「自分の強み」を生かして教師として働く
連載|ayaya先生のすてきやん通信
板書や折り紙のアイデア、日々の仕事の葛藤と喜びを本音で綴るInstagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による連載。第二回めの今回は、「自分の強み」についてのお話です。ayaya先生と一緒に、自分自身について少し振り返ってみませんか?
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
初任者のころは…
「教師として、あなたの強みは何ですか?」
初任者のころにこう聞かれていたら、「体力とコミュニケーション力です」と答えたと思います。
強みを考えるというのは、自分の特長を認識するということ。自分自身を客観視することは、教師を続けていく上でとても重要になります。なぜなら、教師としての自分の軸をもったり、学級経営に生かすことにつながるからです。
そして個人としての「強み」は、自分が「これまでどう生きてきたか」ということと大きく関わってきます。
私の場合、就学前から水泳や柔道などのスポーツを習い、学校まで50分の道のりを歩いていたことや、小学校から大学までバレーボール部で仲間と汗を流したことで、おのずと体力やコミュニケーション力が身についていったのだと思います。
このような私の強みは、担任として、教師として、どう生かされたのでしょうか。
初任でもった2年生。
休み時間は子供と一緒によく外で遊びました。仕事が終わらなくて、21時、22時になっても最後までやり切りました。体力に自信があるからこそできたことです。
保護者の方には初任ということで不安な思いをさせただろうと思います。その不安を少しでも減らせるように、何か気になることがあると家庭訪問をしたり、まめに電話をかけたりして、コミュニケーションを積極的にとるようにしていました。
子供や保護者とつながり信頼される教師になるために、自分のもつ強みを十分に生かすことを意識しながら働いてきました。
「自分の強み」はだれかと比べるものではなく、自分を見つめ直すことで見えてくるものです。
自分はこういうことが好きだ、得意だ。自分はこういう性格だ。
このように自分をメタ認知することが大切なのだと思います。
今の私の「強み」と言えるもの
知識も経験も増えた教職13年目の今、改めて自分の強みについて考えてみました。
今の私にとっての強みは次の4つです。
①国語の授業
②ものづくり
③臨機応変な対応力
④寛容であること
初任のころと比べれば、随分変わりました。
強みと言えるものは増え、これらは学級づくりや働き方に生かされています。
「国語の授業」
遊んでくれる楽しい先生よりも、授業時間を楽しいものにしてくれる、授業力がある先生になりたいといつの頃からか思うようになりました。
国語の授業を重点的に研究するようになって11年。どっぷり国語にはまってからは7年。子供たちが笑顔になるにはどうしたらいいか、いつも考えながら授業をしています。
「ものづくり」
小さいことから手先が器用だった私は、折り紙や色ぬり、工作などが得意でした。
書店の教育書コーナーをながめていたある日、幼稚園コーナーに折り紙の本がたくさんあることに気づきました。手に取ってみると、どれもとてもかわいい。折り紙でつくったものを壁面に飾っている写真もありました。
「そうか、折り紙は学級掲示になるんだ」
それから、折り紙を通して、子供たちがつながることのできる創作をするようになりました。子供たちは折り紙を通して、協働することを自然と学び、教室が穏やかな雰囲気に包まれます。今では、とても大切な学級づくりの活動の一つとなりました。
「臨機応変な対応力」
教師には咄嗟の判断が随所で求められます。判断を誤れば、子供たちや保護者の混乱を招いたり、学年・学校運営に支障をきたす可能性もあります。
日々いろいろなことが起きる中で、いつも私は「どう活動すればスムーズにできるか、無駄はないか、分かりやすいか、迷惑になることはないか」ということを、活動する人や関係する人の立場に立って考えるようになりました。そして、判断をできるだけその場で共有するようにしています。
「寛容であること」
初任者のころは、毅然とトラブルの指導をしている先生、忘れ物指導を徹底している先生、宿題の漢字学習を丁寧に赤ペンで添削している先生に憧れていました。厳しい表情と口調で指導する姿や、放課後の職員室で一生懸命に添削する姿は、立派に見えて、目立つ姿だったのかもしれません。
しかし、時間とともに、子供と信頼関係を築けているかどうかというのが、効果的な指導をするためには重要なのだと学んでいきました。
そして、大切なのは「厳しくすること」ではなく、「寛容であること」かもしれない、と思うようになったのです。
宿題を頻繁に忘れてしまう子に向かって、「なんで持ってこないの!」と叱るより、「次にもってくるためにどうすればいい?」「何か困っていることある?」と聞く方が難しい。
でも、子供の立場に立って考えられる教師になりたいと思い、「寛容」を意識し続けました。
ただ甘やかすこととは違います。何でも許すわけではありません。
相手の背景を知ろうとしたり、努力を認めたりして、力を伸ばそうとする気持ちが、「寛容であること」につながるのではないかと思っています。
そしてやがて、自分に対しても、寛容であろうと思えるようにもなっていきました。失敗することもある、忘れてしまうこともある。それでもいい。また頑張ればいいやん、と思える自分になっていたのです。
また、何年か経てば、別の強みを獲得できていれば嬉しいです。
「みなさんの教師としての強みは、何ですか?」
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。