「どうすればできる?」の見通しをつかむ~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑨~


前回は、「個別ゴールに至るには何ができればよいのか(何が確認できれば個別ゴールに届いたといえるか)」を考える視点について述べました。今回はもう一歩進んで、「そのためには、どうすればよい?」と方法の側面から自問してみたいと思います。どんな実験や調査を行えばいいかを検討し、それが実現できそうかといったことまでを大きく見通す段階です。
執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章
【連載】探究のすすめ方 ~方法論編~ <中学校・高等学校>
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◆中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう①~考えを整理して、テーマを決める~
◆課題研究の実現可能性をチェックしよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう②
◆先行研究をチェックして、研究テーマにストーリーをもたせよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう③
◆研究テーマが決まったら、研究の道すじを考えよう─中・高等学校の【課題研究】はこう進めよう④
◆研究の「最終ゴール」を明確にしよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑤~
◆「やることリスト」を整理して、研究の全体像をつかもう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑥~
◆個別実験・調査項目の中身を具体化しよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑦~
◆「個別ゴールに届いたといえる事象」を考えてみよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑧~
目次
方法を考えることの意味
研究においては、最終ゴールに到達するまでに、いくつもの個別ゴールが登場します。個別ゴールの達成は、「この事象が確認できればよい」という基準が目安となります。では実際にその事象を確認するにはどうすればいいのでしょうか。
ここで必要になるのが、方法を検討する作業です。例えば「ある森の中における多様な鳥のさえずりの時間的分布を解明する」という最終ゴールを設定した場合、その途中の個別ゴールとして「ある特定の鳥に関するさえずり状況を把握する」というものを設定したとします。このとき、「時間帯ごとのさえずり回数が分かれば個別ゴールに届いた」といえるわけですが、それを調べる方法はどうすればよいでしょうか。ここでは、実際に森の中で観察し、時間を区切って鳥の声を数えればよいでしょう。こうして「森の中で鳥の鳴き声を計測し、時間帯ごとの変化を把握できれば個別ゴールに届く」という筋道がはっきりすれば、いよいよ実行していく見通しがつかめたといえます。
こうした例のように非常にシンプルなものもあれば、一方で、文献調査などを通じて過去の研究を調べながら方法を検討しなければならない場合もあるでしょう。いずれにしても、方法を検討し、それが実現できそうかといったことまでを大きく見通すことが、次のステップへの大事な足がかりになります。

すでに明らかにされていた場合
もし方法を模索する中で文献調査をしているうちに、自分たちが求めている事象をすでに明らかにしている先行研究を見つけてしまったらどうでしょう。「やられてしまった!」と思うかもしれませんが、研究を続けることは十分可能です。同じテーマでも、別の方法でアプローチすればオリジナリティは確保できますし、場合によっては先行研究を引用して一気に研究を前に進めるという選択もあります。そういう意味では、方法の検討は、「研究の戦略」にもつながる作業といえます。