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いま保健室が大変! 逼迫する業務問題の原因と対策を考え、管理職が主導して学校全体で取り組もう!

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

いま、保健室の業務の逼迫に悩んでいる学校が非常に多いのではないでしょうか。
ほとんどの公立学校では養護教諭が1名体制であり、専門性を共有できる同僚がいないため、学校内で孤立しがちです。特に昼休みなどは体調不良や怪我をした児童生徒への対応が集中し、それに加えて保護者からの電話や外部機関との連絡が重なるため、食事や休憩の時間すら十分に取れないほど多忙を極めます。こうした過重労働と孤立感が、養護教諭自身の心身の不調や、燃え尽き症候群(バーンアウト)につながるケースも少なくありません。今回は、その対策について考えていきたいと思います。

みんなから誤解されやすい保健室の現状

保健室の本来の役割は、応急処置を行い、その後の医療的な措置が必要かどうかを判断する窓口です。決して、治療や投薬、診断を行う場所ではありません。この基本的な原則を学校全体で共有し、深く理解することが、保健室がその機能を正常に取り戻すための第一歩となります。

教員の認識不足と安易な対応

授業の中断を避けたい、あるいは対応に迷うといった理由から、軽微な体調不良や怪我であっても「とりあえず保健室に行ってきなさい」と安易に児童生徒送り出してしまう傾向が見られます。
結果として、保健室が一時的な「授業からの避難場所」と化し、本来であれば不必要な来室が増加しています。

保護者の誤った期待と「無料の診療機関」としての認識

児童生徒が体調不良を訴えた際、すぐに医療機関を受診せず、まず保健室で診てもらい、養護教諭の判断を仰ごうとする保護者が多く見受けられます。
中には、保健室に医師のような診断や治療を求めたり、「薬を塗ってほしい」「薬を出してほしい」などといった、専門外の医療行為やサービスを要求したりする声もあります。
まるで保健室が「無料の診療機関」であるかのように受け止めている節があります。

児童生徒の心の拠り所としての側面

体調不良だけでなく、友人関係の悩み、学習ストレス、あるいは学校に自分の居場所がないと感じて保健室を訪れる子どもたちが近年増えています。
養護教諭の温かい対応は児童生徒に安心感を与え、心の拠り所となる一方で、それが結果的に養護教諭の業務負担を増大させる要因ともなっています。

具体的な対策を考えよう

保健室の業務逼迫には、管理職が主導して対策を講じる必要があります。以下のような対策を、ぜひ検討してみてください。

対策①来室データを取り、分析してみよう

養護教諭の負担を軽減するためには、何がどう大変なのかを正確に把握し、対処する必要があります。
そのために、ICTを活用して、来室記録を月別・時間帯別・理由別に集計してみましょう。
タブレット等を設置しておき、来室の際に手間なく児童が記録できるようにします。
ある児童・あるクラス・ある原因などにデータの偏り傾向が認められれば、自ずと問題点が見えてくるでしょう。また、保健室の業務量が可視化されることで人的支援の裏付けにもなります。これにより、校長への配置要望や支援体制の設計に根拠のあるデータを活用できます。

対策②セーフティネット機能に積極的な支援をしよう

特に、児童が心の安定を求めて保健室に来室するようなケース。つまり保健室のセーフティネット機能が求められている場合は、学校経営の根幹に関わる重大な事案として、学校全体で取り組むことが必要です。
対応は、養護教諭一人に任せるのではなく、担任、生徒指導主事、特別支援コーディネーター、スクールカウンセラー、そして管理職が連携するチーム体制で支えることを徹底します。情報共有の場を設け、役割分担を明確にすることで、養護教諭の負担を軽減し、より専門的なケアが必要な事案に時間を割けるようにします。
また、保健室利用に深刻さがないような場合。例えば、昼休みなどに児童が気楽に時間を過ごせる場所を求めているような場合は、そうした児童のための別室を用意したり、校長室を開放するなどの対応も有効です。


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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