小学算数「構造的板書」の工夫とコツ(角柱と円柱/かわり方)
スッキリした分かりやすい構成で、子どもたちに伝わりやすい板書の書き方を目指す本シリーズ。今回は「角柱と円柱」「かわり方」の単元を使って、図形を分類し、子供たちが数学的な見方・考え方を働かせるようにするためのスキルと、板書計画について樋口万太郎先生(京都教育大学附属桃山小学校教諭)に解説していただきます。
目次
算数スキル1:シンキングツール「○チャート」
シンキングツールにYチャート、Xチャート、Wチャートというのがあります。以前、こちらの国語の記事でも登場しました。算数でも、本時のように数多くの図形を分類するときに使用することが有効です。
分類するためには視点が必要になります。図形であれば、辺や角、四角形や三角形などで構成されるといった構成要素が視点になります。これは数学的な見方・考え方でいう数学的な見方にあたります。子供たちが数学的な見方・考え方を働かせるために、教師のほうで分類していくための視点を提示するのではなく、自分たちで作らせていきましょう。既習をもとに子供たちは考えることができるものです。
こういったチャートを使うときに気をつけたいことがあります。それは、どのチャートを使用するのかを子供たちに選択させたいということです。Iチャート(これはまっすぐ縦に線を引いたもの)を最初から渡すと2つに、Yチャートを最初から渡すと3つに、Xチャートを最初から渡すと4つに、Wチャートを最初から渡すと5つに分類すればいいと暗黙の了解が起こります。それでは見方・考え方が狭められてしまいます。だから、「何種類でできそう?」と子供たちに投げかけみんなで考えてから渡したり、本実践のように何も言わずに用紙を自分たちで選択させたりすることが有効です。
「角柱と円柱」
授業の流れ
① 7つの図形を提示する。
できれば、子供たちの手元に7種類の図形の紙があるようにする(7枚の図形が描かれた1枚の紙から子供たちに切らせればよい)。
② 7つの図形を分類するという問題を知り、実際に取り組む。
このときIチャート、Yチャート、Xチャート、Wチャートが書かれたプリントを用意しておき、どれかを選択させ、そのプリント上に①で切った図形を置きながら考える。また、どのように分類したのか理由を書かせておく。
③ 全体でどのように分類したのかを交流する(球をどう扱うかで子供は迷う)。
④ ③で子供が言った言葉を算数用語に置き換えていく(上の面や下の面は底面、サイドは側面と言ったように)。
⑤ 三角柱や四角柱や円柱といったことを知る(教科書を使い、確認する)。
⑥ 角柱の面、頂点、辺などを表でまとめる(教科書に掲載されている表を使う)。
算数スキル2:板書計画を書こう
今年も多くの学校や研究会で授業をさせていただきました。そのときに、「よく、すぐに(構造的)板書を書けますよね」と言われることがありますが、書けるには理由があります。それは、事前に「板書計画を書いている」からです。人によっては、板書計画を書かなくても書けると言われる方もいますが、私には無理です。ただ、板書計画をしたからといって、板書計画通りに進めようとは思いません。
よく「授業は生き物だ」と言われることがありますが、子供たちから出てくる考え方の順は、事前に考えていたのと異なる場合もあります。予想していない考え方が出てくることもあります。そういったことに対応するために、板書をしながら、子供たちの考えを整理すると共に、自分自身の頭の中の整理をしています。板書計画通りにいったときには、教師主導で授業を進め過ぎたと思うぐらいです。
下に載せているのが、私がいつも書いている板書計画です。板書計画の下の部分には、授業の流れ、発問を書いています。板書計画を書きながら、私の場合は授業づくりをしています。
「かわり方」
授業の流れ
① 問題提示
② 1cm、2cmの場合について考え、表の書き方、求め方などを確認する。
③ 3.6cmの場合を考える。
④ 横の長さが○cm、面積が△c㎡とした時にどのような式になるのかを考える。
⑤ 変わり方について考え、比例を確認する。
⑥ たての長さが20cmの時も同じことが言えるのかを考える。
『小五教育技術』2019年2/3月号より