難で、被害児童の心理的ダメージは長期間継続します。
さらに、大人の目が届きにくいという特徴もあります。子どもたちのスマートフォンやタブレット内で行われるやり取りは、教師や保護者が把握することが困難で、問題の発見が遅れがちになります。
多様なネットトラブルへの理解
現代のネットトラブルは多岐にわたります。LINE外しと呼ばれる、グループチャットから特定の子どもを除外する行為や、SNSでの無視、悪口の投稿、恥ずかしい写真の無断掲載などがあります。また、なりすましアカウントによる嫌がらせや、個人情報の無断公開なども深刻な問題となっています。
オンラインゲーム内でのいじめも増加しています。ゲーム内チャットでの悪口や、意図的な妨害行為、仲間外れなどが行われ、ゲームを通じた友人関係が現実世界のいじめに発展する場合もあります。
また、写真や動画の無断撮影・拡散も重要な問題です。更衣室や体育の授業中などの写真を無断で撮影し、SNSに投稿するといった行為は、プライバシーの侵害だけでなく、被害児童の尊厳を深く傷つけます。
被害児童へのきめ細かい配慮
ネットいじめの被害を受けた児童への対応では、従来のいじめ以上にきめ細かい配慮が必要です。まず、被害児童の心理状態の詳細な把握が重要です。ネットいじめでは、家庭でも安心できないため、不眠や食欲不振、学習意欲の低下などの症状が現れやすくなります。
緊急連絡先の確保も重要です。夜間や休日でも連絡が取れる体制を整え、被害児童や保護者がいつでも相談できる環境を提供します。また、毎日の面談や定期的な状況確認により、被害児童の心理状態の変化を注意深く観察します。
学習環境の調整も考慮します。ネットいじめにより学習に集中できない場合は、別室での学習機会の提供や、宿題の調整などの配慮を行います。また、友人関係の再構築についても、慎重にサポートすることが重要です。

加害者特定の困難性と対応策
ネットいじめでは、加害者の特定が極めて困難な場合があります。匿名アカウントや、なりすましアカウントが使用されている場合、通常の学校内調査では限界があります。このような場合は、専門機関との連携が不可欠になります。
警察のサイバー犯罪対策部署や、法務局の人権擁護部などとの連携により、技術的な調査を依頼することができます。ただし、これらの調査には時間がかかるため、被害児童の保護を最優先に、並行して他の対策を実施することが重要です。
バナーイラスト/futaba(イラストメーカーズ)

著者:熱海康太(あつみこうた)
一般社団法人日本未来教育研究機構 代表理事
大学卒業後、神奈川県内の公立学校、私立学校で教鞭を取る。
大手進学塾の教育研究所を経て、現職。
10冊以上の教育書を執筆し、全国10,000人以上の先生方に講演を行うなど、幅広く活動している。
